【没落】と【凋落】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「没落」(読み方:ぼつらく)と「凋落」(読み方:ちょうらく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分けを参考にしてみてください。

「没落」と「凋落」という言葉は、どちらも落ちぶれることを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




没落と凋落の違い

没落と凋落の意味の違い

没落と凋落の違いを分かりやすく言うと、没落というのは、大事な物が無くなって落ちぶれることを意味していて、凋落というのは、全体的にしぼむように落ちぶれることを意味しているという違いです。

「一家が没落する」と「一家が凋落する」はどちらも正しい

没落も凋落もどちらも「栄えていたものがその勢力や活力を衰えさせること」を意味する言葉です。例えば「一家が没落する」「一家が凋落する」という表現があるように、どちらを使っても正しく、意味の違いが鮮明ではない場合もあります。

ただし細かく考えると、二つの言葉の違いは、衰え方の違いです。それは、没と凋という言葉の意味の違いから来ます。

没落と凋落の使い分け方

没落の没という字は、「没収」や「没我」、「没却」という言葉があるように、「なくなる、なくす」ということを意味します。そのため、没落という言葉には、「何かが無くなって落ちぶれる」という意味合いが込められることになります。

例えば「一家没落」であれば、借金の返済で家計が回らなくなるという状況が考えられますが、その時にはお金がないことが第一に考えられています。また「都市や砦が没落する」場合であれば、大将が討ち取られていなくなる状況が考えられています。

次に、凋落の凋という字は、「萎む」の異字体(いじたい:別の言葉で書き表した形のこと)が「凋む」であることから分かるように、草花などが「しおれる」ことや、風船などのふくらんで張りのあるものが「しぼむ」ことを意味します。

そのため、凋落という言葉には、何かが無くなるという意味合いよりは、「収縮」(読み方:しゅうしゅく)や「縮小」(読み方:しゅくしょう)、「緊縮」(読み方:きんしゅく)という意味合いが強く出ています。

例えば、「一家凋落」であれば、家計が苦しく一家の状況が全体的に苦しいことを意味します。また、「凋落した姿の男」と言えば、かつての男らしさが全体的に萎むように消え失せていることを表現しています。

確かに、結果としては没落も凋落も同じ状況を表現することがあります。「一家没落/凋落」も、どちらもお金がなく、家計が苦しいことを意味します。

しかし没落という言葉が、「何かが欠けている」、「陥没している」というイメージを持つのに対して、凋落という言葉は全体的に「しおれる」、「しぼむ」、「寂しい」というイメージを喚起します。

この違いから、「没落」が花が枯れて落ちたり、年齢を重ねて衰えることにも使えるのに対して、「没落」は一家、都市、砦、貴族などの身分といったものにしか使えないという、使い方の違いが生まれます。

没落の意味

没落とは

没落とは、大事な物が無くなって落ちぶれることを意味しています。大事なものとは、例えば一家にとってのお金や、都市にとっての行政機能などで、少し難しい言い方をすれば、「当の物を成り立たせる不可欠の構成要素」のことです。

表現方法は「凋落する」「凋落した」「凋落ぶり」

「凋落する」「凋落した」「凋落ぶり」などが、没落を使った一般的な言い回しです。

没落の使い方

没落は、「一家が没落する」「家族が没落する」「敵の攻撃により砦が没落した」「人口流出により都市が没落した」「若者が減って村が没落した」「没落貴族」のように、人間の住む場所や、ステータス(身分)に対して用いられる言葉であることに注意しましょう。

没落の対義語

没落の対義語・反対語としては、物事が盛んになって段階を高め、範囲を広げることを意味する「発展」、豊かになり発展することを意味する「繁栄」、社会や産業、学術などが盛んになることを意味する「振興」などがあります。

没落の類語

没落の類語・類義語としては、生活の糧が不足して苦しむことを意味する「窮乏」、道徳や風紀が乱れて堕落することを意味する「退廃」、株価などが下がることや、評判が落ちて人気がなくなることを意味する「低落」などがあります。

没落の没の字を使った別の言葉としては、物が水の中に沈むことを意味する「沈没」、船舶などが転覆し沈むことを意味する「覆没」、居どころが分からないことや、どこに現れるか変わらないような自由奔放な様子を意味する「神出鬼没」などがあります。

没落の落の字を使った別の言葉としては、不備な部分を意味する「欠陥」、戦で攻め落とされることや、レースで追い上げられて順位を落とすことを意味する「陥落」、陥れようと張り巡らされる罠、策略を意味する「陥穽」(読み方:かんせい)などがあります。

凋落の意味

凋落とは

凋落とは、花や葉っぱが枯れて落ちるように、全体的にしぼむように落ちぶれることを意味しています。勢いや活力などが全体的に失われて落ちぶれている様子を表現する言葉です。

凋落の読み方

「周」の字を含むことから読み方を「しゅうらく」と勘違いされることが多いですが、凋落の読み方は「ちょうらく」なので、間違えないようにしましょう。

表現方法は「凋落する」「凋落した」「凋落ぶり」

「凋落する」「凋落した」「凋落ぶり」などが、凋落を使った一般的な言い回しです。

凋落の使い方

凋落の凋という漢字は常用外の漢字ですが、「しぼむ」ことを意味しています。漢字表記は普通は「萎む」ですが、昔は「凋む」と書かれたこともありました。ここから分かるように、「凋落」は植物が枯れて朽ちることや、人間が老い衰えることを意味する言葉です。

そのため没落よりも表現できる範囲が広いという特徴があります。「一家凋落」以外にも、「凋落の秋」や「かつての精悍さからは想像もつかない凋落した姿」などのように使うことが出来ます。ただ、凋が常用外の漢字なので、だんだん古風な言葉になってきています。

ただし、小説などではまだまだ多く見かける言葉です。没落とは異なり、凋落にある「全体的に勢力や活力が失われ、衰えている」というニュアンスを感じ取れるようにしておきたいです。

凋落の類語

凋落の類語・類義語としては、疲弊し切って残ったものを意味する「凋残」、活力、気力、勢力などが衰えしぼむことを意味する「凋衰」、衰えしぼみ疲弊した様子を意味する「凋弊」などがあります。

没落の例文

1.街はずれにある古びた洋館は、没落した資産家のものだったという噂だ。
2.どれだけ没落しても心だけはセレブに生活したい人が多いみたいだ。
3.長引く不況を受けて、日本が没落したと考える人も多いようだ。
4.終戦後、元華族の中には経済的に没落した者もいたという。
5.世界史の授業で、ナポレオン没落後、帝国主義が隆興したということを習った。
6.子どもの頃は都内の一等地に住んでいたが、父が事業を失敗し没落した一家としてとある地方で今もどうにか生きている。
7.日本経済がどんどん沈んでいくに連れて、中間層がどんどん没落していきました。
8.私の家はもともとは由緒正しき名家であったが、祖父の代で没落してしまったのです。
9.あの一家は跡取り息子がいないので、養子を取るなどしなければ没落するのも時間の問題であろう。
10.鎌倉時代というのは武家社会の勃興と公家社会の没落が交錯する時期なので非常に興味深い時代である。

この言葉がよく使われる場面としては、人や社会がとりわけ経済的に落ちぶれることを表現したい時などが挙げられます。

没落の没は「おちる」という意味合いがあるので、他の物と比較して高いところにあったのに、他の物と同等かそれ以下にまで落ちてしまうというような意味を感じることも出来る言葉です。「地に落ちる」というようなイメージです。

没落と凋落の使い分けで困った時は、まず没落を使うことを考えてみて下さい。凋が常用外の漢字であるため、凋落という言葉に馴染みのない人が多くなっているためです。

凋落の例文

1.このままでは凋落の一途を辿ることは目に見えているのに、何も手が打たれない。
2.不祥事がいくつも重なったのを見るに、あの企業の凋落はしばらくは収まらないなと感じた。
3.テレビに出なくなった途端に、世間は「あの芸能人は凋落した」と思うけど、実際はそんなこともないみたいだよ。
4.バブルの時代を知っている人ほど、近年の日本経済の集落ぶりに肩を落としているそうだ。
5.かつては毎年甲子園を盛り上げたあの名門高校も、今では見る影もなく凋落し、県大会の一回戦敗退の常連になってしまった。
6.俺の母校は昔は進学校だったのに今は私立が躍進して凋落してしまったと父が嘆いていた。
7.我がチームは大会で過去最高の記録を収めたが、それと同時に凋落の始まりでもありました。
8.新世代のアイドルが台頭するにつれて、彼女は人気の凋落をまざまざと見せつけられた。
9.地元の工場が今年いっぱいで閉鎖することになったことで、地元の凋落は誰の目にも明らかになった。
10.高度経済成長以降、林業や農業の長期凋落が原因で、地方は深刻な過疎化が進んでいる。

この言葉がよく使われる場面としては、ある物が勢いや活力を失って衰えていることを表現したい時などが挙げられます。

凋落の凋という字には、「勢いが失われる」という意味合いがあります。これは没落という言葉には込められていない意味合いです。そのため凋落という言葉の方が奥深く、また表現できる範囲も広い言葉ですが、近年では使われなくなってきています。

凋落と没落との使い分けで迷ったならば、まずは没落を使うことを考える方がいいですが、凋落が持つ意味合いに拘りがある場合には、振り仮名を付すなどして使うというのも、一つの手段です。

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