似た意味を持つ「充当」(読み方:じゅうとう)と「相殺」(読み方:そうさい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「充当」と「相殺」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
充当と相殺の違い
充当と相殺の意味の違い
充当と相殺の違いを分かりやすく言うと、充当とはある目的や用途にあてること、相殺とは差し引いて帳消しにすることという違いです。
充当と相殺の使い方の違い
一つ目の充当を使った分かりやすい例としては、「充当控除額を算出する」「利用明細書に入金等による充当額が記されている」「契約の際に保険料充当金が必要になります」「納税充当金には法人税や事業税などがある」などがあります。
二つ目の相殺を使った分かりやすい例としては、「書類に相殺額や相殺後の支払金額を明記する」「宿題のお礼はランチで相殺するよ」「相殺に関するお知らせ文書を作成する」「この案件は相殺適状が生じている」などがあります。
充当と相殺の使い分け方
充当と相殺という言葉は、お金のやり取りに関する契約や法律で用いられる言葉であり、混同して使われる傾向がありますが、意味や使い方は異なります。
充当とは、 人員や金品を特定の目的や用途にあてることを意味します。一方、相殺とは、差し引いて互いに損得がないようにすることを意味します。
例えば、クレジットカードで3,000円の商品を購入した後に商品をキャンセルした時、決済済みの3,000円を他の利用代金の一部にあてることを充当と言います。この場合、カード利用請求額は3000円を差し引くことになります。
一方、元の利用代金が3,000円だった時に、決済額3,000円を差し引いて、請求額を消滅させることは相殺と言います。この場合、クレジットカード利用の請求額は0円になります。
つまり、充当とはある目的のために使うことであり、相殺とは差し引きして帳消しにすることを表す、という違いがあります。
充当と相殺の英語表記の違い
充当を英語にすると「appropriation」「allocation」となり、例えば上記の「充当控除額」を英語にすると「deduction amount against allocations」となります。一方、相殺を英語にすると「offset」「set-off」となり、例えば上記の「相殺額」を英語にすると「amount of offset」となります。
充当の意味
充当とは
充当とは、人員や金品を、ある目的や用途にあてることを意味しています。
その他にも、債務者が同一の債権者に対して数個の債務を負担している場合に、債務者の弁済がその全部の債務を消滅させるに十分でないとき、どの債務の弁済にあてるかを定めることの意味も持っています。
表現方法は「充当できる」「充当させる」「充当させていただきます」
「充当できる」「充当させる」「充当させていただきます」などが、充当を使った一般的な言い回しです。
充当の使い方
「欠員部署に経験者を充当する」「研究費をバイト代に充当するのは不正流用だ」「保険を契約する時に充当保険料を払った」「ポイントの充当方法の設定画面が見つからない」などの文中で使われている充当は、「人員や金品を、ある目的や用途にあてること」の意味で使われています。
一方、「弁済を充当すべき債務を指定することができます」「入居時の敷金を家賃滞納に充当する」「税務署から充当通知書が届いた」「法定充当を適用します」などの文中で使われている充当は、「どの債務の弁済にあてるかを定めること」の意味で使われています。
充当という言葉は、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、日常生活からビジネスシーンまで使われている言葉です。充当の「充」は足りないところに詰めこむこと、「当」は割り当てることを表す漢字です。
「充当通知書」の意味
上記の例文にある「充当通知書」とは、正式には「過誤納金充当通知書」と言います。納め過ぎになった市税や保険料を、未納の市税等へ充当した旨を記載した通知書のことです。充当してもなお過誤納金がある場合には、その金額を還付するようになります。
充当の類語
充当の類語・類義語としては、割り当てて与えることを意味する「宛てがう」、割り当てることや割り当てたものを意味する「割当て」、わりふることや配分を意味する「割振り」、金品の拠出や仕事の配分をする場合に人数に応じて均等に割り当てることを意味する「頭割り」などがあります。
相殺の意味
相殺とは
相殺とは、差し引いて互いに損得がないようにすること、また、長所・利点などが差し引かれてなくなることを意味しています。
その他にも、二人が互いに相手方に対して同種の債権を有する場合、双方の債権を対当額だけ差し引いて消滅させることの意味も持っています。
相殺の読み方
相殺は「そうさい」という読み方のほかに「そうさつ」とも読みますが、「そうさつ」の場合は時代劇などで相討ちになる意味になってしまいます。また、誤って「あいさつ」と読まれることがありますが、間違った読み方になります。
表現方法は「相殺する」「相殺精算」「相殺額」
「相殺する」「相殺を援用」「相殺額」などが、相殺を使った一般的な言い回しです。
相殺の使い方
「浮力を相殺するための重りです」「メリットを相殺するほどのデメリットだ」「奢ってくれたら借りを相殺してあげる」「それぞれの良さを相殺し合う」などの文中で使われている相殺は、「差し引いて互いに損得がないようにすること」の意味で使われています。
一方、「自働債権と受働債権が相殺適状にある」「顧問弁護士より相殺通知書を発行する」「過失相殺され賠償額は減額されない」「当事者間の債権債務を相殺精算する」などの文中で使われている相殺は、「双方の債権を対当額だけ差し引いて消滅させること」の意味で使われています。
相殺という言葉の「相」は、互いに、共にを表し、「殺」は無くすこと、滅ぼすことを表します。相殺とは、プラスとマイナスを差し引きして差がゼロになることを意味し、金銭の貸借だけでなく、物事や概念にも用いられます。俗に「チャラにする」とも言います。
「相殺適状」の意味
上記の例文にある「相殺適状」とは、当事者間で互いに有効かつ同種で、相殺を許す性質の債権が対立し、双方が弁済期にあることを言います。
「過失相殺」の意味
相殺を用いた日本語には「過失相殺」があります。債務不履行または不法行為によって損害賠償責任が発生したときに、損害を受けた者の側にも過失があった場合、裁判所が損害賠償の金額を定める際、この過失を考慮して減額することです。
相殺の対義語
相殺の対義語・反対語としては、二つ以上の要因が同時に働くことを意味する「相乗」などがあります。
相殺の類語
相殺の類語・類義語としては、互いに差し引いて損得がなくなることを意味する「帳消し」、貸借関係を終わりにすることを意味する「棒引き」、今までの行きがかりを一切捨てて元の何もない状態に戻すことを意味する「御破算」などがあります。
充当の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人員や金品をある目的や用途にあてること、債務者の弁済がその全部の債務を消滅させるに十分でない時にどの債務の弁済にあてるかを定めることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「納税充当金」とは税法上の用語であり、会計上の「未払法人税」を意味します。決算時に見積計上する法人税や住民税、事業税のことです。例文5にある「充当金取崩し」とは、未払法人税等勘定などの未払金を取り崩して納付する方法の事です。
相殺の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の相反する要素や競合する要素が互いに差し引きされること、二人が相互に同種の債務を負っている場合に双方の債務を対当額だけ差し引いて消滅させることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「相殺精算」とは、本来であれば現金で支払いを行うものをそれ相応のものを渡して支払いを帳消しにすることです。例文4の「相殺予約」とは、弁済期前の債務であっても、相殺ができるように予約しておく条項のことです。
充当と相殺という言葉は、どちらも固定した考えや見方を意味する言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、金品や人員を特定の目的や用途にあてることを表現したい時は「充当」を、差し引きで帳消しにすることを表現したい時は「相殺」を使うようにしましょう。