同じ「けいじょう」という読み方の「計上」と「経常」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「計上」と「経常」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
計上と経常の違い
計上と経常の意味の違い
計上と経常の違いを分かりやすく言うと、計上とは全体の計算の中に組み入れること、経常とは一定の状態で変わらないことという違いです。
計上と経常の使い方の違い
一つ目の計上を使った分かりやすい例としては、「下水道工事の費用に3億円を計上する」「精算日が経費の計上日となります」「住民票で各市の感染者数を計上する」「売上計上の時期を間違えてしまった」などがあります。
二つ目の経常を使った分かりやすい例としては、「経常支出の方が経常収入より多い」「売上高経常利益率を分析する」「経常利益率の見方と目安を教えてください」「経常赤字新興国を支援する」などがあります。
計上と経常の使い分け方
計上と経常という言葉は、どちらも「けいじょう」と読み、ビジネス上の会計用語として使われていますが、意味や使い方は異なります。
計上とは、費用などを全体の計算の中に組み入れることを意味します。上記の例文にある「経費の計上日」とは、物事を行うのに必要な費用を、会計上の帳簿に反映させる日のことを意味します。
経常とは、常に一定の状態で変わらないことを意味します。上記の例文にある「経常赤字国」とは、外国との経済取引で生じた収支の状態が赤字である国を意味します。
計上と経常という言葉は意味が異なる同音異義語のため、互いに置き換えて使うことはできない言葉です。
計上と経常の英語表記の違い
計上を英語にすると「appropriation」「amount」「allocation」となり、例えば上記の「3億円を計上する」を英語にすると「appropriate 300 million yen」となります。
一方、経常を英語にすると「routine」「ordinary」となり、例えば上記の「経常支出」を英語にすると「ordinary expenditure」となります。
計上の意味
計上とは
計上とは、費用などを全体の計算の中に組み入れることを意味しています。
表現方法は「計上する」「計上される」「計上額」
「計上する」「計上される」「計上額」などが、計上を使った一般的な言い回しです。
計上の使い方
計上を使った分かりやすい例としては、「売上の計上日はいつですか」「売上月の考え方を会計士に確認する」「検査実施人数は新規検査のみを計上する」「予算計上を行う公共事業の一覧です」などがあります。
その他にも、「未計上の損失が発覚した」「費用計上のタイミングが分からない」「補正予算として計上されることになった」「利益は四半期ごとに計上される」「ビジネスカードの年会費を経費として計上する」などがあります。
計上という言葉の「計」とは数や量などをはかること、「上」とは公の場にかかげることを表します。計上とは、ある費用や予算などの項目を独立させて、全体の中に数え上げることを意味する言葉です。主に金銭の計算に対して用いられますが、人数の計算などにも用いられることがあります。
「差額計上法」の意味
計上を用いた会計用語には「差額計上法」があります。前期に設定された貸倒引当金の残額を今期の貸倒引当金設定額から控除し、残額を貸倒引当金に繰り入れる方法をいいます。
計上の対義語
計上の対義語・反対語としては、引き算や減法を意味する「減算」、簿記である勘定の金額を他の勘定に移すことを意味する「振替」、金銭や数量などを差し引くことを意味する「控除」などがあります。
計上の類語
計上の類語・類義語としては、計算の中に含めることや数え入れることを意味する「算入」、ある数量に別の数量を加えて計算することを意味する「加算」、一緒に合わせて計算することを意味する「合算」などがあります。
経常の意味
経常とは
経常とは、常に一定の状態で変わらないことを意味しています。
経常の読み方
経常の読み方は、「けいじょう」の他に「けいつね」があります。「けいつね」と読む場合は、専ら経常利益のことを意味し、「けいじょう」と読む場合と意味や使い方が異なります。
経常の使い方
経常を使った分かりやすい例としては、「今年度の経常利益を計算する」「恒常的な経常赤字に陥っている」「12月の経常収支は黒字になった」「銘柄選びの参考に経常利益率ランキングをみる」などがあります。
その他にも、「業種別に経常利益率の動向を把握する」「経常収支比率の推移を表したグラフです」「世界の経常黒字国トップ3に入る」「経常利益や純利益が株価に影響する」「損益計算書の営業利益と経常利益を確認する」などがあります。
経常という言葉の「経」と「常」という漢字は、いつも変わらないことや、いつも同じ状態が続くことを表します。経常とは、常に一定して変わらないことを意味する言葉です。上記の例文にあるように、「経常利益」「経常損失」「経常収支」「経常赤字」など経済用語で多く使われています。
「経常利益」の意味
上記の例文にある「経常利益」(読み方:けいじょうりえき)とは、企業の通常の経営活動により、毎期に経常的・反復的に生じる利益のことです。具体的には、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いて算出します。
「経常収支」の意味
経常を用いた日本語には「経常収支」があります。「経常勘定」とも言い、国際収支のうち、経常取引によって生じる受け払いの関係を示す勘定の収支を意味する言葉です。貿易収支・貿易外収支・移転収支を合計したものを指します。
「経常する」は誤り
経常を用いた誤った言い回しには「経常する」があります。経常という言葉は一定の状態を表すものであり、動詞のような使い方をしません。
経常の対義語
経常の対義語・反対語としては、一時的であることやその期間だけであることを意味する「臨時」、適宜な時に行うさまを意味する「随時」、確定するまでの間に仮に定めるさまを意味する「暫定的」などがあります。
経常の類語
経常の類語・類義語としては、いつもと同じであることを意味する「平常」、一定していて変わらないことを意味する「恒常」、特別でなく普通の状態であることを意味する「通常」、特に変わっていないことを意味する「普通」などがあります。
計上の例文
この言葉がよく使われる場面としては、費用などを全体の計算の中に組み入れることを表現したい時などが挙げられます。
例文3の「特別損失に計上する」とは、経常的に発生しない損失や、自然災害などによる突発的な損失を全体の計算に組み入れることを意味します。例文5にある「計上月」とは、売上や経費などを計上する月を指します。
経常の例文
この言葉がよく使われる場面としては、常に一定して変わらないことを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「経常利益率」とは、企業の売上高に対する経常利益の割合のことです。数値が大きいほど経営の収益性が高いことを表します。例文5の「経常損益」とは、企業の事業年度における経常的な経営活動から生じる利益または損失を意味します。
計上と経常という言葉は、どちらも「けいじょう」と読む同音異義語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、全体の計算の中に組み入れることを表現したい時は「計上」を、常に一定して変わらないことを表現したい時は「経常」を使うようにしましょう。