似た意味を持つ「苦言」(読み方:くげん)と「苦情」(読み方:くじょう)と「クレーム」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「苦言」と「苦情」と「クレーム」という言葉は、問題点を指摘する際に使うという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
苦言と苦情とクレームの違い
苦言と苦情とクレームの意味の違い
苦言と苦情とクレームの違いを分かりやすく言うと、苦言は相手のためになることを伝える時に使い、苦情は自身の不平不満を伝える時に使い、クレームは自身の権利の主張や請求をする時に使うという違いです。
苦言と苦情とクレームの使い方の違い
苦言という言葉は、「取引先の方に苦言を受けてしまった」「その計画を耳にして思わず苦言を呈した」などの使い方で、本人のためを思って言いにくいところまで言うことを意味します。
苦情という言葉は、「家の前の公園で騒ぐ人たちへの苦情を届け出る」「公害に関する苦情は調査結果がホームページに掲載される」などの使い方で、他から害や不利益などを被っていることに対する不平や不満を意味します。
クレームという言葉は、「クレームの対応のせいか精神的な疲れとなって体調不良につながった」「先輩は心を無にしてクレーム処理を行うらしい」などの使い方で、サービスに対する改善要求や権利を主張することを意味します。
苦言と苦情とクレームの使い分け方
苦情とクレームはどちらも、商品やサービスに対して物申す時に使われる言葉ですが、前者は不平不満の感情を伝える時に使い、後者は権利の主張や要求をする時に使います。
また、苦情は「complaint」と英語で表記し、クレームは「clame」が和製英語となったもので、後者は主張するという意味で本来使われています。
一方の苦言には、不平や不満といった意味や、権利の主張をするという意味はなく、相手を期待してあえて批判をすることを意味します。
これが、苦言、苦情、クレームの明確な違いです。
苦言の意味
苦言とは
苦言とは、本人のためを思って言いにくいところまで言うことを意味しています。
苦言の読み方
苦言は「くげん」という読み方をしますが、「くごん」など他の読み方はありません。
表現方法は「苦言を呈する」「苦言を漏らす」「苦言をいただく」
苦言を使った表現として、「苦言を呈する」「苦言を漏らす」「苦言をいただく」「苦言を申す」「苦言を聞く」などがあります。どれもビジネスシーンなどで使うことができますが、日常会話で使うには硬い表現となるため、「アドバイス」という言葉の方が多く使われています。
「苦言を言う」は使わない方がいい
また、「苦言を言う」という表現も間違いではないですが、「言」という漢字が重なっていることから、「苦言を呈する」など他の表現を使うか、「苦言をいう」と動作部分をひらがな表記にするのが好ましいとされています。
苦言の対義語
苦言の対義語・反対語としては、人の気に入るような口先だけのうまい言葉を意味する「甘言」(読み方:かんげん)があります。
苦言の類語
苦言の類語・類義語としては、ぶつぶつと文句を言うことを意味する「小言」、物事に検討を加えて評価することを意味する「批判」、他人の失敗などを叱り咎めることを意味する「叱責」、大切な点や注意すべきことを意味する「指摘」などがあります。
苦情の意味
苦情とは
苦情とは、他から害や不利益などを被っていることに対する不平や不満を意味しています。その他にも、苦しい事情という意味もあります。
表現方法は「苦情を受ける」「苦情を言う」「苦情を入れる」
「苦情を受ける」「苦情を言う」「苦情を入れる」などが、苦情を使った一般的な言い回しです。
「苦情処理」の意味
苦情を使った言葉として、「苦情処理」があります。
「苦情処理」とは、一般的に苦情を受け付けて、それに対して措置をとることを指す言葉ですが、行政機関が行う業務に対して国民が不平不満を募らせて申し立てをし、それを解決するための措置を取ることも意味します。
また、労働者の不平不満や、就業規則などに関する苦情を団体交渉として行うことや、裁判所に訴えることなく労働者と使用者の間で起きる争いを平和的に解決することも意味します。
苦情の対義語
苦情の対義語・反対語としては、声援などを送って相手を励ますことを意味する「応援」があります。
苦情の類語
苦情の類語・類義語としては、納得がいかずに不満に思うことを意味する「不服」、相手に対する言い分や不服を意味する「文句」、うらみの言葉を意味する「怨言」(読み方:えんげん)、憤り嘆くことを意味する「慨嘆」などがあります。
クレームの意味
クレームとは
クレームとは、サービスに対する改善要求を意味しています。また、契約や法上の権利請求を指す言葉です。
クレームの語源
クレームは損害賠償請求を意味する「clame for damages」の「clame」が一般的となった和製英語です。商取引において契約違反があった場合、契約を守らなかった相手に対して損害賠償を請求する際に使われている用語です。
しかし、今日ではしつこくクレームをつけたり、言いがかりのようなクレームをぶつける消費者を「クレーマー」と呼ぶなど社会的な問題として扱われています。
2010年代頃から「カスタマーハラスメント」という言葉も使われ、暴言を吐いたり、暴力を振るったり、業務妨害として罪に問われるケースも少なくありません。
表現方法は「クレームを言う」「クレームを入れる」「クレームを受ける」
「クレームを言う」「クレームを入れる」「クレームを受ける」などが、クレームを使った一般的な言い回しです。
「クレーム・エージェント」の意味
クレームを使った言葉として、「クレーム・エージェント」があります。これは、海外で事故が起きた際に、その事故を調査したり、保険金の支払いなどの手続きなどを行う保険会社と提携する現地の会社です。
日本の保険会社と提携しているというだけで、基本的には日本語の通じない現地の企業ですが、保険会社によっては日本語対応をしてくれるクレーム・エージェントて提携していることもあります。
クレームの類語
クレームの類語・類義語としては、代償を要求することを意味する「要償」、物事を早くするように促すことを意味する「催促」、必要だとして強く願い求めることを意味する「要請」、自分の意見などを強く言い張ることを意味する「主張」などがあります。
苦言の例文
この言葉がよく使われる場面としては、本人のためを思って言いにくいところまで言うことを意味する時などが挙げられます。
自身の感情に起因するものではないため、苦情やクレームに置き換えて使うことができません。
苦情の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他から害や不利益などを被っていることに対する不平や不満を意味する時などが挙げられます。
厳密には、苦情とクレームには、不満を抱いていることと権利を主張することと違いがあるものの、今日ではほとんど同じように使われているため、例文の苦情をクレームに置き換えて使うことができます。
クレームの例文
この言葉がよく使われる場面としては、サービスに対する改善要求や権利を主張することを意味する時などが挙げられます。
例文3の「クレーマー」とは、言いがかりのようなクレームをぶつける消費者を指す言葉です。
苦言と苦情とクレームどれを使うか迷った場合は、相手のために伝えることを表す場合は「苦言」を、自身の不平不満を伝えることを表す場合は「苦情」を、自身の権利の主張や請求をすることを表す場合は「クレーム」を使うと覚えておけば間違いありません。