似た意味を持つ「形骸化」(読み方:けいがいか)と「陳腐化」(読み方:ちんぷか)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「形骸化」と「陳腐化」という言葉は、どちらも当初の意義や価値を失うことを表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
形骸化と陳腐化の違い
形骸化と陳腐化の意味の違い
形骸化と陳腐化の違いを分かりやすく言うと、形骸化とは形式だけが残ること、陳腐化とは価値が減ることという違いです。
形骸化と陳腐化の使い方の違い
一つ目の形骸化を使った分かりやすい例としては、「一党独裁が形骸化した民主主義を招いた」「ビジネスマナーが形骸化している」「男性の育児休業制度が形骸化している」「形骸化した制度の見直す」などがあります。
二つ目の陳腐化を使った分かりやすい例としては、「データは数ヶ月で陳腐化する」「一部機種で計画的陳腐化を行っていた」「陳腐化した在庫の処分に頭を悩ます」「システムの早期陳腐化を防ぐ」などがあります。
形骸化と陳腐化の使い分け方
形骸化と陳腐化という言葉は、どちらもビジネスシーンでで使われ、物事のはじめのうちには存在していたものが失われていくことを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
形骸化とは、中身がなくなって形だけになることを意味します。上記の例文にある「男性の育児休業制度が形骸化している」とは、男性社員でも育児休業制度を取得する資格はあるものの、実際には制度が活用されていない状況を表します。
陳腐化とは、ありふれて価値がなくなることを意味します。ビジネスシーンにおける陳腐化とは、商品や製品などが時代遅れになってしまって、当初有していた価値が減ってしまうことを表します。上記の「陳腐化した在庫」とは、商品として市場価値が下がってしまった在庫を表します。
つまり、形骸化は形式だけになること、陳腐化は価値がなくなることを表し、どちらもマイナスイメージを伴う言葉なのです。
形骸化と陳腐化の英語表記の違い
形骸化を英語にすると「becoming a mere shell」「becoming a dead letter」となり、例えば上記の「形骸化した民主主義」を英語にすると「democracy that has become a dead letter」となります。
一方、陳腐化を英語にすると「obsolescence」「functional deterioration」となり、例えば上記の「数ヶ月で陳腐化する」を英語にすると「have an obsolescence of several months」となります。
形骸化の意味
形骸化とは
形骸化とは、実質的な意味を失い、形式だけが残ることを意味しています。
表現方法は「形骸化する」「形骸化される」「形骸化を防ぐ」
「形骸化する」「形骸化される」「形骸化を防ぐ」などが、形骸化を使った一般的な言い回しです。
形骸化の使い方
形骸化を使った分かりやすい例としては、「株主総会は形骸化している儀式に思える」「緊急事態宣言も形骸化してしまい効果が薄い」「国連はもはや形骸化した組織である」「ビジネス文書のルールが形骸化する」などがあります。
その他にも、「形骸化したルールを廃止する」「日本の英語教育が形骸化している」「形骸化した研修を根本から解決する」「職場のノー残業デーは形骸化している」「形骸化しないような対策を講じる」「チェックリストで形骸化を防止する」などがあります。
形骸化という言葉の「形骸」とは、精神を別にした体や屍のことであり、転じて、外形だけを残して実質的な意味を失っているものを意味します。形骸化とは、中身がなく形だけのものになることを表し、存在はしているものの効力がない制度やルールなどに対して使われる言葉です。
「ノー残業デーの形骸化」の意味
上記の例文にある「ノー残業デーの形骸化」とは、会社で残業をしない日と決めているのに、その決まりが実行されずに残業をしている人がいることを表します。このように、形骸化とはビジネスの場で用いられることが多い言葉です。
形骸化の対義語
形骸化の対義語・反対語としては、特定の機能が活発になることを意味する「活性化」、行動や活動などが生き生きとして盛んなさまを意味する「活発化」、日常生活などの場で実際に役に立つことを意味する「実用」などがあります。
形骸化の類語
形骸化の類語・類義語としては、名ばかりでそれに伴う実質のないことを意味する「有名無実」、実質を失い外形だけが残ることを意味する「空洞化」、内容はともかく体裁だけは整っていることを意味する「形許り」、効力のない文書を意味する「空文」などがあります。
陳腐化の意味
陳腐化とは
陳腐化とは、目新しさがなくなって価値が減ることを意味しています。
表現方法は「陳腐化する」「陳腐化を防ぐ」「陳腐化を早める」
「陳腐化する」「陳腐化を防ぐ」「陳腐化を早める」などが、陳腐化を使った一般的な言い回しです。
陳腐化の使い方
陳腐化を使った分かりやすい例としては、「システムの陳腐化を早めることになった」「ブランドが陳腐化する」「コンテストは出来レースであり審査は形骸化している」「英語の表現にも陳腐化があります」などがあります。
その他にも、「ビジネスモデルが陳腐化する」「急速な技術の陳腐化に対応する」「ビッグデータの陳腐化を防ぐ」「陳腐化在庫を抱えて困っています」「棚卸資産の著しい陳腐化がみられた」などがあります。
陳腐化という言葉の「陳腐」とは、古臭いこと、ありきたりで面白味のないことを意味します。一般的に、陳腐化とは方法や表現などについて、時代遅れであるという評価をするような場合に使われています。軽蔑していうことが多くあります。
ビジネスシーンでの陳腐化の意味
ビジネスシーンにおける陳腐化とは、商品や機械設備などの資産に関して使われ、市場での経済的な価値や機能的な価値において、当初有していた価値よりも値打ちが下がることを表します。
「計画的陳腐化」の意味
陳腐化という言葉を用いた日本語には「計画的陳腐化」があります。製品が市場に普及し売れ行きが鈍る段階で、新製品導入によって既存製品を陳腐なものとし、買い換え需要を喚起しようという製品政策のことです。
陳腐化の対義語
陳腐化の対義語・反対語としては、趣向や発想などがきわだって新しいさまを意味する「斬新」、見たことがないような新しさがあることを意味する「目新しい」、めったになくて貴重であることを意味する「珍しい」などがあります。
陳腐化の類語
陳腐化の類語・類義語としては、時代の傾向についていけず取り残されていることを意味する「時代遅れ」、世間で流行した時期から遅れていることを意味する「流行遅れ」、デザインや考え方などが古くさいことを意味する「旧式」、新鮮みがなくなるを意味する「色褪せる」などがあります。
形骸化の例文
この言葉がよく使われる場面としては、中身のない形だけのものになることを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2のように、形骸化という言葉はルールに対して用いられることが多くあります。例文1では効力を失っていくさまを表し、例文2では形式だけにとらわれていることを表しています。
陳腐化の例文
この言葉がよく使われる場面としては、古臭くなったり、流行らなくなったり、旧式になったりする状況を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「老朽化」と「陳腐化」の違いは、老朽化は品質や性能が損なわれることの意味合いが強く、陳腐化は価値が減ることの意味合いが強いことです。「レガシー化」とは、古くなり時代遅れになっていくことを表します。
形骸化と陳腐化という言葉は、どちらも当初の意義や価値を失うことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、形だけが残るさまを表現したい時は「形骸化」を、価値がなくなるさまを表現したい時は「陳腐化」を使うようにしましょう。