似た意味を持つ「観念的」(読み方:かんねんてき)と「概念的」(読み方:がいねんてき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「観念的」と「概念的」という言葉は、どちらも「現実に即していないさま」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
観念的と概念的の違い
観念的と概念的の意味の違い
観念的と概念的の違いを分かりやすく言うと、観念的とは現実を無視して頭の中で考えるさま、概念的とは具体性がなく大まかに考えるさまという違いです。
観念的と概念的の使い方の違い
一つ目の観念的を使った分かりやすい例としては、「彼は物事を観念的に考える人です」「幸せは観念的な尺度で成り立っている」「監禁罪と強姦致傷罪は観念的競合の関係にある」「大学教授には観念的な人が多い」などがあります。
二つ目の概念的を使った分かりやすい例としては、「研究プロジェクトの概念的枠組みが認められた」「概念的知識には汎用性があります」「知識の概念的な理解を問う問題です」「犯罪の概念的定義と操作的定義を定義する」などがあります。
観念的と概念的の使い分け方
観念的と概念的という言葉は、どちらも現実的ではない様子や、具体性に欠けているさまを表す言葉ですが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
観念的とは、具体的事実に基づかずに頭の中で組み立てられたさまを意味します。頭の中にあることであり、現実に即していないさまを表します。一方、概念的とは、物事を抽象的にとらえて具体性に欠けているさまを意味します。おおまかなイメージを表す言葉です。
どちらも現実的ではないというニュアンスがあり、使い方によっては批判的な意味合いを持つ言葉です。
観念的と概念的の英語表記の違い
観念的も概念的も英語にすると「conceptual」「ideational」となり、例えば上記の「観念的に考える人」を英語にすると「conceptual thinker」となります。
観念的の意味
観念的とは
観念的とは、具体的事実に基づかずに頭の中で組み立てられただけで、現実に即していないさまを意味しています。
表現方法は「観念的な人」「観念的文化」「観念的競合」
「観念的な人」「観念的文化」「観念的競合」などが、観念的を使った一般的な言い回しです。
観念的の使い方
観念的を使った分かりやすい例としては、「観念的で分かりづらい話ばかりする人だ」「観念的思考にとらわれて行動できなくなっている」「彼女の話は観念的で現実味がない」「ダミー会社は実体のない観念的な存在です」などがあります。
その他にも、「数個の幇助罪は観念的競合となる」「観念的競合と併合罪の違いが分かりません」「理想ばかりを言う観念的な人とは話が合わない」「哲学的かつ観念的な傾向の強い作品です」などがあります。
観念的という言葉の「観念」とは物事に対する意識のことであり、「経済観念」「衛生観念」のように、ある事柄に対する考えを表します。性質や傾向を表す「的」と組み合わさり、観念的とは、知識や理論を優先して現実の状況からかけ離れた考え方であるさまを意味する言葉です。
「観念的競合」の意味
観念的を用いた刑法用語に「観念的競合」があります。1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすことを意味します。例えば、職務質問をしてきた警察官に暴力をふるい傷を負わせた場合、傷害罪と公務執行妨害罪の両方に当たり、観念的競合となります。
観念的の対義語
観念的の対義語・反対語としては、自分で実地に行うさまや実行するさまを意味する「実践的」、現実に即した面を重んじて理屈や感情などを排するさまを意味する「実際的」などがあります。
観念的の類語
観念的の類語・類義語としては、こうあるべきだという根本の考えを意味する「理念的」、現実に即していないさまを意味する「非現実的」、考えが現実からかけ離れているさまを意味する「空想的」などがあります。
概念的の意味
概念的とは
概念的とは、個別性を問わず概括的・抽象的にとらえるさま、物事について大まかに把握するさまを意味しています。
表現方法は「概念的に捉える」「概念的な知識」「概念的な理解」
は「概念的に捉える」「概念的な知識」「概念的な理解」などが、概念的を使った一般的な言い回しです。
概念的の使い方
概念的を使った分かりやすい例としては、「概念的枠組みアプローチを適用する」「概念的思考力のトレーニング方法があります」「概念的理解が深化するメカニズムを明らかにする」などがあります。
その他にも、「概念的思考力の定義は何ですか」「英語表現を概念的にとらえる」「概念的知識の獲得を目的にした学習方法です」「看護の概念的定義と目的を学ぶ」「概念的思考力を鍛える」などがあります。
概念的という言葉の「概念」とは、個々の事物から共通な性質を取り出してつくられたシンボルや考えのことです。概念的とは、個々の特性は見ずに共通点だけを大まかに取りあげるさまを表す言葉です。まれに、現実味に欠けている、具体的でないという非難の意味を含むことがあります。
「概念的知識」の意味
上記の例文にある「概念的知識」とは、直観や具体的事象によってとらえるのではなく、概念によってとらえる知識を意味します。知識は概念的知識と手続き的知識に大別され、概念的知識は知識を理解する過程に関係し、手続き的知識は問題を解決する過程に関係するとされています。
概念的の対義語
概念的の対義語・反対語としては、個々の事物に即しているさまを意味する「具体的」、そのものの本当の姿を意味する「実体」、はっきりした形をもっているさまを意味する「具象化」などがあります。
概念的の類語
概念的の類語・類義語としては、考え方やが論理的で系統立っているさまを意味する「科学的」、事物に共通なものを抜き出し一般化して考えるさまを意味する「抽象的」、考え方などが厳密で客観的なさまを意味する「学問的」などがあります。
観念的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、現実を無視して、抽象的、空想的に頭の中で考えるさまを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある観念的と抽象的の違いは、観念的は具体的ではない思考方法を表し、抽象的は表現方法が具体性を欠くさまを表している点にあります。
概念的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、概念によっているさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「概念的思考」とは、あまり関係がないように見える事象の間にある、共通する意味や関係を把握したり、ある事象から連想的に別の新しい概念を見い出す頭の働きのことです。ここでは、具体性に欠けている考え方を表しています。
観念的と概念的という言葉は、どちらも現実に即していないことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、現実を無視して頭の中で考えるさまを表現したい時は「観念的」を、具体性に欠け大まかに考えるさまを表現したい時は「概念的」を使うようにしましょう。