似た意味を持つ「自己陶酔」(読み方:じことうすい)と「自己耽溺」(読み方:じこたんでき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「自己陶酔」と「自己耽溺」という言葉は、どちらも自分に夢中になっている様子を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
自己陶酔と自己耽溺の違い
自己陶酔と自己耽溺の意味の違い
自己陶酔と自己耽溺の違いを分かりやすく言うと、自己陶酔とは自分に酔って気持ちよくなっている状態、自己耽溺とは自分以外のことを考えられない状態という違いです。
自己陶酔と自己耽溺の使い方の違い
一つ目の自己陶酔を使った分かりやすい例としては、「自己陶酔的な文章を書く人だな」「キザなセリフに自己陶酔しているようだ」「自信家で自己陶酔する人だ」「壮年期は自己満足や自己陶酔に陥りやすくなります」などがあります。
二つ目の自己耽溺を使った分かりやすい例としては、「振り返ると自己耽溺の人生であったと思う」「自己耽溺は健全な心理状態ではありません」「彼は青年期によくある自己耽溺の渦中にあるようだ」などがあります。
自己陶酔と自己耽溺の使い分け方
自己陶酔と自己耽溺という言葉は、どちらも自分自身に夢中になっている状態を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
自己陶酔とは、自惚れて気分がよくなっている状態を指す言葉です。自分の容姿や行動に対して感じるものですが、実際以上に自分が優れていると思い込んでいる場合もあり、あまり良い意味では使われていません。
自己耽溺とは、自分のことに熱中しすぎて、周りを顧みない状態を指す言葉です。仕事においては、本業に関心を持たず、関係のない趣味などに夢中になっているさまを表します。必要な物事を疎かにする点で、マイナスイメージのある言葉です。
つまり、自己陶酔は自分に酔っているさまを表し、自己耽溺は自分に溺れているさまを表すという点が、二つの言葉の違いになります。
自己陶酔と自己耽溺の英語表記の違い
自己陶酔を英語にすると「narcissism」「self-intoxication」となり、例えば上記の「自己陶酔的な」を英語にすると「narcissistic」となります。
一方、自己耽溺を英語にすると「selfish indulgence」「self-absorption」となり、例えば上記の「自己耽溺の人生」を英語にすると「a life of selfish indulgence」となります。
自己陶酔の意味
自己陶酔とは
自己陶酔とは、自分自身に酔いしれること、自惚れていい気持ちになることを意味しています。
自己陶酔の読み方
自己陶酔の読み方は「じことうすい」です。誤って「じきとうすい」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「自己陶酔に浸る」「自己陶酔型メンヘラ」
「自己陶酔に浸る」「自己陶酔型メンヘラ」などが、自己陶酔を使った一般的な言い回しです。
自己陶酔の使い方
自己陶酔を使った分かりやすい例としては、「英語を話せる自分に自己陶酔しているようだ」「自己陶酔型の人は周囲から褒められることが大好きです」「心理テストで自己陶酔タイプだと診断された」などがあります。
その他にも、「ひとりよがりな自己陶酔者とは関わりたくありません」「メンヘラな人は自己陶酔する傾向があります」「勘違いの自己陶酔は気持ち悪いです」「その看護師は患者に尽くすことに自己陶酔していた」などがあります。
自己陶酔の「陶酔」は、酔って気持ちよくなること、心を奪われてうっとりすることです。自己陶酔とは、自分の言動や容姿にうっとりと酔いしれる状態を意味します。実際以上に自分が優れていると自惚れている様子を表し、マイナスイメージを伴う四字熟語です。
自己陶酔の対義語
自己陶酔の対義語・反対語としては、自分で自分自身が嫌になることを意味する「自己嫌悪」、自分を劣ったものとして卑しめることを意味する「卑下」、すべての人を平等に愛することを意味する「博愛」などがあります。
自己陶酔の類語
自己陶酔の類語・類義語としては、自分自身を愛することを意味する「自己愛」、自分自身を愛の対象とすることを意味する「ナルシシズム」、自分自身にまたは自分の言動に自分で満足することを意味する「自己満足」などがあります。
自己耽溺の意味
自己耽溺とは
自己耽溺とは、自分のことに熱中しすぎて、周りを顧みないことを意味しています。
自己耽溺の使い方
自己耽溺を使った分かりやすい例としては、「昨今、自己耽溺する若者が増えている」「ひょっとすると姉は自己耽溺に陥っているのではないか」「娘は自己耽溺し、英語の勉強がおろそかになっている」などがあります。
その他にも、「自己耽溺な人は自分の話ばかりしています」「過剰な自己耽溺ぶりを一人称で語った自叙伝だと酷評されている」「心理学の観点から自己耽溺を分析する」「周りが見えなくなり自己耽溺の状態になっている」などがあります。
自己耽溺の読み方
自己耽溺の読み方は「じこたんでき」です。誤って「じきたんでき」などと読まないようにしましょう。
自己耽溺とは、自分のことに熱中しすぎて、周りのことに目がいかなくなっている状態を指す言葉です。「耽溺」は、ある境地にふけり溺れることを意味します。「酖溺」とも書き表しますが、一般的には「耽溺」と表記されています。
自己耽溺という言葉は、自分のことに夢中になり他の物事に手が付けられない様子であるため、ネガティブな意味で用いられています。相手や第三者に対して使うと悪口になりますので、使い方には注意が必要です。
自己耽溺の類語
自己耽溺の類語・類義語としては、ある事にすっかり心を奪われて我を忘れてしまうさまを意味する「無我夢中」、ある事に夢中になり本心を奪われることを意味する「惑溺」、 一つの物事に熱中することを意味する「ふける」一つの事に熱中して他を顧みないことを意味する「没頭」などがあります。
自己陶酔の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分の行動や容姿にうっとりして酔いしれることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「自己陶酔型シャッター症候群」とは、作家である門田隆将氏の造語であり、記事を書く記者が自身の正義をゆるぎなく信じているという様子を表した言葉です。
自己耽溺の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分のことに熱中しすぎて、周りを顧みないことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4のように、自己耽溺という言葉は、自分以外のことを考えられないようになり、好ましくない状態を指す言葉です。
自己陶酔と自己耽溺という言葉は、どちらも自分自身に夢中になる様子を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、自分に酔って気持ちよくなっている状態を表現したい時は「自己陶酔」を、自分以外のことを考えられない状態を表現したい時は「自己耽溺」を使うようにしましょう。