似た意味を持つ「ニヒル」と「シニカル」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「ニヒル」と「シニカル」という言葉は、「無邪気さがなく含みがあるような態度」という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
ニヒルとシニカルの違い
ニヒルとシニカルの意味の違い
ニヒルとシニカルの違いを分かりやすく言うと、ニヒルは虚無を表現する時に使い、シニカルは皮肉を表現する時に使うという違いです。
ニヒルとシニカルの使い方の違い
一つ目のニヒルを使った分かりやすい例としては、「自身のニヒルな性格に本人が肯定的であるのが不思議だ」「ニヒルを売りにしているモデルはトーク番組などに出演することはほとんどない」「ニヒルであることに自信を持つべきではない」などがあります。
二つ目のシニカルを使った分かりやすい例としては、「シニカルな笑みを浮かべる彼は何も言わずに去った」「妹のシニカルなスタンスが一度崩れた時は嬉しかった」「シニカルであればまだマシで無関心であればどうしようもない」などがあります。
ニヒルとシニカルの使い分け方
ニヒルとシニカルはどちらも、無邪気さがなく含みがあるような態度や人を意味する言葉として使われていますが、意味合いが若干異なります。
ニヒルは、本体ニヒリスティックという言葉であり、虚無主義や虚無的を意味する言葉で、人生における物事に価値を見出せず、無意味なものに感じられる人に対して使われています。
一方のシニカルは、冷笑主義や冷笑的を意味する言葉で、他者や社会的な価値に対して不信感を抱く様子や、目標や希望を抱かずに無意味なものであり非難するものと感じられる人に対して使われています。
つまり、ニヒルは価値を見出せずさめているような様子や態度を表し、シニカルは皮肉っぽい様子や態度を表すという違いがありますが、ニヒルも皮肉っぽい人を表す言葉として使われることもあります。
また、ニヒルは無感情や無関心な状態を表すネガティブな言葉として使われますが、これが転じてクールさを感じるような影のある人に対しても使われるようにもなります。シニカルはこのようなポジティブなイメージで使われることはありません。
ニヒルとシニカルの英語表記の違い
ニヒルを英語にすると「nihilistic」となり、例えば上記の「ニヒルな性格」を英語にすると「nihilistic personality」となります。
一方、シニカルを英語にすると「cynical」となり、例えば上記の「シニカルな笑み」を英語にすると「a cynical smile」となります。
ニヒルの意味
ニヒルとは
ニヒルとは、世の中のものに価値を見出せず、信じるものを何も持たない様子を意味しています。
その他にも、さめていて暗い影のある様子を意味する言葉として使われています。
表現方法は「ニヒルな人」「ニヒルな男」「ニヒルな笑み」
「ニヒルな人」「ニヒルな男」「ニヒルな笑み」などが、ニヒルを使った一般的な言い回しです。
ニヒルの使い方
「富や栄誉を得たとしてもそれにニヒルを感じてしまう」「ニヒルな考え方によって何事にも反発する態度はいただけない」「ニヒルは絶望に近しい感情だろうか」などの文中で使われているニヒルは、「虚無的」の意味で使われています。
一方、「ニヒルな女性よりも感情豊かな女の子の方がモテるだろう」「ニヒルな表情が人気なモデルが表紙を飾る」「ニヒル」などの文中で使われているニヒルは、「さめている様子」の意味で使われています。
ニヒルの語源
ニヒルは英語で「nihil」と表記されますが、本来はニヒリスティックを省略した言葉であるため「nihilistic」を用いて、虚無主義、虚無的、無政府主義を表します。日本語でも同じようにニヒルもニヒリスティックも使われています。
世の中や人生などを空しいものと考える虚無的という意味が転じて、物事に対してさめているような人も表すため、上記例文の「ニヒルな女性」「ニヒルな表情」などのように使われています。
ニヒルの誤用には注意
そのため、格好いいプラスのイメージとして捉えられることもありますが誤用であり、むしろ前向きではない場合に使う言葉です。プラスのイメージで使われるニヒルも、今日では一般的になり始めていますが、使う相手には注意を払う必要があります。
ニヒルの対義語
ニヒルの対義語・反対語としては、感情を激しく燃え上がらせる様子を意味する「情熱的」があります。
ニヒルの類語
ニヒルの類語・類義語としては、道徳的に崩れて不健全な様子を意味する「退廃的」、生活態度や考え方がまともではないことを意味する「不健康」、退廃的な風潮や生活態度を意味する「デカダンス」などがあります。
シニカルの意味
シニカルとは
シニカルとは、皮肉っぽい態度をとる様子を意味しています。
表現方法は「シニカルな笑い」「シニカルな人」「シニカルな性格」
「シニカルな笑い」「シニカルな人」「シニカルな性格」などが、シニカルを使った一般的な言い回しです。
シニカルの使い方
シニカルを使った分かりやすい例としては、「彼女のシニカルな笑みは苦手だ」「高収入の男性はシニカルな性格の人ばかりだと勘違いする」「シニカルでいることで物事を俯瞰できるのかもしれない」などがあります。
その他にも、「特定の物事にだけシニカルな態度をとってしまう」「自分はシニカルなプレイヤーだと思っているがゲームが嫌いなわけではない」「風刺画の中でもシニカルに捉えられている絵だと感じた」などがあります。
シニカルは英語で「cynical」と表記され、皮肉な、冷笑的を意味する言葉で、日本語でも同じように使われています。「シニック」という言葉が用いられることもあります。
シニカルの語源
ギリシア哲学の一派であるキュニコス派を表す「cynic」が語源となった言葉で、冷笑主義や皮肉屋とも呼ばれており、野望や目標、希望などを持たずに、むしろそれらを無意味なものであり非難の対象としていた人たちを指します。
そのため、痛烈な避難や遠回しな意地悪を言う人、ひねくれた人、皮肉屋の意味でシニカルが使われるようになり、マイナスイメージを与えるようになります。冷静である人に対して使われることもありますが誤用で、そういった意味を持ちません。
シニカルの対義語
シニカルの対義語・反対語としては、他人に対して愛想のよい言葉を意味する「世辞」、正々堂々向かい合うことを意味する「直球」、飾り気がなくありのままの様子を意味する「率直」があります。
シニカルの類語
シニカルの類語・類義語としては、悲観的な様子を意味する「ペシミスチック」、否定的や消極的な様子を意味する「ネガティブ」、人の行いや態度に締まりがない様子を意味する「自堕落」、肉体や精神が健全ではない様子を意味する「病的」などがあります。
ニヒルの例文
この言葉がよく使われる場面としては、世の中のものに価値を見出せず、信じるものを何も持たない様子を意味する時などが挙げられます。
今日では例文3から例文5のように、さめている様子を表す言葉として使われることが多くあります。
シニカルの例文
この言葉がよく使われる場面としては、皮肉っぽい態度をとる様子を意味する時などが挙げられます。
どの例文のシニカルも、ニヒルという言葉に置き換えて使うことはできません。
ニヒルとシニカルは、どちらも「無邪気さがない態度」を表します。どちらを使うか迷った場合は、虚無を表す場合は「ニヒル」を、皮肉を表す場合は「シニカル」を使うと覚えておけば間違いありません。