似た意味を持つ「仁王立ち」(読み方:におうだち)と「立ち往生」(読み方:たちおうじょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「仁王立ち」と「立ち往生」という言葉は、どちらもその場に立っていることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「仁王立ち」と「立ち往生」の違い
「仁王立ち」と「立ち往生」の意味の違い
「仁王立ち」と「立ち往生」の違いを分かりやすく言うと、「仁王立ち」とは仁王の像のようにいかめしく力強い様相で立つこと、「立ち往生」とは途中で行き詰まったまま処置のしようもなく立っていることという違いです。
「仁王立ち」と「立ち往生」の使い方の違い
一つ目の「仁王立ち」を使った分かりやすい例としては、「彼は仁王立ちになって行く手を塞ぎました」「店主が仁王立ちでこちらを見ていたので漫画を1冊購入してから帰宅しました」「彼女は仁王立ちになりました」などがあります。
二つ目の「立ち往生」を使った分かりやすい例としては、「大雪の影響で立ち往生してしまいました」「資金繰りで立ち往生し会社が倒産してしまいました」「停電のため何本も列車が立ち往生しました」などがあります。
「仁王立ち」と「立ち往生」の使い分け方
「仁王立ち」と「立ち往生」はどちらもその場に立っていることを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「仁王立ち」は上記の「彼は仁王立ちになって行く手を塞ぎました」のように、仁王の像のようにいかめしく力強い様相で立つ様子を表した言葉になります。
一方、「立ち往生」は上記の「大雪の影響で立ち往生してしまいました」のように、その場に止まったり途中で行き詰まったりして処置のしようもなく動きのとれない様子を表す場合に使う言葉です。
つまり、「仁王立ち」と「立ち往生」は立っている理由が異なっているというのが違いになります。
「仁王立ち」と「立ち往生」の英語表記の違い
「仁王立ち」を英語にすると「stand firm with one’s feet set apart」となり、例えば上記の「彼女は仁王立ちになりました」を英語にすると「She stand firm with her feet set apart」となります。
一方、「立ち往生」を英語にすると「go stuck」「brought to a standstill」となり、例えば上記の「停電のため何本も列車が立ち往生しました」を英語にすると「A number of trains were brought to a standstill due to a power failure」となります。
「仁王立ち」の意味
「仁王立ち」とは
「仁王立ち」とは、仁王の像のようにいかめしく力強い様相で立つことを意味しています。
「仁王立ち」の読み方
「仁王立ち」の読み方は「におうだち」です。誤って「じんおうだち」や「におうたち」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「仁王立ちする人」「仁王立ちになる」「仁王立ちのポーズ」
「仁王立ちする人」「仁王立ちになる」「仁王立ちのポーズ」が、「仁王立ち」を使った一般的な言い回しになります。
「仁王立ち」の使い方
「仁王立ち」を使った分かりやすい例としては、「彼女は仁王立ちになって行く手を塞ぎました」「彼は入り口に仁王立ちになっている」「家に帰ると玄関で母が仁王立ちしていました」「道路で仁王立ちしている人がいるのでみんな避けて歩いている」などがあります。
「仁王立ち」は仁王の像のようにいかめしく力強い様相で立つことを意味する名詞です。また、「仁王立ち」の有名なポーズとしては、足を肩幅程度に広げていかめしい顔をした立ち方があります。
「仁王立ち」は相手に怒っていたり、威嚇している時に使うのが特徴です。そのような状況になると、自然と仁王立ちのようなポーズになってしまうと言われています。そのため、マイナスなイメージで使われることが多い言葉です。
「仁王立ち」の由来
「仁王立ち」の由来は「仁王」です。「仁王」とは寺門の左右にあってその忿怒の形相で仏敵を払う守護神のことを意味しています。一般的には二神一対で、一体は口を開いた阿形、もう一体は口を閉じた吽形となっています。
この「仁王」のいかめしい立ち姿が転じて、いかめしく力強い様相で立つこと「仁王立ち」と言うようになりました。
「仁王立ち」の類語
「仁王立ち」の類語・類義語としては、前に立って行く手を遮ることを意味する「立ち塞がる」、手足を広げて行く手を遮るように立つことを意味する「立ちはだかる」などがあります。
「立ち往生」の意味
「立ち往生」とは
「立ち往生」とは、その場に止まったり途中で行き詰まったりして処置のしようもなく動きのとれないことを意味しています。その他にも、立ったままの姿勢で死ぬことの意味も持っています。
「立ち往生」の読み方
「立ち往生」の読み方は「たちおうじょう」です。誤って「たちおうしょう」や「たちじゅうしょう」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「立ち往生する」「立ち往生による停止」
「立ち往生する」「立ち往生による停止」などが、「立ち往生」を使った一般的な言い回しです。
「立ち往生」の使い方
「土砂崩れの影響で電車が立ち往生する」「壇上で立ち往生することになってしまった」などの文中で使われている「立ち往生」は、「その場に止まったり途中で行き詰まったりして処置のしようもなく動きのとれないこと」の意味で使われています。
一方、「立ち往生で有名な人物と言えば弁慶だろう」「彼は主君を守るために立ち往生でこの世を去りました」などの文中で使われている「立ち往生」は、「立ったままの姿勢で死ぬこと」の意味で使われています。
「立ち往生」はその場に止まったり途中で行き詰まったりして処置のしようもなく動きのとれないことと、立ったままの姿勢で死ぬことの二つの意味を持つ言葉です。
元々は、立ったままの姿勢で死ぬことの意味で使われていた言葉でしたが、時代が経つつれてその場に止まったり途中で行き詰まったりして処置のしようもなく動きのとれないことの意味で使われるようになり、現代では後者の意味で使うのが一般的になっています。
現代で使われているその場に止まったり途中で行き詰まったりして処置のしようもなく動きのとれないことの意味は、「大型台風の影響で立ち往生することになった」のように物理的に止まる場合に使います。
また、「資金繰りに立ち往生して会社が倒産した」のように、どうしようもなくなったというニュアンスで使うこともできるのが特徴です。
「立ち往生」の語源
「立ち往生」の語源は弁慶になります。弁慶とは鎌倉初期の僧であり源義経の家来の一人です。平家を滅ぼすという大功を挙げた義経は、兄の頼朝にそねまれた結果、追い詰められて自害することになります。
その際に、弁慶は最後まで奮戦し最後まで義経を守り、全身に矢を受けながら立ったまま亡くなったと言われていました。これが転じて、立ったままの姿勢で死ぬこと「立ち往生」と言うようになったのです。
「立ち往生」の類語
「立ち往生」の類語・類義語としては、行く手がさえぎられそれ以上先へ進めなくなることを意味する「行き詰まり」、ある状態が固定してほとんど動きがなくなることを意味する「膠着」(読み方:こうちゃく)などがあります。
「仁王立ち」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、仁王の像のようにいかめしく力強い様相で立つことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「仁王立ち」は怒ったり脅したりというニュアンスで使われることが多い言葉です。
「立ち往生」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、その場に止まったり途中で行き詰まったりして処置のしようもなく動きのとれないことを表現したい時などが挙げられます。その他にも、立ったままの姿勢で死ぬことを表現したい時にも使います。
例文1から例文4の「立ち往生」はその場に止まったり途中で行き詰まったりして処置のしようもなく動きのとれないこと、例文5の「立ち往生」は立ったままの姿勢で死ぬことの意味で使っています。
「仁王立ち」と「立ち往生」はどちらもその場に立っていることを表します。
どちらの言葉を使うか迷った場合、仁王の像のようにいかめしく力強い様相で立つことを表現したい時は「仁王立ち」を、その場に止まったり途中で行き詰まったりして処置のしようもなく動きのとれないことを表現したい時は「立ち往生」を使うと覚えておきましょう。