似た意味を持つ「予断」(読み方:よだん)と「油断」(読み方:ゆだん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「予断」と「油断」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
予断と油断の違い
予断と油断の意味の違い
予断と油断の違いを分かりやすく言うと、予断とは前もって判断すること、油断とは注意を怠ることという違いです。
予断と油断の使い方の違い
一つ目の予断を使った分かりやすい例としては、「景気の先行きは予断を許さない状況です」「予断を持たないで検証すべきです」「いまだ予断が許されない状況であります」「今後の動向は予断を許しません」などがあります。
二つ目の油断を使った分かりやすい例としては、「油断していると足をすくわれるぞ」「台風が過ぎても油断は禁物です」「英語ができると思って油断するなよ」「油断させたうえで戦いを仕掛ける狙いだ」などがあります。
予断と油断の使い分け方
予断と油断という言葉は、発音や字面が似ているため混同して使用されることがありますが、意味や使い方には大きな違いがあります。
予断とは、前もって物事を決めることを意味し、多くは「予断を許さない」という表現で用いられる言葉です。「予断を許さない」は、今度の展開を判断することができないことを表し、この後どうなるかわからない予測不可能な事柄に対して使用されています。
油断とは、大したことではないと物事を軽視して、注意を怠ることを意味します。「油断大敵」は、油断は失敗のもとであるから恐ろしい敵であることを表し、油断することを戒めた四字熟語です。
つまり、予断とは前もって判断することを表し、油断とは気を緩めて注意を怠ることを表現した言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は大きく異なりますので、きちんと使い分ける必要があります。
予断と油断の英語表記の違い
予断を英語にすると「prejudice」「prediction」となり、例えば上記の「予断を許さない」を英語にすると「there is no predicting」となります。
一方、油断を英語にすると「carelessness」「negligence」となり、例えば上記の「油断している」を英語にすると「be not careful」となります。
予断の意味
予断とは
予断とは、前もって判断すること、予測を意味しています。
予断の読み方
予断の読み方は「よだん」です。同じ読み方をする熟語に「余談」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
表現方法は「予断を排する」「予断を排して」「予断を持つ」
「予断を排する」「予断を排して」「予断を持つ」などが、予断を使った一般的な言い回しです。
予断の使い方
予断を使った分かりやすい例としては、「交渉が進展するかは予断を許さない状況です」「依然として予断は許されない状況です」「予断を許す状況ではありません」「一瞬の予断も許されない局面です」などがあります。
その他にも、「予断を持ってはいけません」「予断なく英語の聞き取りを行いましょう」「命に危険が迫り、予断を許さない状態です」「予断を持つことなく注視していきます」「予断を持たず臨機応変に運営する」などがあります。
予断の「予」は訓読みで「あらかじめ」と読み、物事の始まる前に事をしておく様子を表します。「断」は物事をきっぱりと決めることを表します。予断とは、前もって事の成り行きを判断することを意味し、あらかじめ判断を下すことを表す言葉です。
「予断を許さない」の意味
予断を用いた言い回しには「予断を許さない」があります。「予断を許さない」とは、前もって判断することができないことを意味します。情勢が不安定なさまや、先行きが不透明である様子に対して用いられる表現です。
予測が可能であることを「予断を許す」と言うは誤り
「予断を許さない」は予測が不可能であることを意味しますが、予測が可能であることを「予断を許す」とは言いません。ただし、「予断を許す状況ではない」と否定形で使用されることはあります。
予断の対義語
予断の対義語・反対語としては、ある原因や行為から生じた結末や状態を意味する「結果」などがあります。
予断の類語
予断の類語・類義語としては、物事の起こる前に事を見通すことを意味する「予見」、物事の成り行きや結果について前もって見当をつけることを意味する「予想」、先行きの予想を意味する「見込み」、物事の見通しを意味する「目処」などがあります。
油断の意味
油断とは
油断とは、たかをくくって気を許し、注意を怠ることを意味しています。
表現方法は「油断する」「油断できない」「油断大敵」「油断禁物」
「油断する」「油断できない」「油断大敵」「油断禁物」などが、油断を使った一般的な言い回しです。
油断の使い方
油断を使った分かりやすい例としては、「標準体重でも油断禁物、隠れ肥満かもしれません」「次の試合も油断せずに行こう」「英語が得意な子も油断はできません」「インフレ減速でも油断は禁物です」などがあります。
その他にも、「油断大敵、気を引き締めよう」「相手が子どもだからって油断したねぇ」「全く油断も隙もない男だ」「重症化リスクは低くても油断はできません」「油断をせずに暑さ対策をしましょう」などがあります。
油断とは、続けるべき注意や集中が途切れて不注意になること、物事を軽視して必要な注意を怠ることを意味します。「油断大敵」「油断禁物」のような使い方で、注意を怠って失敗を招くことを戒める言葉として用いられています。
油断の語源
油断という言葉の語源は諸説ありますが、有力な説の一つは仏教に由来するものです。比叡山延暦寺の根本中堂に灯される法灯は、開祖である最澄の頃から消さないよう油を足し続けています。注意深くあることで油を断つことがなかったことから、「油断」という言葉が生まれました。
「油断も隙もない」の意味
油断という言葉を用いた日本語には「油断も隙もない」があります。「油断も隙もない」とは、少しも油断することはできない、油断がならないことを意味します。
油断の対義語
油断の対義語・反対語としては、万一に備えて注意や警戒を怠らないことを意味する「用心」、ある物事に心をとどめて気をつけることを意味する「留意」などがあります。
油断の類語
油断の類語・類義語としては、心が行きとどかないことを意味する「不注意」、うっかりしているさまを意味する「迂闊」(読み方:うかつ)、緊張を緩めることを意味する「気を抜く」、つけいる機会や気の緩みを意味する「隙」などがあります。
予断の例文
この言葉がよく使われる場面としては、前もってそれと判断することを表現したい時などが挙げられます。
例文4や例文5にある「予断を持つ」とは前もって予測や判断をすることであり、決めつけた考えを持たないことは「予断を持つことなく」「予断を持たず」などと表現します。
油断の例文
この言葉がよく使われる場面としては、気を許すこと、抜かりがあることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「油断する」とは、注意を怠ったり、集中が途切れたりすることを意味します。
例文5の「油断大敵、火がぼうぼう」ということわざは、「油断大敵、火が亡々」と書きます。油を断つと火が消えてしまうので、絶やさないように注意が必要であることを意味します。火がボウボウと燃え広がることではありません。
予断と油断という言葉は、音の響きや字面が似ていますが意味は全く違います。どちらの言葉を使うか迷った場合、前もって判断することを表現したい時は「予断」を、注意を怠ることを表現したい時は「油断」を使うようにしましょう。