似た言葉である「公共の福祉」(読み方:こうきょうのふくし)と「公序良俗」(読み方:こうじょりょうぞく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「公共の福祉」と「公序良俗」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
「公共の福祉」と「公序良俗」の違い
「公共の福祉」と「公序良俗」の意味の違い
「公共の福祉」と「公序良俗」の違いを分かりやすく言うと、「公共の福祉」とは社会全体に共通する幸福や利益のこと、「公序良俗」とは一般的に良いとされている風習や道徳的な考えのことという違いです。
「公共の福祉」と「公序良俗」の使い方の違い
一つ目の「公共の福祉」を使った分かりやすい例としては、「公共の福祉のために働いています」「公共の福祉に反してはなりません」「公共の福祉に役立つことをしました」「彼の行動は公共の福祉に反する」などがあります。
二つ目の「公序良俗」を使った分かりやすい例としては、「法を犯してなくても公序良俗に反することはできません」「公序良俗に反すると責任を問われることがあります」「公序良俗に反する行為またはその恐れのある行為」などがあります。
「公共の福祉」と「公序良俗」の使い分け方
「公共の福祉」と「公序良俗」は似た言葉ですが、意味は異なっているので間違えないように注意しましょう。
「公共の福祉」とは社会全体に共通する幸福や利益のことを意味しており、個人の権利と権利が衝突した場合に、それを調整するための実質的公平原理のことを指しています。
一方、「公序良俗」は 一般的に良いとされている風習や道徳的な考えのことを意味しており、社会全体の秩序維持のための規定を指しているというのが違いです。
つまり、「公共の福祉」と「公序良俗」は全く異なっている概念なので、間違えないように注意しましょう。
「公共の福祉」と「公序良俗」の英語表記の違い
「公共の福祉」を英語にすると「the public welfare」となり、例えば上記の「彼の行動は公共の福祉に反する」を英語にすると「His actions interfere with the public welfare」となります。
一方、「公序良俗」を英語にすると「public order and standards of decency」「public policy」となり、例えば上記の「公序良俗に反する行為またはその恐れのある行為」を英語にすると「Any actions that will or may violate public order and standards of decency」となります。
「公共の福祉」の意味
「公共の福祉」とは
「公共の福祉」とは、社会全体に共通する幸福や利益のことを意味しています。
表現方法は「公共の福祉に反する」「公共の福祉に反しない限り」
「公共の福祉に反する」「公共の福祉に反しない限り」などが、「公共の福祉」を使った一般的な言い回しになります。
「公共の福祉」の使い方
「公共の福祉」を使った分かりやすい例としては、「公共の福祉に反しない行動をしよう」「公共の福祉増進のために努力することにしました」「公共の福祉の範囲なら行っても可能ですよ」「公共の福祉を促進させる運動をする」などがあります。
「公共の福祉」は社会全体に共通する幸福や利益のことを意味しており、日本国憲法に規定された人権の制約法理です。
日本国憲法では自由や権利の保持の、未来の世代に対する責任、濫用の禁止の第12条、個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉の第13条、居住移転及び職業選択の自由や外国移住及び国籍離脱の自由の第22条、財産権の第29条において用いられています。
「公共の福祉」は国家と国民との間の関係を規律する概念です。例えば、表現の自由などの自由権は、原則として、国家がこれを制約することは許されません。しかし、表現の自由といっても名誉棄損や権利の乱用などは野放しにすることはできません。
この自由権を制約してもやむを得ないと認められる事由を「公共の福祉」と呼んでいるのです。したがって、公共の福祉の範囲内の制約であれば憲法上許容されると解釈することもできます。
「公共の福祉」の類語
「公共の福祉」の類語・類義語としては、特定の個人や階層や法人などの利益でない社会の成員すべての利益のことを意味する「公共の利益」があります。
「公序良俗」の意味
「公序良俗」とは
「公序良俗」とは、一般的に良いとされている風習や道徳的な考えのことを意味しています。
表現方法は「公序良俗の範囲」「公序良俗を守る」「公序良俗に反する」
「公序良俗の範囲」「公序良俗を守る」「公序良俗に反する」などが、「公序良俗」を使った一般的な言い回しになります。
「公序良俗」の使い方
「公序良俗」を使った分かりやすい例としては、「それは公序良俗からしてやってはいけないと思う」「行き過ぎた賭博行為は公序良俗に反する」「これは公序良俗に反しているので無効だと思います」などがあります。
「公序良俗」は公的な秩序と善良な風俗を省略した四字熟語で、意味を分かりやすく言うならば、一般的に良いとされている風習や道徳的な考えのことのです。四字熟語とは、漢字4文字で構成される熟語のことを意味しています。
「公序良俗」はすべての法の基本理念で法解釈やその適用のときの基準の一つでもあります。そのため、「公序良俗」に反すると、犯罪行為になることもあると覚えておきましょう。
また、民法第90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」とされており、契約の有効性を論じるときに、その社会的妥当性を判断する基準となっています。
例えば、AさんがBさんに盗みを依頼して、約束通りに盗んできたのに報酬が支払われないとBさんが裁判所に訴えたとしても、国家は盗みに手を貸すことができませんので、公序良俗に反する規定として、その契約は無効になります。
その他にも、「公序良俗」は一般的に良いとされている風習や道徳的な考えのことなので、不倫や浮気、合法ではない賭け事、高利金貸しなどが「公序良俗」に反するものと覚えておきましょう。
「公序良俗」の類語
「公序良俗」の類語・類義語としては、社会生活が混乱なく営まれている状態のために必要な社会の制度や仕組みのことを意味する「社会秩序」、社会が法律によって規律されて秩序が保たれている状態のことを意味する「法的秩序」などがあります。
「公共の福祉」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、社会全体に共通する幸福や利益のことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「公共の福祉」は憲法の中で用いられている言葉です。
「公序良俗」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一般的に良いとされている風習や道徳的な考えのことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「公序良俗」は憲法の中で用いられている言葉です。
「公共の福祉」と「公序良俗」は似た言葉ですが意味は異なっています。
どちらの言葉を使うか迷った場合、社会全体に共通する幸福や利益のことを表現したい時は「公共の福祉」を、一般的に良いとされている風習や道徳的な考えのことを表現したい時は「公序良俗」を使うと覚えてきましょう。