似た意味を持つ「やりがい搾取」(読み方:やりがい搾取)と「サービス残業」(読み方:さーびすざんぎょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「やりがい搾取」と「サービス残業」という言葉は、どちらも不当な条件で雇用されていることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「やりがい搾取」と「サービス残業」の違い
「やりがい搾取」と「サービス残業」の意味の違い
「やりがい搾取」と「サービス残業」の違いを分かりやすく言うと、「やりがい搾取」は違法性がない、「サービス残業」は違法性があるという違いです。
「やりがい搾取」と「サービス残業」の使い方の違い
一つ目の「やりがい搾取」を使った分かりやすい例としては、「クリエイティブな職業はやりがい搾取が起こりやすいと言われている」「やりがい搾取の現場で働いていると心身ともに疲弊する」などがあります。
二つ目の「サービス残業」を使った分かりやすい例としては、「サービス残業に苦しんでいるがどこに相談していいか分かりません」「サービス残業を行なっている企業を許すことはできません」「サービス残業が横行しているのは良くないです」などがあります。
「やりがい搾取」と「サービス残業」の使い分け方
「やりがい搾取」と「サービス残業」は、どちらも不当な条件で雇用されていることを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「やりがい搾取」は雇用する側が労働者の意欲を利用して労働や時間に見合った対価を支払わないことを意味しており、最低賃金で労働環境も過酷だけど法令違反にはなっていないため、違法性がないことが多いです。
一方、「サービス残業」は時間外手当の支給されない残業のことを意味しており、 労働基準法の「時間外労働や休日に労働した場合は割増賃金を支払わなくてはならない」に違反しているため、違法性があるというのが違いになります。
「やりがい搾取」も「サービス残業」は日本語特有の言葉なので、直訳した英語表記はないと覚えておきましょう。
「やりがい搾取」の意味
「やりがい搾取」とは
「やりがい搾取」とは、雇用する側が労働者の意欲を利用して労働や時間に見合った対価を支払わないことを意味しています。
「やりがい搾取」の使い方
「やりがい搾取」を使った分かりやすい例としては、「真面目で努力家な人はやりがい搾取されやすい」「やりがい搾取を行なっている企業を許すことはできません」「やりがい搾取を行なう企業は甘い誘い文句を使うことが多い」などがあります。
「やりがい搾取」とは雇用する側が労働者の意欲を利用して労働や時間に見合った対価を支払わないこと、つまり、経営者または依頼者が本来支払うべき賃金や手当の代わりに、労働者に「やりがい」を強く意識させることで、料金の支払いを免れることを意味する造語です。
「やりがい搾取」は、自分の才能や能力を発揮することを重視する若年労働者につけ込んで、企業側が最低賃金などの都合の良い労働環境下で働かせるというのが現状です。そのため、マイナスなイメージで使われる言葉になります。
「やりがい搾取」が起こりやすい業界や業種を挙げると、介護士や保育士、コンビニやチェーン居酒屋の店長、ウェブデザイナーやアニメーター、アバレル業界、ゲーム業界などがあります。
「やりがい搾取」の由来
「やりがい搾取」という言葉を名付けたのは、東京大学教授で教育社会学者の本田由紀氏になります。2007年前後から本田由紀氏が著書などで使い始めたことで広く認知されるようになりました。
「やりがい搾取」の類語
「やりがい搾取」の類語・類義語としては、取り次いで人に渡すべき金品からその一部を取って自分のものとすることを意味する「ピンハネ」、他人の得た利益などを取り上げることを意味する「吸い取る」などがあります。
「サービス残業」の意味
「サービス残業」とは
「サービス残業」とは、時間外手当の支給されない残業のことを意味しています。
「サービス残業」の省略語は「サビ残」
「サービス残業」を省略して「サビ残」と言うこともあると覚えておきましょう。
表現方法は「サービス残業を強要」「サービス残業が多い」「サービス残業が当たり前の会社」
「サービス残業を強要」「サービス残業が多い」「サービス残業が当たり前の会社」などが、「サービス残業」を使った一般的な言い回しです。
「サービス残業」の使い方
「サービス残業」を使った分かりやすい例としては、「この会社はタイムカードを切った後のサービス残業が横行している」「サービス残業は断固反対です」「サービス残業をさせられたので訴えることにしました」などがあります。
「サービス残業」は、言い換えると「賃金不払残業」のことで、所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して、所定の賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせることを意味しています。
従業の労働時間は労働基準法32条により、1日8時間、1週間で40時間とされており、これ以上働くと残業代を支払わないといけません。また、労働基準法37条には、時間外や休日及び深夜の割増賃金の規定があります。
この残業代を支払わないで従業に残業させるのが「サービス残業」になります。もちろん労働基準法に違反しているので、「サービス残業」には違法性があると覚えておきましょう。
「サービス残業」の種類
「サービス残業」と一言で言っても、様々な種類があります。
一つ目は始業時間よりも早い出勤を求めることです。例えば、朝の出勤が9時からになっているのにも関わらず、何らかの理由で8時30分に出勤を求められており、これの支払いがなければサービス残業になります。
二つ目は名ばかり管理職です。2010年頃から小売店や飲食店を中心に行われている悪質なサービス残業のことを指しています。名ばかり管理職とは、労働基準法では管理監督者には残業代を支払わなくていいとされているため、それ逆手に取った悪質な行為のことです。
社内の独自の基準で店長やエリアマネージャーを管理職として扱い、役職に相応する権限や報酬が与えられないのに、管理職だからという理由で残業代を払わないという方法になります。
三つ目はタイムカードを押したあとに残業させる手法です。例えば17時が定時の企業において、17時にタイムカードを押させてあとに残業させることで、17時の退勤記録が残っているため、会社側が残業代の支払いを免れるという方法になります。
「サービス残業」の類語
「サービス残業」の類語・類義語としては、給料が支給されないことを意味する「無給」、所定時間外労働に対して支払われるべき正規の賃金を支払わないで済ませる労働のことを意味する「不払い残業」などがあります。
「やりがい搾取」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、雇用する側が労働者の意欲を利用して労働や時間に見合った対価を支払わないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「やりがい搾取」はマイナスなイメージで使われている言葉です。
「サービス残業」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、時間外手当の支給されない残業のことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「サービス残業」はマイナスなイメージで使われている言葉です。
「やりがい搾取」と「サービス残業」はどちらも不当な条件で雇用されていることを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、違法性がないのが「やりがい搾取」、違法性があるのが「サービス残業」と覚えておきましょう。