似た意味を持つ「自我」(読み方:じが)と「自己」(読み方:じこ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「自我」と「自己」という言葉は、どちらも「自分」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
自我と自己の違い
自我と自己の意味の違い
自我と自己の違いを分かりやすく言うと、自我とは自分に対する意識を表し、自己とは客観的に捉えた自分を表すという違いです。
自我と自己の使い方の違い
一つ目の自我を使った分かりやすい例としては、「思春期は自我に目覚める時期です」「2歳前後は自我が芽生える頃です」「自我同一性はいつごろ形成されますか」「ストレスを感じると自我防衛機制が働く」などがあります。
二つ目の自己を使った分かりやすい例としては、「就活で使える自己PRの書き方を教えてください」「自己免疫疾患の原因は何ですか」「銀行の自己資本比率についてご説明します」「主体としての自己が何であるかを問う」などがあります。
自我と自己の使い分け方
自我と自己という言葉は、どちらも「おのれ、自分」を表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
自我とは、自分に対する意識を意味し、「自我が強い」とは、自分の考えや信念がしっかりしていて、意志を貫こうとするさまを表します。哲学や心理学あるいは精神分析など、専門分野で使用されることが多い言葉です。
自己とは、当の本人を意味します。個人が自分自身を客観的に捉える際に、日常的に使用されることが多い言葉です。「自己紹介」とは、他者に自分を知ってもらうために、自身の出身や人柄などを簡単に伝えるためのものです。
つまり、自我とは自分に対する意識を意味する専門的な表現であり、自己とは客観的に自分を捉える日常的な表現です。二つの言葉は似ていますが、ニュアンスが異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
自我と自己の英語表記の違い
自我も自己も英語にすると「self」「ego」となり、例えば上記の「自我に目覚める」を英語にすると「awake to one’s self」となります。
自我の意味
自我とは
自我とは、自分、自己を意味しています。
その他にも、「哲学で、知覚・思考・意志・行為などの自己同一的な主体として他者や外界から区別して意識される自分」「心理学で、行動や意識の主体、精神分析で、イド・超自我を統制して現実への適応を行わせる精神の一側面」の意味も持っています。
表現方法は「自我が強い」「自我がない」「自我を持つ」
「自我が強い」「自我がない」「自我を持つ」などが、自我を使った一般的な言い回しです。
自我の使い方
「わがままで自我が強い人は苦手です」「自我の強い女は嫌われがちだ」などの文中で使われている自我は「自分、自己」の意味で、「英語教育は自我形成につながるでしょう」の文中で使われている自我は「他者や外界から区別して意識される自分」の意味で使われています。
一方、「発達段階の一つに自我の芽生えがあります」「自我障害は統合失調症の特徴です」「青年期に自我同一性を確立する」「フロイトは自我と超自我とエスの構造論を提唱した」などの文中で使われている自我は「行動や意識の主体、精神の一側面」の意味で使われています。
自我とは、自分を意味しますが、多くは自分に対する意識を表す際に用いられる言葉です。哲学用語としての「自我」は自己意識ともいい、他なるものから区別した認識作用を意味します。心理学用語の「自我」は、意識の主体であり、行動をコントロールし現実社会に適応させるものと規定しています。
「自我同一性」の意味
自我を用いた日本語には「自我同一性」があります。自我同一性とは、アメリカの精神分析学者エリクソンが用いた言葉で、心理社会的発達によって青年期に獲得されるものを指します。「アイデンティティー」ともいうもので、自分は何者であるかという自己定義を意味します。
自我の対義語
自我の対義語・反対語としては、自我に対して他人に存在すると考えられる我を意味する「他我」、哲学で自我に対立して存在している一切のものを意味する「非我」などがあります。
自我の類語
自我の類語・類義語としては、他と区別された個人としての自我を意味する「個我」、認識し行為する人間存在の中心である自我を意味する「主観」、自我やエゴイズムの略を意味する「エゴ」などがあります。
自己の意味
自己とは
自己とは、おのれ、自分、自身を意味しています。
その他にも、「哲学で、同一性を保持して存在するあるもの、それ自身」の意味も持っています。
表現方法は「自己概念」「自己顕示欲」「自己肯定感」
「自己概念」「自己顕示欲」「自己肯定感」などが、自己を使った一般的な言い回しです。
自己の使い方
「英語圏の人々は自己肯定感が高い」「自己愛性パーソナリティ障害の特徴は何ですか」「自己紹介カードのテンプレートを用意しました」「英語で自己紹介をしましょう」「SNSで自己顕示欲を満たす」などの文中で使われている自己は、「おのれ、自分、自身」の意味で使われています。
一方、「自己の正体を明らかにする」「知る主体としての自己と知られる客体としての自己に分ける」「自己を中心とする世界を主体的に行動している」などの文中で使われている自己は、「同一性を保持して存在するもの」の意味で使われています。
自己とは、何かをする当の本人である「自分、自身」を意味します。自分自身を客観的に捉える際に使用され、「自己紹介」「自己破産」など「自己○○」という表現で使用されています。また、哲学用語としての「自己」は、同一性を保って存在する人間自身を指し、人格的存在以外にも用いられます。
「自己愛」の意味
自己を用いた日本語には、「自己愛」があります。自己愛とは、自分自身を愛することを意味し、「ナルシシズム」ともいいます。上記例文にある「自己愛性パーソナリティー障害」とは、自分を特別な存在であると思い込むことにより、他者との協調が難しくなり日常生活に支障をきたす精神障害です。
自己の対義語
自己の対義語・反対語としては、自分以外の人を意味する「他人」、哲学で自己に対してある何かあるものを意味する「他者」などがあります。
自己の類語
自己の類語・類義語としては、その人自身や一人称の人代名詞を意味する「自分」、自分みずからを意味する「自分自身」、その人やそのもの自身を意味する「己」、自分や自分自身を意味する「自家」などがあります。
自我の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分、哲学で他者や外界から区別して意識される自分、心理学で自我意識を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、自我の慣用的な表現には「自我の芽生え」「自我が出る」「自我を持つ」「自我が強い」などがあります。「自我の芽生え」とは、自分の存在を意識し始めることを意味します。
自己の例文
この言葉がよく使われる場面としては、おのれ、われ、自分自身、同一性を保持して存在するその人間自身を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「自己破産」とは、借金の返済ができなくなり、裁判所に自ら申し立てる破産のことです。例文2の「自己肯定感」とは、ありのままの自分を肯定する感覚を意味します。
自我と自己という言葉は、どちらも「自分」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、自分に対する意識を表現したい時は「自我」を、客観的に捉えた自分を表現したい時は「自己」を使うようにしましょう。