似た意味を持つ「寸前」(読み方:すんぜん)と「直前」(読み方:ちょくぜん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「寸前」と「直前」という言葉は、どちらも「ほんの少し前」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
寸前と直前の違い
寸前と直前の意味の違い
寸前と直前の違いを分かりやすく言うと、直前よりも寸前の方が、すぐ近くに迫っているさまを表すという違いです。
寸前と直前の使い方の違い
一つ目の寸前を使った分かりやすい例としては、「絶滅寸前のツキノワグマを調査する」「祖母は特殊詐欺に引っ掛かる寸前だった」「医療現場は崩壊寸前の危機に直面しています」「障害物の寸前で急ブレーキをかける」などがあります。
二つ目の直前を使った分かりやすい例としては、「直前のご連絡となり申し訳ございません」「旅行の直前予約はお得です」「若い人でも直前の記憶が飛ぶことがあります」「温泉旅館を直前割で安く予約する」などがあります。
寸前と直前の使い分け方
寸前と直前という言葉は、時間的にも空間的にもほんの少し前であることを意味します。どちらも時間や場所がすぐ近くに迫っていることを表し、ほとんど同じ意味を持つため、使い分けが難しい言葉ですが、あえて違いを言うならば物事が迫っている度合いでしょう。
寸前は、時間の近さや距離感の近さの度合いが大きく、すぐ近くに迫っているニュアンスがある言葉です。これは寸前の「寸」が、長さの単位で約3センチメートルという短さを表すことに由来します。そのため、寸前は直前よりも、すぐ近くに迫っている様子を印象づける言葉となっているのです。
二つの言葉はほぼ同義の言葉ですが、物事が迫っている度合いを厳密に表現した時に使い分けると良いでしょう。
寸前と直前の英語表記の違い
寸前も直前も英語にすると「just before」「immediately before」「on the verge of」となり、例えば上記の「絶滅寸前」を英語にすると「on the verge of destruction」となります。
寸前の意味
寸前とは
寸前とは、ある事の起こるほんの少し前、直前を意味しています。
その他にも、「ある物のほんの少し手前、直前」の意味も持っています。
寸前の読み方
寸前の読み方は「すんぜん」です。誤って「そんぜん」「すんまえ」などと読まないようにしましょう。
寸前の使い方
「キレる寸前で踏みとどまる」「試験の寸前まで英語の力は伸びます」「発車する寸前のところで飛び乗った」「四字熟語のテスト寸前に覚えようとする」「締め切り寸前になって時間の使い方を後悔する」などの文中で使われている寸前は、「ある事の起こるほんの少し前」の意味で使われています。
一方、「車の寸前で横断してはいけません」「ゴール地点の寸前で転んでしまった」「フェンスの寸前でボールをキャッチする」などの文中で使われている寸前は、「ある物のほんの少し手前」の意味で使われています。
寸前の「寸」は長さの単位で約3㎝を意味し、ごくわずかであるさまを表します。空間的に前の方や時間的に前であることを表す「前」と結びつき、寸前とは、ほんのちょっと前を意味する言葉です。空間的な場合にも、時間的な場合にも用いられます。
「絶滅寸前」の意味
寸前を用いた日本語には「絶滅寸前」があります。絶滅寸前とは、IUCN(国際自然保護連合)が示すレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)で使用されていたカテゴリー項目の一つです。三世代以内に個体数が80%減少した種を絶滅寸前としています。
四字熟語「寸前尺魔」の意味
寸前を用いた誤った四字熟語には「寸前尺魔」があります。正しくは「寸善尺魔」で、世の中にはよい事が少なく悪い事の方が多いことを意味します。
寸前の対義語
寸前の対義語・反対語としては、そのすぐ後あることが行われたその瞬間を意味する「途端」などがあります。
寸前の類語
寸前の類語・類義語としては、物事がまさに行われようとするときを意味する「間際」、時間や距離がすぐ近くであることを意味する「間近」、物事がまさに決着しようとする間際を意味する「土俵際」などがあります。
直前の意味
直前とは
直前とは、物事の起こったり行われたりするすぐ前を意味しています。
その他にも、「すぐ前、目の前」の意味も持っています。
直前の使い方
「直前の連絡で申し訳ありません」「受験直前期は英語の勉強に力を入れました」「約束の直前になると行きたくなくなる現象に名前はありますか」「ホテルの直前割プランでお得に宿泊できました」などの文中で使われている直前は、「物事の起こったり行われたりするすぐ前」の意味で使われています。
一方、「ホテルの直前で家に忘れ物をしたことに気付く」「車は私の直前でスリップしました」「青々とした平原が直前に広がっている」「この車は直前直左の視界基準をクリアしています」などの文中で使われている直前は、「すぐ前、目の前」の意味で使われています。
直前とは、上記の例文にあるように複数の意味を持つ言葉です。それぞれの意味で用いられているので、文脈により意味をとらえる必要があります。直前の「直」は間に何もおかないことを表し、「前」は時間的または空間的に前の方であることを表す漢字です。
「直前割」の意味
直前を用いた日本語には「直前割」があります。直前割とは、主に旅行業界で使用される言葉で、ホテルや旅館の客室あるいは飛行機の席などが直前になっても空いている場合、その空きを埋めるために割引をすること意味します。
直前の対義語
直前の対義語・反対語としては、物事の起こったり行われたりしたすぐあとを意味する「直後」などがあります。
直前の類語
直前の類語・類義語としては、見ている目の前や極めて近いことを意味する「目前」、目の前を意味する「鼻先」、目のすぐ前や眼前を意味する「目の当たり」、自分の目の前を意味する「手前」などがあります。
寸前の例文
この言葉がよく使われる場面としては、時間的な直前、空間的な直前を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4の寸前は、時間的な直前の意味で用いられています。例文5の寸前は、空間的な直前の意味で使用されています。
直前の例文
この言葉がよく使われる場面としては、事の起こるすぐ前、物のすぐ前の位置、目の前を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3の直前は事の起こるすぐ前の意味で、例文4にある直前は物のすぐ前の位置の意味で用いられています。例文5の直前は、目の前を意味しています。
寸前と直前という言葉は、どちらも「ほんの少し前」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、より少し前であることを強調したい時は「寸前」を使うとよいでしょう。