似た意味を持つ「事前」(読み方:じぜん)と「直前」(読み方:ちょくぜん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「事前」と「直前」という言葉は、どちらも「物事の前」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
事前と直前の違い
事前と直前の意味の違い
事前と直前の違いを分かりやすく言うと、事前とは時間的に前であることのみを表し、直前とは時間的だけでなく空間的にも前であることを表すという違いです。
事前と直前の使い方の違い
一つ目の事前を使った分かりやすい例としては、「事前の打合せで最終確認を行いましょう」「新作アプリの事前登録をしました」「事前確定届出給与の記載例をネットで検索する」「事前教示に関する照会書を税関に提出する」などがあります。
二つ目の直前を使った分かりやすい例としては、「試験の直前には必ずトイレに行きます」「直前割で安くホテルに泊まれました」「直前の操作を取り消して操作前に戻す」「交差点の直前で一時停止する」などがあります。
事前と直前の使い分け方
事前と直前という言葉は、どちらも物事が起こる前や物事を行う前を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
事前とは、物事を行う前や物事が実行される前を意味し、時間的に前であることを表す言葉です。「アプリの事前登録」とは、アプリの正式リリース前に、ダウンロードを行ってユーザー情報を登録しておくことです。
直前とは、「試験の直前」のような使い方で、物事が行われるすぐ前を意味します。事前という言葉と同様に、時間的に前であることを表しますが、事前よりも時間がさし迫っている様子を表現する言葉です。また、「交差点の直前」のような使い方で、空間的に前であることも意味します。
つまり、事前とは時間的に前であることのみを表現しますが、直前とは時間的に前であることと空間的に前であることを表します。また、事前よりも直前の方が、時間がすぐ近くに迫っている様子を表現することも、二つの言葉の明確な違いになります。
事前と直前の英語表記の違い
事前を英語にすると「advance」「prior」「before the fact」となり、例えば上記の「事前の打合せ」を英語にすると「advanced meeting」となります。
一方、直前を英語にすると「just before」「right before」「immediately before」となり、例えば上記の「試験の直前に」を英語にすると「just before the examination」となります。
事前の意味
事前とは
事前とは、事の起こる前、事を行う前を意味しています。
事前の使い方
事前を使った分かりやすい例としては、「オンラインチェックインで事前に搭乗手続きができます」「えきねっとの事前受付はいつからできますか」「事前に作れる夏のおもてなし料理をネットで調べる」などがあります。
その他にも、「事前確定届出給与に関する届出書を提出する」「事前確定届出給与の届出の期限を確認する」「期日前投票制度は国民投票における事前投票の一つです」「立候補の届け出前に行われる事前運動は禁止されています」などがあります。
事前の「事」は訓読みで「こと」と読み、特定の状況や出来事を表します。ある時点よりも先であることを表す「前」と組み合わさり、事前とは、物事の起こる前や物事の行われる前を意味します。事前とは、何日前という定義はありませんが、まだ事が起こっていない時点を指す言葉です。
「事前確定届出給与」の意味
事前を用いた日本語には「事前確定届出給与」があります。事前確定届出給与とは、役員の職務に対して所定の時期に所定の金額を支払うという旨を、事前に税務署に届出をして支払う給与を意味します。事前確定届出給与は損金として認められるので、節税としてのメリットがあります。
事前の対義語
事前の対義語・反対語としては、物事が済んだあとを意味する「事後」などがあります。
事前の類語
事前の類語・類義語としては、ある事の起こるほんの少し前を意味する「寸前」、見ている目の前やすぐ先に迫っていることを意味する「目前」、物事がまさに行われようとするときを意味する「間際」、接近して間の近いさまを意味する「間近」などがあります。
直前の意味
直前とは
直前とは、物事の起こったり行われたりするすぐ前を意味しています。
その他にも、「すぐ前、目の前」の意味も持っています。
直前の使い方
「直前のご連絡となり申し訳ございません」「英語の試験直前に体調を崩してしまった」「直前のコミットを取り消す」「温泉宿の直前割はとてもお得です」などの文中で使われている直前は、「物事の行われるすぐ前」の意味で使われています。
一方、「停止線の直前で確実に停止してください」「カメラを装着して直前直左の視界を確保する」「ゴール直前で伴走者の手を握り失格となった」などの文中で使われている直前は、「すぐ前、目の前」の意味で使われています。
直前とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。直前の「直」は訓読みで「ただちに」と読み、間を少しも置かずすぐであること、「前」は正面の向かっている方向やある時点より早い時を表す漢字です。
「直前のご連絡となり申し訳ございません」の意味
上記例文にある「直前のご連絡となり申し訳ございません」とは、ビジネスシーンで使用されることが多い表現です。会議や打ち合わせなど、予定している事柄が迫っている段階で変更や依頼を恐縮しながら知らせるフレーズです。
直前の対義語
直前の対義語・反対語としては、物事の起こったり行われたりしたすぐあとを意味する「直後」などがあります。
直前の類語
直前の類語・類義語としては、ある状態に達する前の段階を意味する「以前」、物事の始まる前に、ある事をしておくさまを意味する「あらかじめ」、かねてからを意味する「前以て」、前もって準備しておくことや下準備を意味する「下ごしらえ」などがあります。
事前の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の起こる前、実施される前を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「事前教示」とは、輸入を予定している貨物の関税分類を輸入の前に照会して回答を受けることです。この制度を「事前教示制度」と言います。
直前の例文
この言葉がよく使われる場面としては、事の起こるすぐ前、物のすぐ前の位置を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4の直前は、「事の起こるすぐ前」の意味で用いられています。例文5の直前は、「物のすぐ前の位置」の意味で使用されています。
事前と直前という言葉は、どちらも「時間的に前であること」を表します。さらに直前という言葉には、「空間的に前であること」の意味もあることを覚えておきましょう。