似た意味を持つ「妨害」(読み方:ぼうがい)と「阻害」(読み方:そがい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「妨害」と「阻害」という言葉は、どちらも「邪魔すること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
妨害と阻害の違い
妨害と阻害の意味の違い
妨害と阻害の違いを分かりやすく言うと、妨害よりも阻害の方が、妨げる対象が抽象的であるという違いです。
妨害と阻害の使い方の違い
一つ目の妨害を使った分かりやすい例としては、「SNSでの誹謗中傷で営業妨害されています」「無職の男が業務妨害罪の容疑で逮捕されました」「衛星通信を妨害する装置が開発されました」などがあります。
二つ目の阻害を使った分かりやすい例としては、「睡眠不足は子供の成長を阻害します」「海外展開の阻害要因を探る」「糖尿病の治療薬として阻害薬が注目されています」「安全な阻害剤の合成に成功しました」などがあります。
妨害と阻害の使い分け方
妨害と阻害という言葉は、どちらも物事の進行や遂行を邪魔することを表す同義語です。ほぼ同じ意味を持つため、使い分けが難しい言葉ですが、あえて違いを言うならば邪魔をする対象の抽象度でしょう。
妨害とは、邪魔をすることを意味します。「営業妨害」とは店舗等の営業を妨害する行為であり、店内で暴れたり、嘘の情報を流して客が来ないようにすることなどを指します。「通信を妨害する」「授業を妨害する」などのように、基本的に妨げる対象は抽象的なものではありません。
阻害とは、妨げることや邪魔することを意味します。「成長を阻害する」「気分を阻害される」のような使い方で、抽象的な物事について用いられることが多い言葉です。また、「阻害薬」や「阻害剤」のように、ある現象を阻止する化学反応にも用いられています。
つまり、妨げる対象がより抽象的なものには妨害よりも阻害という言葉が使われる傾向があります。また、阻害は化学反応にも使用される言葉です。これらが、二つの言葉の明確な違いになります。
妨害と阻害の英語表記の違い
妨害を英語にすると「disturbance」「obstruction」「interference」となり、例えば上記の「営業妨害」を英語にすると「interference with business」となります。
一方、阻害を英語にすると「blocking」「impediment」「hindrance」となり、例えば上記の「子供の成長を阻害する」を英語にすると「hinder the growth of the children」となります。
妨害の意味
妨害とは
妨害とは、邪魔をすることを意味しています。
妨害の漢字表記
妨害は「妨碍」「妨礙」とも書きますが、一般的には常用漢字を用いた「妨害」と表記されています。
妨害の読み方
妨害の読み方は「ぼうがい」です。誤って「ほうがい」「ほうかい」などと読まないようにしましょう。
妨害の使い方
妨害を使った分かりやすい例としては、「株主総会が妨害されるリスクに備える」「英語の試験を妨害した生徒は退出させられました」「歩行者の通行を妨害する危険な行為は違法です」「威力業務妨害罪の判例を集めています」などがあります。
その他にも、「あおり運転は妨害運転罪になりますか」「業者に依頼して妨害電波を調べる」「妨害予防請求権は民法199条で規定されています」「不動産物件の妨害排除請求権について教えてください」などがあります。
妨害の「妨」は訓読みで「さまたげる」と読み、物事の進行や遂行に支障が起こるようにすることを表します。「害」は訓読みで「そこなう」「わざわい」と読み、妨げになるものや邪魔することを表します。妨害とは、邪魔をすることや物事の進行を困難にさせることを意味する言葉です。
妨害を用いた日本語には「妨害排除請求権」があります。妨害排除請求権とは、物権的請求権の一つです。物権の完全な実現が占有以外の方法で妨害されている場合に、妨害の排除を請求できる権利を意味します。
妨害の対義語
妨害の対義語・反対語としては、力を合わせて事にあたることを意味する「協力」などがあります。
妨害の類語
妨害の類語・類義語としては、わざと邪魔をすることを意味する「邪魔立て」、あることをするのに妨げとなるものや状況を意味する「障害」、第三者がわきから口を出して文句をつけることを意味する「横槍」などがあります。
阻害の意味
阻害とは
阻害とは、妨げること、邪魔することを意味しています。
阻害の漢字表記
阻害は「阻礙」「阻碍」とも書きますが、一般的には常用漢字を用いた「阻害」と表記されています。
阻害の読み方
阻害の読み方は「そがい」です。同じ読み方をする熟語に「疎外」ありますが、意味が全く異なるので書き間違いに注意しましょう。
阻害の使い方
阻害を使った分かりやすい例としては、「テレワーク時の阻害要因を取り除く」「青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」「誤った翻訳は英語の理解を阻害することになります」「小学校における英語教育の阻害要因を調査する」などがあります。
その他にも、「酵素阻害剤は代謝活性を制御します」「阻害剤の反応速度を研究する」「光阻害の抑制に関する論文を書いています」「大学病院でSGLT2阻害薬を処方されました」「AI学習を阻害するプログラムがあります」などがあります。
阻害の「阻」は訓読みで「はばむ」「へだたる」と読み、進もうとするのを妨げることや遮って止めることを表します。邪魔をすることや妨げることを表す「害」と結びつき、阻害とは、物事の進行を邪魔することを意味します。
「阻害剤」の意味
阻害を用いた日本語には「阻害剤」があります。阻害剤とは、酸化反応や連鎖反応あるいは生体内反応の反応速度を低下させる物質の総称です。阻害剤による阻害様式には、きっ抗的阻害、非きっ抗的阻害、アロステリック阻害などがあります。
阻害の対義語
阻害の対義語・反対語としては、力を添えて物事の成長や発展を助けることを意味する「助長」などがあります。
阻害の類語
阻害の類語・類義語としては、妨げるものや邪魔を意味する「障壁」、差し障ることや差し支えを意味する「支障」、妨げることや食い止めることを意味する「阻止」、他人の言動を押さえとどめることを意味する「制止」、進行や行動を邪魔してやめさせることを意味する「遮る」などがあります。
妨害の例文
この言葉がよく使われる場面としては、妨げること、わきから邪魔することを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある妨害と邪魔の違いは、邪魔よりも妨害の方が妨げる対象が抽象的であることが挙げられます。また、邪魔は「お邪魔します」の形で、訪問することの意味も持っています。
阻害の例文
この言葉がよく使われる場面としては、隔て遮ること、妨げること、ある現象を阻止することを表現したい時などが挙げられます。
例文3や例文5にある「阻害要因」とは、何らかの物事を進めるのを阻害しているもの、物事をうまく運ぶのに邪魔になっている要因を意味します。
妨害と阻害という言葉は、どちらも「物事の進行を邪魔すること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、妨げる対象が抽象的であったり現象を阻止する化学反応を表現したい時は「阻害」を使うようにしましょう。