【再発】と【転移】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「再発」(読み方:さいはつ)と「転移」(読み方:てんい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「再発」と「転移」という言葉は、どちらも「癌の発生」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




再発と転移の違い

再発と転移の違いを分かりやすく言うと、再発とは治療後に同じ癌が再び発生すること、転移とは以前の癌とは異なる場所に癌が発生することという違いです。

一つ目の再発を使った分かりやすい例としては、「乳がんは手術の二年後に再発しました」「今後は再発防止に努めて参ります」「社員教育を徹底し再発防止に努めます」「早急に再発防止策を講じるべきです」などがあります。

二つ目の転移を使った分かりやすい例としては、「がん細胞の転移は珍しいことではありません」「転移性肝癌の治療方針を話し合う」「転移学習のやり方を説明します」「逆転移は心理療法の障害になります」などがあります。

再発と転移という言葉は、どちらも医療用語で病原体や癌細胞の発生を表しますが、意味や使い方には違いがあります。

再発とは、再び発生することを意味し、医療においては一度治療などによりおさまっていた病気が再び発生することを言います。癌の再発には、再び同じ部位にがんが再発する「局所再発」と、最初にがんができた場所とは違う場所に転移する「遠隔再発」があります。

転移とは、医療用語で、病原体が血流やリンパ流などを介して他の場所に移り、そこに同様な組織変化を起こさせることを意味します。転移は再発の一種であり、その経路によって、リンパ流を介する「リンパ性転移」と、血流を介する「血行性転移」などに分類されます。

つまり、癌の発生において、再発とは治療後に同じ癌が再び発生することを表し、転移とは以前の癌とは異なる場所に癌が発生することを意味します。二つの言葉を比べると、転移よりも再発の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。

再発を英語にすると「recurrence」「recrudescence」「relapse」となり、例えば上記の「二年後に再発した」を英語にすると「had a relapse after two years」となります。

一方、転移を英語にすると「transference」「transposition」「metastasis」となり、例えば上記の「がん細胞の転移」を英語にすると「metastasis of cancer cells」となります。

再発の意味

再発とは、おさまっていた病気がもう一度起こることを意味しています。

その他にも、「同じような事態がまた発生すること」「前に発売したレコードやCDなどを、同じ原盤を用いて再び発売すること」の意味も持っています。

「乳がんの初回再発後の5年生存率を調べる」「病院で再発性多発軟骨炎と診断されました」「再発性アフタ性口内炎になってしまいました」の文中で使われている再発は、「おさまっていた病気がもう一度起こること」の意味で使われています。

一方、「作業ミスの再発防止策を検討する」「再発防止策の書き方を教えてください」の文中で使われている再発は「事態がまた発生すること」の意味で、「再発レコードの音質はどうでしょうか」の文中で使われている再発は「前に発売したCDなどを再び発売すること」の意味で使われています。

再発の読み方は「さいはつ」の他に「さいほつ」とも読みますが、一般的には「さいはつ」と読まれています。

再発とは、上記の例文にあるように三つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。再発の「再」は繰り返して起こったり行ったりするさま、「発」は新しく何かが起こったりできたりすることを表す漢字です。

再発を用いた日本語には「再発防止策」があります。再発防止策とは、ビジネスシーンで使用される言葉であり、起こしてしまった失敗やトラブルが二度と起こらないようにするための手段や方法を意味します。

再発の対義語・反対語としては、病気の症状が一時的あるいは継続的に軽減した状態を意味する「寛解」、初めて発することを意味する「初発」などがあります。

再発の類語・類義語としては、治まっていた病状や症状が再び悪化することを意味する「再燃」、一度よくなりかけていた病気や事柄などが再びもとの悪い状態になるを意味する「ぶり返す」、一旦結着のついた事がらを再び持ち出すことを意味する「蒸し返す」などがあります。

転移の意味

転移とは、場所が他にうつること、場所をうつすことを意味しています。

その他にも、「病原体や腫瘍細胞が、原発巣から他の場所に移り同様な組織変化を起こさせること」「前に学習したことが他の学習に影響を与えること」「精神分析で、患者が幼児期に親などに抱いていた感情を治療者に向けること」の意味も持っています。

「転移したら山の中だったのです」「転移先は薬師がいない異世界でした」の文中で使われている転移は「場所が他にうつること」の意味で、「祖父は転移性脳腫瘍を患っています」の文中で使われている転移は「病原体や腫瘍細胞が他の場所に移ること」の意味で使われています。

一方、「AIの転移学習にはデメリットもあります」の文中で使われている転移は「前の学習が他の学習に影響を与えること」の意味で、「精神分析療法の最中に感情転移を起こした」の文中で使われている転移は「患者が幼児期に抱いていた感情を治療者に向けること」の意味で使われています。

転移とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、日常会話から医療や心理学の世界でも用いられている言葉です。転移の「転」と「移」はどちらも訓読みで「うつる」と読み、場所や配置などが変わること、病気や物の勢いなどが他に及ぶことを表します。

転移を用いた日本語には「転移学習」があります。転移学習とは、コンピューターによる機械学習において、ある学習済みのモデルを別の分野に適用することを意味します。はじめから学習し直すよりも効率よく学習することができます。

転移の対義語・反対語としては、一定の位置に止まって動かないことを意味する「固定」、病気やけがなどが完全に治ることを意味する「完治」などがあります。

転移の類語・類義語としては、位置や住所などを変えることを意味する「移転」、ある状態から他の状態へ移っていくことを意味する「移行」、物体の位置が変化することを意味する「変位」などがあります。

再発の例文

1.がん再発の影に怯えながらも、英語教師として生徒の前では明るく振る舞っています。
2.根治的な治療として切除手術をしても、再発しやすい癌というものが存在します。
3.社会生活を困難にするほどのうつ病は、再発を繰り返すことで慢性化すると言われています。
4.もし病気が再発して再び入院となったら、また保険金を受け取ることはできるのでしょうか。
5.ヒューマンエラーの再発防止策には、マニュアルとチェックリストの作成が有効です。

この言葉がよく使われる場面としては、再び発生すること、一旦おさまっていた病気、気持ち、事件などが再び起こることを表現したい時などが挙げられます。

例文1から例文4の再発は、一旦おさまっていた病気が再び起こることを表しています。例文5にある再発は、事件が再び起こることを意味しています。

転移の例文

1.英語を習いに通っている個別指導塾は、隣りの街に転移することになりました。
2.癌の転移のスピードは、癌の種類だけでなく個人の体質や年齢などにも影響を受けるようです。
3.医学は日々進歩しているのですから、転移した癌は治らないと諦めてはいけません。
4.人が生まれながらに備えている自然治癒力によって、転移した癌が消えることもありますか。
5.心理学の観点から、陽性転移になりやすい人の特徴を解説いたします。

この言葉がよく使われる場面としては、位置などが他に移ること、病原体や腫瘍細胞などが原発巣から他の場所へ移行すること、物質がある状態から他の状熊へ移ること、心理学の用語を表現したい時などが挙げられます。

例文5にある「陽性転移」とは、精神疾患の治療において、治療者が患者に対して信頼や尊敬あるいは愛情といったプラスの感情を向けることを言います。

再発と転移という言葉は、どちらも「癌の発生」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、治療後に同じ癌が再び発生することを表現したい時は「再発」を、前に癌が発生した場所とは異なる場所に癌が発生することを表現したい時は「転移」を使うようにしましょう。

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