似た意味を持つ「解除」(読み方:かいじょ)と「解禁」(読み方:かいきん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「解除」と「解禁」という言葉は、どちらも「制限していたことを解くこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
解除と解禁の違い
解除と解禁の意味の違い
解除と解禁の違いを分かりやすく言うと、解除とは制限を解いて平常の状態に戻すこと、解禁とは禁止を解いて自由にさせることという違いです。
解除と解禁の使い方の違い
一つ目の解除を使った分かりやすい例としては、「iPhoneの機能制限を解除する 」「Zoom参加者にミュート解除を要請する」「民法により解除権が発生します」「法定解除条件説では胎児を含めた共同相続登記ができます」などがあります。
二つ目の解禁を使った分かりやすい例としては、「あゆ漁の解禁を前に放流が行われました」「ボジョレーヌーボーの解禁日が待ち遠しい」「今年の就職活動が解禁になりました」「プレスリリースはこの情報解禁日に配信します」などがあります。
解除と解禁の使い分け方
解除と解禁という言葉は、どちらも制限や禁止などの処置を解くことを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
解除とは、特別に定めた制限や禁止などの処置を取り止めて、平常の状態に戻すことを意味します。「ミュート解除」とは、ミュート機能をオンにしてマイクの音を消していた状態から、ミュート機能をオフにして音声を出す状態に戻すことです。
解禁とは、禁止していた状態を解いて自由にさせることを意味します。「ボジョレー・ヌーヴォーの解禁日」とは、フランスのボジョレー地区で造られる新酒ワインの販売が解禁される11月の第3木曜日の午前0時を指します。それまではフランスのワイン法により、販売することができません。
つまり、解除とは制限を解いて平常に戻すことを表し、解禁とは禁止を解いて自由にすることを意味する言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
解除と解禁の英語表記の違い
解除も解禁も英語にすると「lifting」「removal」となり、例えば上記の「制限を解除する」を英語にすると「lift restrictions」となります。
解除の意味
解除とは
解除とは、今まであった制限や禁止あるいは特別の状態などをなくして、もとの状態に戻すことを意味しています。
その他にも、「法律で、契約当事者の一方の意思表示によって、成立している契約を初めからなかったものとすること」の意味も持っています。
解除の使い方
「中央自動車道の通行止めが解除されました」「Twitterのセンシティブを解除できない」「SIMロックの解除方法を教えてもらいました」などの文中で使われている解除は、「今まであった制限や禁止などをなくして元の状態に戻すこと」の意味で使われています。
一方、「解除条件付きの売買契約を結びました」「履行不能による解除権を行使します」「解除前の第三者を保護する法律があります」などの文中で使われている解除は、「法律で、成立している契約を初めからなかったものとすること」の意味で使われています。
解除とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。解除の「解」は訓読みで「とく」と読み、役目や束縛から解き放すこと、「除」は訓読みで「のぞく」と読み、取りのぞくことを表す漢字です。
表現方法は「解除権」
解除を用いた日本語には「解除権」があります。解除権とは、契約当事者の一方が契約を解除できる権利を意味する法律用語です。法律の規定によって生ずる法定解除権と、契約当事者の特約によって生ずる約定解除権とがあります。
解除の対義語
解除の対義語・反対語としては、条約や契約などを結ぶことを意味する「締結」などがあります。
解除の類語
解除の類語・類義語としては、今までの状態や関係などが消えてなくなることを意味する「解消」、契約を取り消すことを意味する「解約」、売買などの契約を取り消すことや約束などを取り消すことを意味する「キャンセル」などがあります。
解禁の意味
解禁とは
解禁とは、法律などで禁止していたことを解くことを意味しています。
解禁の使い方
解禁を使った分かりやすい例としては、「渓流釣り解禁日は魚が簡単に釣れるはずです」「鮎釣りの解禁情報を集めています」「サブスク解禁についての最新情報をチェックする」「英語の先生は控えていたお酒を解禁したそうです」などがあります。
その他にも、「今日は待ちに待った狩猟解禁日です」「大学三年生は就活解禁日に何をすべきですか」「経団連が定めた情報解禁日は形式的なものになっている」「越前かにの解禁は毎年11月6日と決まっています」などがあります。
解禁の「禁」は訓読みで「いさめる」と読み、ある行為に枠をはめて差し止めることを表します。解き放すことを表す「解」と結びつき、解禁とは、禁止していたことや命令を解いて自由にすることを意味します。
表現方法は「就活解禁日」
上記の例文にある「就活解禁日」とは、企業の新卒採用における広報活動が解禁される日を意味します。経団連では、新卒採用に関する広報活動開始を卒業年度に入る直前の3月1日以降、採用選考活動を6月1日以降、正式な内定日を10月1日以降と定めています。
「解禁政策」は誤用
解禁を用いた誤った表現には「解禁政策」があります。正しくは「海禁政策」であり、中国の明時代や清時代に実施された、民間による対外交易や海外渡航を禁止する政策のことです。
解禁の対義語
解禁の対義語・反対語としては、戒めて禁止することを意味する「戒禁」、厳重に禁止することを意味する「厳禁」などがあります。
解禁の類語
解禁の類語・類義語としては、行われてきた制度や決まりなどをとりやめることを意味する「撤廃」、やめて行わないことを意味する「廃止」、決定したことや発表したことなどをあとで打ち消すを意味する「取り消す」などがあります。
解除の例文
この言葉がよく使われる場面としては、いったん出された特定の条件や禁止などの処置をとりやめて自由な状態に戻すこと、契約当事者の一方の意思表示によって契約の効力を消滅させ初めから存在しなかったと同じ状態にすることを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある解除は、特定の条件や禁止などの処置をとりやめて自由な状態に戻すことの意味で用いられています。例文4や例文5の解除は、契約の効力を消滅させ初めから存在しなかったと同じ状態にすることの意味で使われています。
解禁の例文
この言葉がよく使われる場面としては、禁止を解くこと、禁止の命令を解き自由にすることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「金解禁」とは、金貨幣または金地金の輸出禁止を解除することを意味します。日本では、昭和5年に浜口内閣が金の自由輸出禁止を解除し、金本位制度に復帰させた政策を言います。
解除と解禁という言葉は、どちらも「制限していたことを解くこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、平常に戻すことを表現したい時は「解除」を、自由にさせることを表現したい時は「解禁」を使うようにしましょう。