似た意味を持つ「母集団」(読み方:ぼしゅうだん)と「標本」(読み方:ひょうほん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「母集団」と「標本」という言葉は、どちらも「統計学の用語」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
母集団と標本の違い
母集団と標本の意味の違い
母集団と標本の違いを分かりやすく言うと、母集団とは統計対象となる集団の全体、標本とは統計対象となる集団の部分という違いです。
母集団と標本の使い方の違い
一つ目の母集団を使った分かりやすい例としては、「母集団からサンプルを選び出す」「テストの偏差値は母集団によって変化します」「採用を成功させるための母集団形成について解説します」「観測データの標本から母集団の性質を明らかにする」などがあります。
二つ目の標本を使った分かりやすい例としては、「夏休みに昆虫の標本を作ることにした」「標本化定理について教えてください」「標本平均と母平均の関係を説明します」「標本偏差を計算して求める」「標本調査の一例として選挙の世論調査が挙げられます」などがあります。
母集団と標本の使い分け方
母集団と標本という言葉は、どちらも統計学で用いられていますが、意味や使い方には違いがあります。
母集団とは、統計学において調査の対象と考える集団の全体を指す言葉です。一方の標本とは、集団全体のある標識に関する特性について推論を行うために、その集団から選び出された一部の構成要素を指し、サンプルとも呼ばれています。
例えば、あるお店で来店者へのアンケート調査を行う場合、来店者全体が「母集団」となり、そのうち調査対象になった人が「標本」となります。母集団から一部を取り出した標本を使って、母集団の性質を推測することが可能であり、これを「標本調査」と言います。
つまり、母集団とは統計対象となる集団の全体のことであり、標本とは母集団から選び出された一部分を意味します。そのため、二つの言葉は対象の全体か部分かという点で、相反する意味を持つ言葉と言えるでしょう。
母集団と標本の英語表記の違い
母集団を英語にすると「population」「universe」となり、例えば上記の「母集団から標本を選び出す」を英語にすると「pick out a sample from a population」となります。
一方、標本を英語にすると「sample」「specimen」「preparation」となり、例えば上記の「昆虫の標本」を英語にすると「specimens of insects」となります。
母集団の意味
母集団とは
母集団とは、統計で、調査や観察の対象とする集団全体、標本を抽出するときのもとの集団を意味しています。
母集団の読み方
母集団の読み方は「ぼしゅうだん」です。誤って「ははしゅうだん」「もしゅうだん」などと読まないようにしましょう。
母集団の使い方
母集団を使った分かりやすい例としては、「母集団と標本の関係を正しく図で表す」「母集団から抽出した部分集合が標本です」「母数は母集団の性質を表す統計量です」「標本の情報を用いて母集団の情報を推測する」などがあります。
その他にも、「母集団形成を増やすために求人広告を出しました」「効果的な母集団形成には採用のための戦略が重要です」「母集団の標準偏差をエクセルで求める」「標本平均から母集団の平均を推定する」などがあります。
母集団の「母」は、物の出てくるところや元になるものを表す漢字です。ものが集まってひとかたまりになることを表す「集団」と結び付き、母集団とは、統計調査の対象となる事物の集団、標本を抽出するもとの全体の集団を意味します。
表現方法は「母集団形成」
母集団を用いた日本語には「母集団形成」があります。母集団形成とは、企業の採用活動において、自社に応募してくれる集団を意識的に構築していくことを意味します。多くの候補者から選べることで適切な人材を採用できるという考えから、人手不足を背景に母集団形成が重要視されています。
母集団の対義語
母集団の対義語・反対語としては、母集団から抽出された一部のデータを意味する「標本」などがあります。
母集団の類語
母集団の類語・類義語としては、統計学で母集団の特性を示す定数を意味する「母数」、分数または分数式で割るほうの数や式を意味する「分母」、あるひとまとまりの物事のすべての部分を意味する「全体」などがあります。
標本の意味
標本とは
標本とは、見本、典型、代表的な例を意味しています。
その他にも、「生物・鉱物などを研究資料とするために、適当な処理をして保存できるようにしたもの」「標本調査で、全体の中から調査対象として取り出した部分、見本」の意味も持っています。
標本の読み方
標本の読み方は「ひょうほん」です。誤って「ひょうぼん」「ひょうもと」などと読まないようにしましょう。
標本の使い方
「標本木は全国各地にあります」「北海道の標本木であるエゾヤマザクラが開花した」「彼女は教育ママの標本のような人です」などの文中で使われている標本は、「見本、典型、代表的な例」の意味で使われています。
一方、「博物館に貴重な鉱物標本が寄贈されました」の文中で使われている標本は「研究資料とするために処理をして保存したもの」の意味で、「標本調査のやり方を習いました」の文中で使われている標本は「標本調査で、全体から調査対象として取り出した部分」の意味で使われています。
標本とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。標本の「標」は訓読みで「しるし」と読み、見てすぐわかるようにつけたものを表す漢字です。
表現方法は「標本木」
標本を用いた日本語には、「標本木」(読み方:ひょうほんぼく)があります。標本木とは、気象庁の生物季節観測で、開花日などを観測するために定められた草木を意味します。特に、桜の開花状況を観測するための指標として定めている桜の木を指すことが多い言葉です。
標本の対義語
標本の対義語・反対語としては、調査対象となる全ての個体やデータの集合を意味する「母集団」などがあります。
標本の類語
標本の類語・類義語としては、標準となる型や様式を意味する「手本」、実物を小さくかたどって作ったものを意味する「ひな型」、見ならうべき手本を意味する「模範」、動物の皮をはぎ中身を取り去って作った乾燥標本を意味する「剥製」などがあります。
母集団の例文
この言葉がよく使われる場面としては、調査の対象と考える集団の全体を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「母集団分布」とは、母集団の特性を表現する確率分布を意味し、これにより母集団の特性を数値で把握し、推測統計などの分析に役立てることができます。
標本の例文
この言葉がよく使われる場面としては、見本となるもの、ひな型、代表的なもの、研究や教育に使うために長期間保存できるように処理した生物の体やその一部、標本調査で母集団から抽出された資料を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「標本調査」とは、対象となるもの一部を調査して、全体を推定する方法を意味します。対象となるものを全て調べる全数調査と対をなす言葉です。
母集団と標本という言葉は、どちらも統計学の用語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、統計対象となる全ての集合を表現したい時は「母集団」を、母集団から抽出した部分集合を表現したい時は「標本」を使うようにしましょう。