似た意味を持つ「無礼」(読み方:ぶれい)と「失礼」(読み方:しつれい)と「非礼」(読み方:ひれい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「無礼」と「失礼」と「非礼」という言葉は、礼を欠くことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
無礼と失礼と非礼の違い
無礼と失礼と非礼の意味の違い
無礼と失礼と非礼の違いを分かりやすく言うと、無礼は目上の人に対する礼儀が欠けている状態を表し、失礼は簡単な謝罪を、非礼は取り返しのつかない言動をしたことに対する謝罪を表す時に使うという違いです。
この三つの言葉のうち、非礼は一番礼が欠けている状態を表し、無礼は二番目に礼が欠けている状態を、失礼は三番目に礼が欠けている状態を表します。
「失礼」の失は失うことを意味する
「失礼」の失は、失うことを意味する漢字であるため、礼儀が失われており不十分である様子を表します。男女や身分など関係なく使うことができ、やや礼を欠いている時に使われます。
そのため、「失礼ですがお名前をよろしいでしょうか」のように簡単な謝罪には、無礼や非礼を使うことはできません。
また「失礼いたしました」という謝罪は、「ご無礼をいたしました」と言い換えることができますが、より深い謝罪の時に使います。非礼は使うことが出来ません。
「無礼」の無は存在しないことを意味する
「無礼」の無は、存在しないことを意味する漢字であるため、礼儀がない状態を表します。目上の人に対する謝罪などに使われます。
そのため、地位の差や礼儀作法を無視して行なう宴会を意味する「無礼講」や、服装を略式にする無礼が許されることを意味する「六月無礼」の無礼を、失礼や非礼に置き換えることはできません。
また、「無礼者」や「無礼を働く」の無礼を失礼や非礼に置き換えることはできず、「ご無礼」のように失礼と非礼に接頭語をつけて「ご失礼」「ご非礼」とすることはできません。
「非礼」の非は過ちや良くないことを意味する
「非礼」の非は、過ちや良くないとする意味を持ち、否定を表す漢字です。そのため、他者が思う礼と自分の礼がずれている状態や、礼儀に反することをするという意味を表します。取り返しのつかない言動をしてしまったことに対する謝罪に使われます。
そのため「身分をわきまえない非礼を詫びる」の非礼は、身分をわきえないような言動をしてしまったことへの謝罪であるため、失礼や無礼に置き換えることはできません。
無礼の意味
無礼とは
無礼とは、礼儀にはずれることやその様子を意味しています。
表現方法は「無礼な振る舞い」「無礼な態度」「無礼者」
「無礼な振る舞い」「無礼な態度」「無礼者」「無礼を承知で」などが、無礼を使った一般的な表現方法です。
無礼の読み方
無礼は本来「ぶれい」と読みますが「なめ」と読むこともでき、「無礼し」(読み方:なめし)という言葉もあります。無礼であることや無作法であることを意味する言葉ですが、他を甘く見たり見くびる際に使う「舐める」は「無礼し」が動詞化した言葉です。
無礼を使った言葉として、「礼も過ぎれば無礼になる」「傲慢無礼」「無礼講」があります。
「礼も過ぎれば無礼になる」の意味
一つ目の「礼も過ぎれば無礼になる」とは、礼儀を尽くすことも度が過ぎればかえって失礼にあたるということを意味することわざです。礼儀が正しいだけではなくご機嫌取りのようになってしまうと、相手を不快にさせてしまうからです。
このことわざの類語・類義語として、良いものであっても度が過ぎればかえって害になることを意味する「薬も過ぎれば毒となる」、あまり深く考えすぎるとつまらないことを考えて失敗することを意味する「分別すぐれば愚に返る」などがあります。
「傲慢無礼」の意味
二つ目の「傲慢無礼」とは、威張りかえって人を見下し、へりくだる気持ちがないことを意味する四字熟語で、「傲岸不遜」や「傲岸無礼」とも書きます。
「無礼講」の意味
三つ目の「無礼講」とは、身分や地位の差、礼儀作法を無視して行う宴会を意味する言葉です。反対に、参加者が礼儀正しさを崩さない集会のことを「慇懃講」といいます。
無礼の対義語
無礼の対義語・反対語としては、真心がこもっていて礼儀正しいことやその様子を意味する「慇懃」があります。
無礼の類語
無礼の類語・類義語としては、差し出がましいことを意味する「推参」、出過ぎたことをすることを意味する「僭越」、礼儀をわきまえない様子を意味する「尾籠」(読み方:びろう)、道理にはずれている様子を意味する「不埒」などがあります。
無礼の無の字を使った別の言葉としては、利益のないことや無駄なことを意味する「無益」、思いやりのないことを意味する「無情」、何もなく虚しいことを意味する「虚無」、論じる必要のないほどはっきりしている様子を意味する「無論」などがあります。
失礼の意味
失礼とは
失礼とは、他人に接する際の心得をわきまえていないことや礼儀に欠けることやその様子を意味しています。
表現方法は「失礼極まりない」「失礼にあたる」「失礼します」
「失礼極まりない」「失礼にあたる」「失礼します」「失礼しました」などが、失礼を使った一般的な表現方法です。
「失礼千万」の意味
失礼を使った言葉として「失礼千万」があります。
「失礼千万」とは、この上なく礼儀を欠いた言動や態度をとることで、とても失礼な様子で礼儀のなさが目に余るという意味を持つ四字熟語です。「失礼千犯」や「失礼千番」と表記するのは誤りです。
また、はなはだしく無礼である様子を意味する「失敬千万」や、この上なく失礼なことを意味する「無礼千万」はこの四字熟語の類語・類義語にあたります。
失礼の対義語
失礼の対義語・反対語としては、尊敬する気持ちを意味する「敬意」があります。
失礼の類語
失礼の類語・類義語としては、人に対して礼を失くした振る舞いをすることを意味する「失敬」、礼儀作法にはずれていることを意味する「無作法」、礼を欠くことを意味する「不躾」、おごり高ぶって人を見下すことを意味する「傲慢」などがあります。
失礼の失の字を使った別の言葉としては、期待はずれでがっかりすることを意味する「失望」、言うべきではないことをうっかり言ってしまうことを意味する「失言」、方法などを違えていい結果が得られないことを意味する「失敗」などがあります。
非礼の意味
非礼とは
非礼とは、礼儀にそむくことやその様子を意味しています。
表現方法は「非礼を詫びる」「非礼極まりない」
「非礼を詫びる」「非礼極まりない」などが、非礼を使った一般的な表現方法です。
非礼を使った言葉として、「神は非礼を受けず」「非礼之礼」があります。
「神は非礼を受けず」の意味
一つ目の「神は非礼を受けず」とは、礼儀にかなった正しいやり方でなければ神は受け入れないことを意味することわざです。ここから転じて、道に外れた願い事や邪心は、神にけして聞き入れてもらえないことも意味するようになりました。
「非礼之礼」の意味
二つ目の「非礼之礼」(読み方:ひれいのれい)とは、礼儀にかなわぬ礼儀を意味する四字熟語です。一見したところでは礼を尽くしているようですが、実際は心がこもっておらず形だけになっている礼を指します。
非礼の類語
非礼の類語・類義語としては、無礼な振る舞いを意味する「亡状」(読み方:ぼうじょう)、無法な振る舞いをすることを意味する「伝法」(読み方:でんぽう)、いい加減な様子やぶしつけで失礼なことを意味する「聊爾」(読み方:りょうじ)などがあります。
非礼の非の字を使った別の言葉としては、人間らしい感情をもたないことや感情に左右されないことを意味する「非情」、運がないことを意味する「非運」、正しいことと正しくないことを意味する「是非」、欠点などを責めることを意味する「非難」などがあります。
無礼の例文
この言葉がよく使われる場面としては、礼儀がなっていない様子を意味する時などが挙げられます。
例文2の「無礼千万」とは、この上なく失礼なことを意味する四字熟語で、「失礼千万」や「失敬千万」の類語・類義語にあたります。この例文はビジネスにおいて使われる謝罪のフレーズです。
失礼の例文
この言葉がよく使われる場面としては、礼儀を欠いている様子を意味する時などが挙げられます。
例文1の「失礼の段」の段は、場合や件、ものなどを意味する言葉です。そのため「失礼の段」とは、「失礼なことをしてしまった件」を意味します。
また例文1の「ご容赦」とは許しを請うことですが、「ご容赦ください」ではなく「ご海容ください」とすることもできます。「海容」とは、海のように広い寛容な心で相手の過ちを許すことを意味する言葉です。どちらの場合でも、主に手紙やメールで使われます。
例文2の「失礼かと存じますが」は「失礼かと思いますが」という意味の敬語表現です。例文2は、ビジネス上での電話やメールで重要な件に関して取り急ぎ連絡する時などに使われます。
この「失礼かと存じますが」という表現の他にも、「失礼ながら」「お言葉ですが」なども、目上の人に対して何か自分の意見を主張する際に使われます。
例文3は電話などで使われるフレーズです。この例文の「失礼ですが」には、相手の名前を知らない自分の落ち度を示すことで、相手の立場を高める意味があります。
「失礼ですが」を「すみませんが」や「恐れ入りますが」に置き換えることもできますが、この二つの言葉は感謝の意味も持つため、使う際には気を付けましょう。
非礼の例文
この言葉がよく使われる場面としては、礼儀に反している様子を意味する時などが挙げられます。
例文2の「非礼この上ないこと」とは、取り返しのつかない不始末をしてしまったことを意味する言葉です。「謹んでお詫び申し上げます」と共に謝罪で多く使われます。
無礼と失礼と非礼どれを使うか迷った場合は、目上の人に対する礼儀が欠けている場合には「無礼」を、簡単な謝罪に使う場合は「失礼」を、取り返しのつかない言動をしたことに対する謝罪を表す場合は「非礼」を使うと覚えておけば間違いありません。