似た意味を持つ「記入」(読み方:きにゅう)と「記載」(読み方:きさい)と「記述」(読み方:きじゅつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「記入」と「記載」と「記述」という言葉は、書くという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
記入と記載と記述の違い
記入と記載と記述の意味の違い
記入と記載と記述の違いを分かりやすく言うと、記入は所定欄に文字や数字を書くことを表現する時に使い、記載は書類や書物などに書いて載せることを表現する時に使い、記述は文章にして書き記すことを表現する時に使うという違いです。
記入と記載と記述の使い分け方
記入の入には、いれるという意味があります。そのため、文字や数字を定められた枠の中に収めて書くという意味になります。また、三つの言葉の中で、唯一マークシートに対しても使うことが出来る言葉です。
記載の載には、書物などに記すという意味があります。そのため、書くことよりも書いたものを書物などにまとめ、大勢の人の目に触れさせることに重きを置いている言葉になります。
記述の述には、客観的な考えや意見などを文章で表すという意味があります。そのため、文字や数字だけではなく文章として書き残すという意味が強い言葉になります。これらが記入、記載、記述の明確な違いです。
記入の意味
記入とは
記入とは、所定の用紙などに書き入れることを意味しています。
表現方法は「記入する」「ご記入ください」「ご記入いただき」
「記入する」「ご記入ください」「ご記入いただき」「記入した」などが、記入を使った一般的な言い回しです。
記入の使い方
記入を使った分かりやすい例としては、「名前を記入するときにいつも個人情報が漏れないか心配になる」「ご記入いただきありがとうございます」「ご記入いただきますようお願い申し上げます」「記入したのでメールにPDFファイルとして添付しお送りしますね」などがあります。
「記入漏れ」の意味
記入を使った表現として「記入漏れ」があります。書類など決められた枠の中に書く必要があるものが書かれていないこと、抜け落ちていることを意味する言葉です。
「記入洩れ」は常用外漢字
「記入洩れ」も同じ意味で使われますが、「洩」という漢字は常用漢字ではないため公文書などで使われることはありません。
記入の類語
記入の類語・類義語としては、物事を書き記しておくことや書いたものを意味する「記録」、書き記すことやその書いたものを意味する「筆録」、くわしく記録することやその記録を意味する「詳録」などがあります。
記入の入の字を使った別の言葉としては、手に入ることや手に入れることを意味する「入手」、中に差し入れることを意味する「挿入」、物を投げ入れることを意味する「投入」、品物や金銭を納めることを意味する「納入」などがあります。
記載の意味
記載とは
記載とは、書類や書物などに書いて記すことを意味しています。
表現方法は「記載されている」「記載ください」「記載の通り」
「記載されている」「記載ください」「記載の通り」「記載がある」「記載がない」などが、記載を使った一般的な言い回しです。
記載の使い方
記載を使った分かりやすい例としては、「記載されている内容をご確認のうえご退会をお願いいたします」「別紙記載の通り終わりましたらご自身で返却をお願いいたします」「複数の異なる内容の記載があるので非常に分かりにくい」「この商品の取り扱い方法の記載がどこにもない」などがあります。
記載を使った言葉として「記載論文」「記載文学」があります。
「記載論文」の意味
一つ目の「記載論文」とは、ある生物の分類を定義するときに、生物の形質を言葉、図や写真などで記述した論文を意味する言葉です。新しい分類群であった場合は、論文を発表すると新分類群として認められるようになります。
「記載文学」の意味
二つ目の「記載文学」とは、文字で書き記された文学を意味する言葉です。文字に書き記されるのではなく、人々の口から口へと語り継がれてきた文学を口承文学(読み方:こうしょうぶんがく)と言い、神話や伝説、ことわざにも見られる文学です。
この口承文学を材料に書かれた記載文学として『古事記』『風土記』『宇治拾遺物語』などが挙げられます。
記載の類語
記載の類語・類義語としては、取り上げて記録することを意味する「採録」、文章にして新聞などに載せることを意味する「登載」、広く世間に発表することを意味する「公表」、書きとどめておくことを意味する「留書」(読み方:とめがき)などがあります。
記載の載の字を使った別の言葉としては、新聞や雑誌などに文章や写真などを載せることを意味する「掲載」、新聞や雑誌などに掲載されていることを意味する「所載」、小説などを新聞や雑誌などに続き物として掲載することを意味する「連載」などがあります。
記述の意味
記述とは
記述とは、文章にして書きしるすことや、書きしるしたものを意味しています。
表現方法は「記述する」「記述されている」「記述ミス」
「記述する」「記述されている」「記述ミス」などが、記述を使った一般的な言い回しです。
記述の使い方
記述を使った分かりやすい例としては、「こちらの詳細はこのページの後半に記述されています」「アルファベットの小文字と大文字をしっかり確認して記述しないと間違えてしまう」「会社のホームページを作成した際のソースコードの記述ミスがあまりにも多すぎる」などがあります。
記述を使った言葉として、「記述統計」「記述言語学」があります。
「記述統計」の意味
一つ目の「記述統計」とは、集めたデータの統計量を計算して分布を明らかにすることで、データの示す傾向や性質を知ることを意味する言葉です。パーセントの形で表に表すなどすることで、集めた結果の共通点や傾向を見出すことができます。
「記述言語学」の意味
二つ目の「記述言語学」とは、ある言語の一時期における状態を観察、分析して、ありのままを記述しようとする学問を意味する言葉です。
例えば、少数民族の間でのみ使われている言語が多くあります。少数民族の人たちは働くために、英語のような大多数が使っている言語を身に付けていますが、少数民族言語は話されることがなくなれば消滅してしまいます。
そこで、その民族が身に付けている別の言語を媒介として、その民族の言語を調査して記録として残します。この研究が記述言語学です。
記述の類語
記述の類語・類義語としては、ある事柄がよくわかるように述べることを意味する「説明」、物事のありさまや考えなどを描き出すことを意味する「描出」、景色や事物のありさまを見たままに写し取ることを意味する「写生」などがあります。
記述の述の字を使った別の言葉としては、過去の出来事などを述べることを意味する「述懐」、先人の言説を伝え述べることを意味する「述作」、物事について順を追って述べることを意味する「叙述」、書物を書き表すことを意味する「著述」などがあります。
記入の例文
この言葉がよく使われる場面としては、定められた枠の中に書き込むことを意味する時などが挙げられます。
例文1の「ご記入くださいますよう」という表現はビジネスメールなどで使われ、「ご記入いただきますよう」という表現にも言い換えることができます。
記載の例文
この言葉がよく使われる場面としては、雑誌や新聞などの書物に載せるために書くことを意味する時などが挙げられます。
例文2の「記載漏れ」とは、雑誌や新聞などに掲載されている中で書き記すべきものが抜けていることを意味するです。
例文3は、何かに掲載したものの表記が誤っている場合に、別紙で知らせたり、メールで一報入れる際に使うフレーズです。間違っている箇所が一文全てなどであれば「記述」を置き換えて使うこともできますが、「記入」は置き換えて使うことができません。
記述の例文
この言葉がよく使われる場面としては、客観的な意見や考えを文章にして書くことを意味する時などが挙げられます。
上の例文で使われている「記述」は、どれも客観的であることが前提であるため「記入」や「記載」に置き換えて使うことはできません。
記入と記載と記述どれを使うか迷った場合は、定められた場所に書き入れることを表す場合には「記入」を、書物などに載せるために書くことを表す場合は「記載」を、客観的な文章を書くことを表す場合は「記述」を使うと覚えておけば間違いありません。