似た意味を持つ「甘んじる」(読み方:あまんじる)と「甘んずる」(読み方:あまんずる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「甘んじる」と「甘んずる」という言葉は、どちらも不十分である状態を受け入れるという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
甘んじると甘んずるの違い
甘んじると甘んずるの意味の違い
甘んじると甘んずるの違いを分かりやすく言うと、辞書に載っている現代風の読み方か、古い読み方かの違いです。「甘んじる」と「甘んずる」は、どちらも同じ意味を持つ言葉で、現代では「甘んじる」の方を一般的な読み方として使用しています。
「甘んじる」「甘んずる」とは、与えられた環境や状態にそれ以上を望まず、おとなしく受け入れるという意味を持ちます。例え与えられたものが不十分であったり、不本意であったとしても、そのまま受け入れるということです。
甘んじると甘んずるの2つが存在する理由
それではなぜ、甘ん「じる」と甘ん「ずる」という二種類の語尾が存在するのでしょうか。これは、日本語の口語文法と文語文法の決まりによる違いがあるからです。口語文法とは、しゃべり言葉のことで、文語文法とは、文章で書く際の言葉という意味です。
これらの日本語文法には「活用法」という考え方があります。活用法とは、文章の流れによって単語の語尾を違和感のないように変えることを意味します。
まさしく「甘んじる」「甘んずる」のように、最初の言葉は同じであっても語尾が違う言葉が存在するのは、活用法によって文脈に合うかたちで語尾が変えられているからです。
甘んじる、甘んずるという言葉は「サ行変格活用」という活用法によって、語尾を変えています。サ行変格活用では、文章の流れによって語尾をサ行の言葉である「さしすせそ」を元にして変えていきます。
「甘んじる」「甘んずる」という言葉の場合、「甘ん」という先頭の言葉はそのままに、語尾を「未然形:じ」「連用形:じ」「終止形:じる・ずる」「連体形:じる・ずる」「仮定形:じれ・ずれ」「命令形:じろ・じよ・ぜよ」という風に変化させます。
語尾の変化の形である未然形、連用形、などの名称は、その言葉がどのような文脈で使われているかの形のことを指しています。例えば「未然形」というのは「まだそうなってはいない」という意味を持ち、否定形と一緒に使われます。
つまり、甘んじるの未然形の表現は「甘んじない」となります。変化しない先頭の「甘ん」に未然形の「じ」をつけて、最後に否定形の「ない」を付けた形です。
このように、日本語には、様々な文法上の決まりがあります。「甘んじる」「甘んずる」というのは、両方ともこの文法で言うところの「終止形」です。
終止形というのは、言い切りの形という意味があります。文章ではなく、ひとつの単語として使う際には終止形を使います。
甘んじると甘んずるの使い分け方
「甘ん」の終止形には「じる」と「ずる」の二種類があります。これが「甘んじる」と「甘んずる」の違いです。二種類の語尾がある場合、どちらを使っても間違いではありませんが、どちらか一方が、一般的に使われているものであることがほとんどです。
「甘ん」の場合、辞書に記載されているのは「甘んじる」という言葉です。こちらが、現代では一般的に使用されている言葉であり、「甘んずる」というのは古い言い方になります。
しかし、意味に違いはありませんし、どちらも文法的には使えるものですので、個々人の好みや文章の前後の文脈などを考えて、自由に使い分けが出来るものであると言えます。
甘んじるの意味
甘んじるとは
甘んじるとは、与えられたものを、おとなしくそのまま受け入れることを意味しています。甘んじるというのは、今ある現状をそのまま受け入れて、抵抗しないという意味を持つ言葉です。
普通であったら不満を持つような場面であっても、それを仕方がないことであると受け入れるような意味を持っていて、諦めを含む言葉でもあります。
または、なんらかの理由で、反省の意志を含んで「自業自得だから、受け入れます」という意味でも使われます。
表現方法は「現状に甘んじることなく」「慣れに甘んじる」「処分を甘んじて受ける」
「甘んじることなく」「甘んじて受け入れる」「慣れに甘んじる」「処分を甘んじて受ける」などが、甘んじるを使った一般的な表現方法です。
甘んじるの使い方
甘んじるを使った分かりやすい例としては、「現状に甘んじることなく日々精進していきたい」「これからもユーザーの皆様のお言葉に甘んじることなく、品質向上に努めて参ります」「裁判所から出た処分を甘んじて受ける」などがあります。
「甘んじて受け入れる」の意味
例えば「私の失敗で皆様にご迷惑をかけてしまったので、どんな処分であっても甘んじて受け入れます」というような形で使用されます。これは、自分の失敗のせいで迷惑をかけたので、どんな処分であっても不満を言わずに受け入れます、という意味です。
甘んじるの類語
甘んじるの類語・類義語としては、物事の真意をあまり理解せずに受け入れることを意味する「鵜呑み」、やむをえないものとして受け入れることを意味する「甘受」(読み方:かんじゅ)などがあります。
甘んじるの「甘」という字が含まれる単語としては、人の気に入るような口先だけのうまい言葉を意味する「甘言」、やむをえないものとして受け入れることを意味する「甘受」などがあります。
甘んずるの意味
甘んずるとは
甘んずるとは、甘んじるという言葉の少し古い言い方を意味しています。甘んずるというのは「甘んず」という言葉のサ行変格活用の終止形です。
甘んずるは辞書に載っていない
意味としては、甘んじると全く同じものであり、文章の前後の文脈などによって使い分けることが出来るものです。辞書には「甘んじる」は載っていても、「甘んずる」という言葉は載っていないことが多く、甘んずるは現代語よりも少し古い表現です。
しかし、意味は同じであるので、「甘んじる」「甘んずる」のどちらを使っても間違いではありません。古風な雰囲気を出したい時などには、あえて「甘んずる」という言葉を使うのも良いでしょう。
他にも、例えば「甘んず」という言葉の命令形を考えてみると、現代風の言い方であれば「甘んじろ」となりますが、古風な言い回しになると「甘んじよ」または「甘んぜよ」となります。
この「甘んじよ」「甘んぜよ」と同じ雰囲気を持つのが「甘んずる」であると考えると、わかりやすいでしょう。
表現方法は「甘んずることなく」「清貧に甘んずる」「今に甘んずることなかれ」
「甘んずることなく」「清貧に甘んずる」「今に甘んずることなかれ」「せんりに甘んずる」などが、甘んずるを使った一般的な表現方法です。
甘んずるの使い方
甘んずるを使った分かりやすい例としては、「現状に甘んずることなくこれからも挑戦していきたい」「普通に生きていれば清貧に甘んずる面も出てくるはずである」などがあります。
甘んじるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、与えられている環境や状況について、それ以上を望まずに受け入れていることを表現したい時などが挙げられます。
また、反省の意味を込めて使われることも多く、自分が不利な状況になったり、不利益を受けることになっても、仕方がないと受け入れている様子を示すこともあります。その他にも、諦めや、投げやりな気持ちなどが含まれる場合もあります。
甘んずるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、甘んじるという言葉を少し古風な表現で表したい時などが挙げられます。
甘んずるとは、甘んじると同じ意味の言葉であり、少し古風な言い回しになります。現代語ではあまり使われませんが、意味は同じであるので、甘んじると甘んずるは、どちらを使っても間違いではないと覚えておくようにしましょう。