似た意味を持つ「至言」(読み方:しげん)と「金言」(読み方:きんげん)と「名言」(読み方:めいげん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「至言」と「金言」と「名言」という言葉は、戒めなどを短く言い表した言葉という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
至言と金言と名言の違い
至言と金言と名言の意味の違い
至言と金言と名言の違いを分かりやすく言うと、至言はどの時代にも対応する的確な言葉である時に使い、金言は人生における模範的な言葉である時に使い、名言は多くの人に受け入れられる言葉を表す時に使うという違いです。
至言と金言と名言の語源の違い
至言の至は、この上ないという意味を持つ漢字です。そのため至言とは、この上ない的確な表現をした言葉、いつの時代でも受け入れられるような言葉を意味する言葉となります。
金言の金は、美しい、立派な、かたいものなどを表す漢字です。そのため金言とは、立派な言葉、人生や生活の上で尊重し模範とするべきであるほど優れた言葉を意味する言葉となります。
名言の名は、名高い、すぐれているという意味を持つ漢字です。そのため名言とは、すぐれている言葉、事柄の本質をうまく捉えており多くの人に受け入れられる言葉となります。
至言と金言と名言の使い分け方
これら三つの言葉はほとんど同じような意味で使われますが、時代や環境が変化しても対応できるのが「至言」と「金言」の二つであり、中でも「金言」は人生の模範となるような言葉であるという違いがあります。
至言の意味
至言とは
至言とは、事物の本質を適切に言い当てている言葉を意味しています。
「至言は言を去る」の意味
至言を使った言葉として「至言は言を去る」があります。これは「至為は為す無く、至言は言を去り、至射は射ることなし」という中島敦による短編小説『名人伝』に書かれた言葉の一部です。
この言葉は、最もすぐれた行いは何もしないことであり、最もすぐれた言葉は何も言わないことであり、最もすぐれた射撃術は射ないことであることを意味します。
つまり「至言は言を去る」は、言葉を発さずとも人間分かりあうことが出来る状態が最も素晴らしいと言っていると解釈ができます。
ちなみに、主人公の紀昌は弓の名人になるため修行を重ねていて、後に出会った名人が弓を引く動きをしただけで鳥を落としたため、紀昌も修行を経て、弓をとらない弓の名人として有名になったという作品で、弓の名人になれたかは作中では明らかになっていません。
至言の類語
至言の類語・類義語としては、すぐれた句や有名な文句を意味する「名句」、短いが意味の深い言葉を意味する「寸言」、人の急所をつくような短くて深い意味を持つ言葉を意味する「寸鉄」、巧みに飾った言葉を意味する「美言」(読み方:びげん)などがあります。
至言の至の字を使った別の言葉としては、極限に達していることを意味する「至極」、この上なく難しいことを意味する「至難」、この上もない幸せを意味する「至福」、この上なく便利なことを意味する「至便」などがあります。
金言の意味
金言とは
金言とは、処世上の手本とすべき内容を持つすぐれた言葉を意味しています。
金言の読み方
金言は「きんげん」と読みますが、仏の口から出た不滅の真理を表す言葉という意味を表す場合は「こんげん」と読むこともできます。
「金言耳に逆らう」の意味
金言を使った言葉として「金言耳に逆らう」があります。たとえ真心から出たものだとわかっていても、忠告は耳に痛いため素直に聞き入れることができないことを意味することわざです。
このことわざは「忠言耳に逆らう」という言い方もしますが、「忠告耳に逆らう」という表記は間違いですので気を付けましょう。
金言の類語
金言の類語・類義語としては、短く巧みな表現で真理を鋭くついた言葉を意味する「警句」、戒めの言葉や教訓の意味をもつ短い言葉を意味する「箴言」(読み方:しんげん)、言い回しの巧みな句や立派な言葉を意味する「金句」などがあります。
金言の金の字を使った別の言葉としては、自分の主義や主張の絶対的な拠り所となる考え方を意味する「金科玉条」(読み方:きんかぎょくじょう)、守りが非常に固く、まったく隙がないことを意味する「金城鉄壁」(読み方:きんじょうてっぺき)などがあります。
名言の意味
名言とは
名言とは、事柄の本質をうまくとらえた言葉を意味しています。
「至理名言」の意味
名言を使った言葉として「至理名言」(読み方:しりめいげん)があります。物事の筋道が理屈にかなっているすぐれた言葉を意味する言葉です。この「至理」には、この上なく正しい道理の意味があります。
名言の類語
名言の類語・類義語としては、人生の真実や機微を述べて万人への戒めや教訓となるような簡潔にした言葉を意味する「格言」、慣用句を意味する「成句」、世間で言われていることわざを意味する「俗諺」(読み方:ぞくげん)などがあります。
名言の名の字を使った別の言葉としては、すぐれた案を意味する「名案」、有名店を意味する「名店」、由緒ある家柄、有名な学校や団体などを意味する「名門」、すぐれた評価を得ていることを意味する「名誉」、悪い評判を意味する「悪名」などがあります。
至言の例文
この言葉がよく使われる場面としては、誰しもが共感を得ることが出来るほど的確な表現をした言葉を意味する時などが挙げられます。
例文3の「けだし至言である」という表現の「けだし」とは、まさしく、たしかにといった物事を確信をもって推定する意味を持つ言葉で、「至言」と共に使うことにより、まさしく至言であるという意味になります。
金言の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人生における戒めや教訓を意味する時などが挙げられます。
上の例文のように、趣味や学業といった狭い範囲ではなく人生のどの場面でも当てはまるような文章に使われます。
名言の例文
この言葉がよく使われる場面としては、広く受け入れられるような上手い表現をした言葉を意味する時などが挙げられます。
例文2のような学業など、人生という幅の中で限定して当てはまる言葉に対して使われますが、現状多くの人に受け入れられる言葉が名言であるとされているため、大した差はありません。今日では名言という言葉が、至言や金言と比べて、一番使われています。
至言と金言と名言どれを使うか迷った場合は、誰でも共感できるような的確な表現である場合は「至言」を、人生の教訓である場合は「金言」を、多くの人に受け入れられるような言葉である場合は「名言」を使うと覚えておけば間違いありません。