似た意味を持つ「暗澹」(読み方:あんたん)と「惨憺」(読み方:さんたん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「暗澹」と「惨憺」という言葉は、どちらも薄暗いさまを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
暗澹と惨憺の違い
暗澹と惨憺の意味の違い
暗澹と惨憺の違いを分かりやすく言うと、暗澹とは暗く陰気なさまを表し、惨憺とはいたましいさまを表すという違いです。
暗澹と惨憺の使い方の違い
一つ目の暗澹を使った分かりやすい例としては、「暗澹たる悲しみと共に喪に服した」「将来を思うと暗澹たる気持ちになる」「彼は暗澹とした面持ちだった」「暗澹たる思いが込み上げてくる」などがあります。
二つ目の惨憺を使った分かりやすい例としては、「被災地は惨憺たる光景であった」「強豪チームとの試合は惨憺たる結果だった」「惨憺たる火災現場を目の当たりにする」「苦心惨憺の末に経営を立て直した」などがあります。
暗澹と惨憺の使い分け方
暗澹と惨憺という言葉は、言葉の響きが似ており、どちらも薄暗いさまという共通する意味がありますが、それぞれ複数の意味を持つので使い分けが必要です。
暗澹は薄暗いさまの意味の他に、暗く陰気なさまや、将来の希望がもてないさまの意味も持っており、それぞれの意味で使われています。惨憺はいたましいさまや、心をくだき思い悩むさまの意味があり、これらの意味で使われることが多く、薄暗いさまの意味で使われることはほとんどありません。
なお、どちらも「暗澹たる」「惨憺たる」という表現が多い言葉ですが、これは文語的表現であり、取り上げた事柄を強調してする意味があります。話し言葉ではあまり使われませんが、文章中ではよく見かける表現です。
暗澹と惨憺の英語表記の違い
暗澹を英語にすると「dark」「gloomy」「depressing」となり、例えば上記の「暗澹たる悲しみ」を英語にすると「gloomy sorrow」となります。
一方、惨憺を英語にすると「miserable」「pitiful」「deplorable」となり、例えば上記の「惨憺たる光景」を英語にすると「deplorable spectacle」となります。
暗澹の意味
暗澹とは
暗澹とは、薄暗くはっきりしないさま、暗く陰気なさまを意味しています。
その他にも、将来の見通しが立たず全く希望がもてないさまの意味も持っています。
表現方法は「暗澹とした」「暗澹とする」「暗澹たる」
「暗澹とした」「暗澹とする」「暗澹たる」などが、暗澹を使った一般的な言い回しです。
暗澹の使い方
「暗澹たる空模様だ」「暗澹とした夕暮れ時に事故は起きた」「暗澹たる気持ちで家路についた」「努力しても報われず暗澹たる思いがする」などの文中で使われている暗澹は、「薄暗くはっきりしないさま」の意味で使われています。
一方、「老後を考えると暗澹とした気持ちになる」「若者たちの間には暗澹たる雰囲気がある」「環境問題の行く末は暗澹としている」などの文中で使われている暗澹は、「全く希望がもてないさま」の意味で使われています。
暗澹の語源
暗澹という言葉の「暗」はくらがりを表し、「澹」は淡いことや薄いことを表します。暗澹は、薄暗くはっきりしないさまや、暗く陰気なさまを意味する言葉であり、転じて、将来の見通しが立たず、全く希望がもてないさまの意味も持っています。
「暗澹たる思い」「暗澹たる気持ち」の意味
光や明るさが欠けている薄暗さを表すだけでなく、気持ちや雰囲気が晴れ晴れしないことも表します。上記の例の「暗澹たる思い」「暗澹たる気持ち」とは、気分が晴れないことや、気持ちが暗くふさぎこんでいることを表現した言い回しです。
四字熟語「暗澹冥濛」の意味
暗澹を用いた四字熟語には「暗澹冥濛」(読み方:あんたんめいもう)があります。暗くてはっきりせず先が見えないようすを意味し、前途に希望のないことをたとえた言葉です。「冥濛」は、くもってくらいことを表します。
暗澹の類語
暗澹の類語・類義語としては、気持ちが暗くふさぎこんでいることを意味する「暗鬱」、心の中に不安や心配があって思い沈むさまを意味する「鬱鬱」、気持ちがふさいで晴れないことを意味する「憂鬱」などがあります。
暗澹の澹の字を使った別の言葉としては、あっさりしているさまや静かなさまを意味する「澹然」、こだわりやしつこさがないことを意味する「澹泊」、薄くかすんだ月やおぼろ月を意味する「澹月」などがあります。
惨憺の意味
惨憺とは
惨憺とは、いたましくて見るに忍びないさま、見るも無残なさまを意味しています。
その他にも、心をくだき思い悩むさま、薄暗くて気味が悪いさまの意味も持っています。
惨憺の使い方
「事故現場は惨憺たる光景であった」「台風が直撃した町は惨憺たる有様でした」「初めて受けた模試は惨憺たる結果だった」などの文中で使われている惨憺は、「いたましくて見るに忍びないさま」の意味で使われています。
一方、「コロナ禍での経営に苦心惨憺している」「夕焼けを表現するのに意匠惨憺する」などの文中で使われている惨憺は、「心をくだき思い悩むさま」の意味で使われ、「うっそうとして惨憺たる森を歩く」などの文中で使われている惨憺は、「薄暗くて気味が悪いさま」の意味で使われています。
惨憺の読み方
惨憺の読み方は「さんたん」です。「憺」は「澹」「淡」とも書きますが、惨憺という漢字表記が一般的です。同音の言葉に「賛嘆」や「三嘆」がありますが、意味が全く異なるので書き違えないようにしましょう。
惨憺の語源
惨憺という言葉は、上記の例のように複数の意味がありますが、「いたましくて見るに忍びないさま、見るも無残なさま」の意味で使われることが多くあります。「惨」は目をそむけたくなるほど悲惨であることを表し、「憺」は 危険を感じて不安になることや恐怖心を表します。
四字熟語「苦心惨憺」「意匠惨憺」の意味
惨憺を用いた四字熟語には、「苦心惨憺」「意匠惨憺」があります。「苦心惨憺」は心をくだき非常な苦労を重ねること、「意匠惨憺」は創作するときになどに思いわずらいながらする工夫することを意味します。これらの「惨憺」は「心をくだき思い悩むさま」の意味で使われています。
惨憺の類語
惨憺の類語・類義語としては、いたましいことやあわれなことを意味する「無残」、目をそむけたくなるほどいたましいことを意味する「凄惨」、むごたらしくいたましいことを意味する「酸鼻」などがあります。
惨憺の惨の字を使った別の言葉としては、天災などによるむごたらしくいたましい災難を意味する「惨禍」、いたましい被害を意味する「惨害」、見聞きに耐えられないほどいたましいことを意味する「悲惨」などがあります。
暗澹の例文
この言葉がよく使われる場面としては、薄暗くはっきりしないさま、暗く陰気なさま、全く希望がもてないさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある暗澹は、暗く陰気なさまを表しています。例文4や例文5での暗澹は、将来の見通しが立たず全く希望がもてないさまの意味で使われています。これらの例文のように、暗澹という言葉は、物理的な薄暗さよりも、暗い心情を表す時に使われる傾向があります。
惨憺の例文
この言葉がよく使われる場面としては、いたましくて見るに忍びないさま、心をくだき思い悩むさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「惨憺たる結果」とは、目も当てられない残念な結果であることを表現した言い回しです。例文4にある「惨憺たる思い」とは、 心苦しく精神的に耐えられない思いを抱く様子を表しています。
暗澹と惨憺という言葉は、言葉の響きが似ており、似た表現をする言葉ですが、意味は異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、暗く陰気なさまや希望が持てないさまを表現したい時は「暗澹」を、いたましいさまや思い悩むさまを表現したい時は「惨憺」を使うようにしましょう。