似た意味を持つ「焦点」(読み方:しょうてん)と「争点」(読み方:そうてん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「焦点」と「争点」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
焦点と争点の違い
焦点と争点の意味の違い
焦点と争点の違いを分かりやすく言うと、焦点とは人々の関心が集まるポイント、争点とは議論や争いの元となる主なポイントという違いです。
焦点と争点の使い方の違い
一つ目の焦点を使った分かりやすい例としては、「国家安全保障に焦点を絞る」「事実に焦点をあてて話を聞く」「問題を整理して焦点化する」「焦点性てんかんを起こした」「乱視なので焦点が合わない」「凸レンズの焦点距離の求め方を習った」などがあります。
二つ目の争点を使った分かりやすい例としては、「社会保障制度が最大の争点だ」「今回の町長選の争点がみえにくい」「争点効理論の講義を受けた」「争点訴訟と形式的当事者訴訟の違いを質問する」などがあります。
「選挙の焦点」と「選挙の争点」の違い
焦点と争点という言葉は、音の響きが似ており、「選挙の焦点」「選挙の争点」など同じような使い方をする言葉ですが、意味は異なるので使い分けが必要です。焦点は人々の注意や関心の集まるところや物事の中心となるところを意味し、争点は議論や争いの原因になっている主要点を意味します。
「選挙の焦点」とは世間の人々が選挙で注目しているポイントであり、具体的には政権交代するかしないか、各政党の議席数などを指します。これが「選挙の争点」となると、各政党や候補者が主張する事柄のポイントであり、具体的には福祉政策や憲法改正の方針などを表します。
さらに焦点には、鏡やレンズなどで光線が反射あるいは屈折して集まる一点の意味もあり、上記の例の「乱視なので焦点が合わない」「凸レンズの焦点距離」は、この意味で使われています。
焦点と争点の英語表記の違い
焦点を英語にすると「focus」「focal point」となり、例えば上記の「国家安全保障に焦点を絞る」を英語にすると「focus on national security」となります。
一方、争点を英語にすると「issue」「point at issue」となり、例えば上記の「最大の争点」を英語にすると「the vital point at issue」となります。
焦点の意味
焦点とは
焦点とは、人々の注意や関心の集まるところ、物事のいちばん重要な点を意味しています。
その他にも、レンズや球面鏡で、光軸に平行な入射光線が集中する一点の意味も持っています。
表現方法は「焦点を絞る」「焦点が合う」「焦点を当てる」
「焦点を絞る」「焦点が合う」「焦点を当てる」などが、焦点を使った一般的な言い回しです。
焦点の使い方
「話の焦点を絞って伝える」「議論の焦点を定まらず時間を無駄にする」「語句の違いに焦点を当てる」「首相の辞任により政策運営が焦点となる」などの文中で使われている焦点は、「関心の集まるところ、重要な点」の意味で使われています。
一方、「レンズの焦点距離と画角を比較する」「カメラで絞りを開くと焦点深度が浅くなる」「目の焦点があわない」などの文中で使われている焦点は、「レンズなどの光軸に平行な入射光線が集中する一点」の意味で使われています。
焦点の語源
焦点という言葉は、上記の例のように二つの意味があり、それぞれの意味で使われています。焦点の焦は、火や熱で焦げることを表します。太陽の光を凸レンズで集めると、この点に置いた黒い紙が焦げるところから、光線が集中する一点を焦点と言うようになりました。
また、一点に集中するという意味が転じて、人々の関心や注意が集まるところや、物事の中心となるところの意味も持っており、この意味ではビジネスシーンや社会の動向を伝える報道などで多く使われています。
「焦点距離」の意味
焦点を用いた日本語には「焦点距離」があり、レンズまたは球面鏡の中心である主点から焦点までの距離を意味します。特に、カメラの焦点距離とは、ピントを合わせたときのレンズから撮像素子までの距離であり、一般的に28mmや50mm、400㎜などのミリ単位で数値化されています。
焦点の類語
焦点の類語・類義語としては、物事の中心や重要な部分を意味する「中核」、物事の中心となるところを意味する「機軸」、物事のいちばん大切なところを意味する「重点」、主要な点やかなめを意味する「主眼」などがあります。
焦点の焦の字を使った別の言葉としては、焼けて黒くなった土を意味する「焦土」、焦げつくように熱いことを意味する「焦熱」、心をいらだたせることを意味する「焦心」などがあります。
争点の意味
争点とは
争点とは、争いの的になっている主要点を意味しています。
表現方法は「争点になる」「議論の争点」「争点化」
「争点になる」「議論の争点」「争点化」などが、争点を使った一般的な言い回しです。
争点の使い方
争点を使った分かりやすい例としては、「今後の選挙戦で感染症対策の争点化は避けられない」「争点整理によって問題点を明らかにする」「各政党の政策争点態度に注目する」「相続における争点のひとつに特別受益がある」などがあります。
その他にも、「民事訴訟法学者である新堂氏が提唱する争点効」「判例は争点効を認めていない」「これは行政が関わる争点訴訟だ」「今回の参院選挙の争点とは何か」「争点逸脱認定の可否を問題とする」などがあります。
争点という言葉は、争い事の原因や、訴訟や論争などの争いの主要な点を意味します。そのため、特に選挙戦や裁判を報じるニュースなどで使われる言葉です。争点を用いた訴訟に関わる言葉には、「争点訴訟」「争点整理手続」などがあります。
「争点訴訟」の意味
「争点訴訟」とは、行政庁の処分または裁決の存否またはその効力の有無が前提問題として争われる民事訴訟を意味します。
「争点整理手続」の意味
「争点整理手続」とは、民事訴訟において争点や証拠を整理するための一連の準備的手続きを意味します。
争点の類語
争点の類語・類義語としては、批判・論争・研究などの対象となる事柄を意味する「問題点」、議論の中心となる問題点を意味する「論点」、対立する議論・抗争の中心となる事柄を意味する「対立軸」などがあります。
争点の争の字を使った別の言葉としては、立場を異にする者が互いに意見を主張して争うことを意味する「争議」、相手に勝とうとして争うことを意味する「闘争」、政治上の主義・主張についての争いを意味する「政争」などがあります。
焦点の例文
この言葉がよく使われる場面としては、関心の集まるところや重要点、球面鏡で光線が集中する一点を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「焦点を当てる」とは、改めてあるポイントに着目することをを意味します。例文4にある「焦点化」とは、たくさんの事柄から絞ることを意味し、「焦点を絞る」とも言い換えることができます。
争点の例文
この言葉がよく使われる場面としては、議論や争いの原因になっている重要な点を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「争点効」とは、裁判所が下した判断が、同一の争点を主要な先決問題とする後の訴訟で当事者や裁判所を拘束することを意味します。この理論を争点効理論と言い、民事訴訟法学者である新堂幸司により提唱されました。
焦点と争点という言葉のどちらを使うか迷った場合、人々の注目が集まるポイントや重要点を表現したい時は「焦点」を、争いの原因となる主なポイントを表現したい時は「争点」を使うようにしましょう。また、焦点には、レンズなどで光線が集まる一点の意味もあることを覚えておきましょう。