似た意味を持つ「狼狽」(読み方:ろうばい)と「動揺」(読み方:どうよう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「狼狽」と「動揺」という言葉は、どちらも落ち着かない様子を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
狼狽と動揺の違い
狼狽と動揺の意味の違い
狼狽と動揺の違いを分かりやすく言うと、狼狽とは慌てうろたえる言動を表し、動揺とは心や社会の不安定な状態を表すという違いです。
狼狽と動揺の使い方の違い
一つ目の狼狽を使った分かりやすい例としては、「幽霊が出たかと狼狽して逃げ出した」「思いがけない出来事に狼狽した」「冷静沈着な彼の狼狽する姿を見たことがない」「突然、警報機が鳴り狼狽した」などがあります。
二つ目の動揺を使った分かりやすい例としては、「動揺した声で110番通報した」「事故を起こして動揺が収まらない」「先生たちも動揺を隠せない様子だった」「株式市場の動揺が止まらない」などがあります。
狼狽と動揺の使い分け方
狼狽と動揺という言葉は、ある出来事をきっかけに落ち着かなくなる様子を表す言葉ですが、意味や使い方は異なります。狼狽は不意の出来事などにあわててうろたえることを意味し、動揺は心や気持ちがゆれ動くことや秩序を失うことを意味します。
つまり、狼狽はうろたえ騒ぐ言動を表し、動揺は不安定な状態を表します。これが、狼狽と動揺という言葉の違いになります。
狼狽と動揺の英語表記の違い
狼狽を英語にすると「confusion」「dismay」「panic」となり、例えば上記の「狼狽して逃げる」を英語にすると「fly in confusion」となります。
一方、動揺を英語にすると「shaking」「disturbance」「unsteadiness」となり、例えば上記の「動揺した声」を英語にすると「unsteady voice」となります。
狼狽の意味
狼狽とは
狼狽とは、不意の出来事などにあわててうろたえることを意味しています。
表現方法は「狼狽する」「狼狽した」「狼狽させる」
「狼狽する」「狼狽した」「狼狽させる」などが、狼狽を使った一般的な言い回しです。
狼狽の使い方
狼狽を使った分かりやすい例としては、「突然のアラームに狼狽した」「驚愕狼狽のあまり腰を抜かしてしまった」「不意の出来事にも狼狽することなく冷静に対処したい」「不意の告白に狼狽する」などがあります。
その他にも、「株が値下がりしても狼狽売りは禁物だ」「悪事がばれて周章狼狽し逃げ出した」「意外な反応に狼狽の色を浮べた」「予想外の質問に対し狼狽気味に答えた」「見かけによらない美味しさに狼狽した」などがあります。
狼狽の読み方
狼狽は「ろうばい」と読みます。「狼狽える」と表記される場合は、訓読みで「うろたえる」とも読みます。「狼狽える」は狼狽と同じ意味ですが、さらに、うろうろと歩くことの意味も持っています。
狼狽の語源
狼狽という言葉の「狼」も「狽」もオオカミの一種を表します。「狼」は前足が長くて後ろ足が短く、「狽」は逆に前足が短くて後ろ足が長いとされ、「狼」と「狽」は常にとも行動し、離れると倒れて動けなくなります。このことから、慌てふためきうろたえることを狼狽と言うようになりました。
四字熟語「周章狼狽」の意味
狼狽を用いた四字熟語には「周章狼狽」があり、予期しないことに出合って、ひどくあわてふためくことや、うろたえ騒ぐことを意味します。「周章」も「狼狽」も、あわてうろたえるという意味で、同じ意味の言葉を重ねて強調した四字熟語です。
狼狽の対義語
狼狽の対義語・反対語としては、気がかりなことが除かれ安心することを意味する「安堵」、何事もなかったように落ち着きはらっているさまを意味する「平然」、落ち着いていて物事に驚かないさまを意味する「泰然」などがあります。
狼狽の類語
狼狽の類語・類義語としては、感情や思考が混乱することを意味する「錯乱」、事にあたってどうしたらいいか途方にくれることを意味する「当惑」、非常に慌てることを意味する「大慌て」などがあります。
狼狽の狼の字を使った別の言葉としては、無法な荒々しい振る舞いを意味する「狼藉」、飢えたオオカミを意味する「餓狼」、むごたらしいことをする人を意味する「豺狼」などがあります。
動揺の意味
動揺とは
動揺とは、心や気持ちがゆれ動くこと、平静を失うことを意味しています。
その他にも、ゆれ動くこと、社会などが秩序を失い乱れることの意味も持っています。
表現方法は「動揺する」「動揺が走る」「動揺を隠せない」
「動揺する」「動揺が走る」「動揺を隠せない」などが、動揺を使った一般的な言い回しです。
動揺の使い方
「さすがに動揺を隠せないようだった」「その一報に動揺が広がっている」「緊張や動揺で汗をかく」「動揺して目が泳いでいる」などの文中で使われている動揺は、「心や気持ちがゆれ動くこと」の意味で使われています。
一方、「乱気流で機体が大きく動揺した」などの文中で使われている動揺は「ゆれ動くこと」、「並みの金融政策では市場の動揺は収まらい」などの文中で使われている動揺は「秩序を失い乱れること」の意味で使われています。
動揺という言葉は、上記の例文のように複数の意味を持つ言葉です。日常会話では「心や気持ちがゆれ動くこと」の意味で使われ、ビジネスシーンでは「秩序を失い乱れること」の意味で使われる傾向があります。
四字熟語「動揺動乱」の意味
動揺を用いた四字熟語には「動揺動乱」があり、心や物事が動き乱れることを表します。「動揺」は不安定な状態になること、「動乱」は世の中が動揺し乱れることを意味します。例えば、「日本の歴史において動揺動乱した時代といえば戦国時代だろう」などと使います。
動揺の対義語
動揺の対義語・反対語としては、物事が落ち着いていて激しい変動のないことを意味する「安定」、物の落ちつきぐあいや安定を意味する「座り」、他の力によって動かされないことやゆるぎないことを意味する「不動」などがあります。
動揺の類語
動揺の類語・類義語としては、ふるえ動くことを意味する「震動」、揺れ動くことを意味する「振動」、はげしくゆれうごくことや情勢などがめまぐるしく変化することを意味する「激動」などがあります。
動揺の揺の字を使った別の言葉としては、音などがあとまで長く尾を引いて残ることを意味する「揺曳」、動揺して落ち着かないさまを意味する「揺揺」、ゆり動かすことを意味する「蕩揺」などがあります。
狼狽の例文
この言葉がよく使われる場面としては、不意の出来事などにあわててうろたえることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「狼狽の色を隠せない」とは、狼狽していることを知られないようにすることができない様子を表しています。例文4にある「狼狽売り」とは、証券用語で、相場が急に下がったのに驚いて慌てて持ち株を売ることを意味します。例文5の「狼狽える」は訓読みで「うろたえる」と読みます。
動揺の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ゆれ動くこと、平静を失うこと、秩序を失うことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4で使われている動揺は、心や気持ちがゆれ動くことの意味で使われています。例文5で使われれいる動揺は、秩序を失い乱れることの意味で使われています。これらの例文のように、物理的に「揺れ動くこと」の意味で使われることはあまりありません。
狼狽と動揺という言葉は、どちらも落ち着かない様子を表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、慌てうろたえる言動を表現したい時は「狼狽」を、心や社会の不安定な状態を表現したい時は「動揺」を使うようにしましょう。