【拝聞】と【拝聴】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「拝聞」(読み方:はいぶん)と「拝聴」(読み方:はいちょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「拝聞」と「拝聴」という言葉は、どちらも聞くことの謙譲語を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




拝聞と拝聴の違い

拝聞と拝聴の意味の違い

拝聞と拝聴の違いを分かりやすく言うと、拝聞とは人の話に対して使われ、拝聴とは人の話だけでなく講演や演奏にも使われるという違いです。

拝聞と拝聴の使い方の違い

一つ目の拝聞を使った分かりやすい例としては、「ご事情は他の方から拝聞しました」「明日、先生からお話を拝聞する予定です」「あなたの評判をあちこちで拝聞しています」「上司の忠告を身の引き締まる思いで拝聞する」などがあります。

二つ目の拝聴を使った分かりやすい例としては、「憧れの教授の講義を拝聴する」「クラシック音楽のコンサートを拝聴する」「年に一回の歴史講演会を拝聴してきた」「師匠のご高説を拝聴する機会を得た」などがあります。

拝聞と拝聴の使い分け方

拝聞と拝聴という言葉は、どちらも「聞く」という動詞の謙譲語であり、ビジネスシーンや改まった場で使われる、自分を下げて相手や話中の人に対して敬意を表す言葉です。二つの言葉は「つつしんで聞くこと」を意味しますが、使い方には違いがあります。

拝聞は人の話を聞く時に使われ、拝聴は人の話だけでなく講演や演奏などを聴く時にも使われます。拝聴は拝聞よりも幅広く使える言葉であるため、拝聞はあまり使われなくなっている言葉です。これらが拝聞と拝聴という言葉の違いになります。

「拝聞願います」「拝聴ください」は間違い

なお、拝聞も拝聴も謙譲語であるため、自分の行為を表す言葉です。相手や第三者の行為に対して使うことは出来ず、「拝聞願います」「拝聴ください」という表現は誤用ごなりますので、ご注意ください。

拝聞と拝聴の英語表記の違い

拝聞を英語にすると「hear」となり、例えば上記の「他の方から拝聞する」を英語にすると「hear from others」となります。一方、拝聴を英語にすると「listen」となり、例えば上記の「講義を拝聴する」を英語にすると「listen to a lecture」となります。

拝聞の意味

拝聞とは

拝聞とは、聞くことのへりくだった言葉を意味しています。

表現方法は「拝聞する」「拝聞しております」

「拝聞する」「拝聞しております」などが、拝聞を使った一般的な言い回しです。「拝聴させていただく」という表現は二重敬語となるので避けたほうが無難でしょう。

拝聞の使い方

拝聞を使った分かりやすい例としては、「お電話にてご要望を拝聞する予定です」「社長のご意見を拝聞した」「はからずもご家庭の事情を拝聞することになった」「その話を拝聞し古き良き時代を懐かしんだ次第です」などがあります。

その他にも、「役職をご勇退されたと拝聞しております」「郊外に新居を構えたと拝聞しております」「あなた様のご活躍は拝聞しております」「教授のお話を拝聞することができ、嬉しく思います」などがあります。

拝聞は聞くの謙譲語

拝聞という言葉は、聞くことのへりくだった言葉です。また、相手の様子を人づてに聞くことをへりくだっていう時にも使われます。拝聞という言葉にある「聞く」とは、聞こえることや聞いて知ることを意味し、注意深く聞くことではなく、自然に耳に入ることや聞いて理解する時に使われています。

拝聞の対義語

拝聞の対義語・反対語としては、言うの謙譲語を意味でつつしんで言うことを意味する「申す」、申し上げることや言上することを意味する「啓する」などがあります。

拝聞の類語

拝聞の類語・類義語としては、聞くの謙譲語でお聞きすることを意味する「伺う」、聞くの謙譲語で謹んで聞くことを意味する「承る」、つつしんで聞くことを意味する「謹聴」などがあります。

拝聴の意味

拝聴とは

拝聴とは、聴くことを意味する謙譲語、つつしんで聞くことを意味しています。

表現方法は「拝聴する」「拝聴します」「拝聴しました」

「拝聴する」「拝聴します」「拝聴しました」などが、拝聴を使った一般的な言い回しです。

拝聴の使い方

拝聴を使った分かりやすい例としては、「今日は大変ためになるお話を拝聴しました」「一流オーケストラの演奏を拝聴する」「教授の講義をしっかり拝聴しました」「真摯な姿勢でお客様の御意見を拝聴する」などがあります。

その他にも、「ラジオ講座を拝聴し大変勉強になりました」「毎朝、先生のおすすめの曲を拝聴しております」「セミナーの内容を興味深く拝聴しました」「素晴らしい音楽を拝聴する機会がありました」などがあります。

拝聴は聴くの謙譲語

拝聴という言葉は、聴くという動詞の謙譲語です。聴くとは、耳をすまして聞くことや聞き取ることを意味します。そのため、注意深く耳を傾けて、人の話や音楽の演奏などを聴くことを、へりくだった表現をしたい時に拝聴という言葉が使われています。

「拝聴いたします」「拝聴させていいただく」「拝聴させていただきました」は誤り

「拝聴いたします」という表現が使われることがありますが、厳密に言えば文法的に誤りです。謙譲語の「拝聴」に「する」の謙譲語が組み合わさったもので、二重敬語となってしまいます。正しくは「拝聴します」となります。

同様に「拝聴させていいただく」「拝聴させていただきました」も、謙譲語である「拝聴」に「してもらう」の謙譲語が組み合わさった二重敬語です。ビジネスシーンなどではよく使われる言い回しですが、「拝聴します」「拝聴しました」など他の言い方にした方が良いでしょう。

拝聴の対義語

拝聴の対義語・反対語としては、言うの謙譲語でうやうやしく言うことを意味する「申し上げる」、目上の人に申し上げることや申し述べることを意味する「言上」などがあります。

拝聴の類語

拝聴の類語・類義語としては、講演や話などを静かに聞くことを意味する「清聴」、耳を傾けて熱心に聞くことを意味する「傾聴」、身分の高い人と同席して話などを聞くことを意味する「陪聴」などがあります。

拝聞の例文

1.昨日の意見交換会では、同業他社の方々ご意見を拝聞することができた。
2.拝聞したご意見を取りまとめて、上司に報告するつもりです。
3.そのプロジェクトについては、事業部長より拝聞しております。
4.社長のポストを譲ってご隠居されたと拝聞しております。お元気でお過ごしでしょうか。
5.「ご拝聞」という使い方は、二重敬語になるので間違いだろう。
6.大学構内を散歩していると学生たちに話しかけられ、先生のご評判はあちこちで拝聞していますといって握手を求められた。
7.おかげさまでわたしもここに来て長くなりますが、その間様々な先生方の話を拝聞することができて嬉しく思っています。
8.有名な物理学者が相対性理論についてとうとうの述べられているのを拝聞したが、結局何を言っているのかさっぱりわからなかった。
9.私は贈収賄事件を捜査しているなかで、政治家先生方の話を拝聞しながら手がかりはないか考えていた。
10.彼は師匠の忠告をありがたく拝聞したものの、根っからの天邪鬼だったので、結果的にまったく言うことを聞かなかった。

この言葉がよく使われる場面としては、聞くことのへりくだった言葉を表現したい時などが挙げられます。

例文3にある拝聞は、相手の様子や状況を人づてに聞くことのへりくだった言葉として使われています。例文5にあるように「ご拝聞」の「ご」と「拝聞」は、どちらも謙譲語であるため二重敬語になり、誤った表現です。

拝聴の例文

1.一流ピアニストの演奏を拝聴できることを嬉しく思います。
2.明日は教授の講演会を拝聴します。楽しみにしております。
3.この度は、興味深いテーマのセミナーを拝聴できる貴重な機会であったと改めて思います。
4.部下から「拝聴ください」と言われ、拝聴の使い方を注意した。
5.「拝聴させていただく」「拝聴いたします」など誤った表現だと知らず、得意げに使っていた自分が恥ずかしい。
6.私はバロック時代のクラシック音楽が好きで、演奏会があれば必ずコンサートホールに足を運んで拝聴しております。
7.新製品開発においては、社内でのアイデア出しも大事だが、やはり真摯にユーザーの意見を拝聴することにまさるものはないだろう。
8.教え子たちのお礼状の手紙には先日はすばらしいピアノの演奏を拝聴できて幸いでしたと書かれていた。
9.私たち兄弟はお小遣いをもらうために、祖父の聴きたくもない浪曲を、膝を折ってかしこまって拝聴していなければならなかった。
10.研究発表は思いの外反応が芳しくなく、落胆していたところ、教授が私のところへ来て「たいへん興味深く拝聴していましたよ」と慰めてくれた。

この言葉がよく使われる場面としては、聴くことのへりくだった言葉を表現したい時などが挙げられます。

例文1や例文2のように拝聴という言葉は、演奏や講演などを注意深く耳を傾けて聴くことをへりくだっていう表現です。例文4にあるように、拝聴は謙譲語なので、相手の行為に対して使えない言葉です。

例文5にある「拝聴させていただく」「拝聴いたします」は敬語の二重表現になるため正しい表現ではありません。

拝聞と拝聴という言葉は、どちらも聞くことの謙譲語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、人の話を聞くことを表現したい時は「拝聞」を、人の話だけでなく講演や演奏を聞くことを表現したい時は「拝聴」を使うようにしましょう。

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