似た意味を持つ「平常」(読み方:へいじょう)と「通常」(読み方:つうじょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「平常」と「通常」という言葉は、どちらも「いつもと変わりがないこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
平常と通常の違い
平常と通常の使い分け方
平常と通常の違いを分かりやすく言うと、平常とはトラブルの後に使われる、通常とはトラブルに関係なく使われるという違いです。
平常と通常の使い方の違い
一つ目の平常を使った分かりやすい例としては、「明日から平常どおり営業します」「ダイヤは間もなく平常運転に戻るだろう」「パニックになり平常心を失う」「平常時の備えが大切です」「テストの点数と平常点で成績を決める」などがあります。
二つ目の通常を使った分かりやすい例としては、「通常は家で仕事をしています」「列車は通常運転しています」「通常の業務は午後5時までです」「来週から通常通り練習します」「通常使うクレジットカードに登録する」などがあります。
「平常運転」と「通常運転」の違い
平常と通常という言葉は、どちらも「普段と変わりなく、いつもと同じであること」を表し、「平常運転」「通常運転」など同じような表現をする言葉です。二つの言葉は、ほぼ同じ意味を持ちますが、使い方には少し違いがあります。
平常とは、いつもと同じであることを意味します。トラブルや故障が突然起きたのちに、普段通りの状態に戻る時に用いられることが多い言葉です。上記の例文の「ダイヤは間もなく平常運転に戻る」とは、災害や事故でダイヤが乱れたのちに、いつも通りのダイヤに元通りになることを表します。
通常とは、普通の様子であることや、世間一般の状態であることを意味します。特別の事情のない場合に行われるものを表す言葉です。上記の例文の「列車は通常運転しています」とは、特別な事情もなく、いつも通りに列車が運行していることを表しています。
つまり、平常は突発的な事故やトラブルなど非常事態があったうえで使われることが多い言葉であり、通常は特にトラブルなどなく普通の状態にあるときに使われる言葉なのです。
なお、「平常運転」「通常運転」という言葉は、列車の運行が普段通りであることの意味がありますが、転じて、いつも通りのやり方を表します。「これが私の平常運転だから」「バイトかけもちは通常運転」などと使われています。
平常と通常の英語表記の違い
平常も通常も英語にすると「normal」「usual」となり、例えば上記の「平常どおり営業する」を英語にすると「operate as usual」となります。
平常の意味
平常とは
平常とは、いつもと同じであること、普段を意味しています。
表現方法は「平常に戻る」「平常の生活」「平常な日々」
「平常に戻る」「平常の生活」「平常な日々」などが、平常を使った一般的な言い回しです。
平常の使い方
平常を使った分かりやすい例としては、「どんな時も平常心を保つ」「避難場所を平常時から確認しておきましょう」「平常点の計算方法が知りたい」「平常業務を再開します」「忙しくて平常運転とはいかない」などがあります。
その他にも、「明日から平常運転に戻る」「平常時の脈拍数を記録する」「交代勤務から平常勤務に変わった」「ミスをして平常心でいられない」「平常心のコツを祖父に聞く」「履修状況を評価するために平常試験を行う」などがあります。
平常という言葉は、習慣的で平穏な生活が繰り返されており、いつもと同じであることを意味します。突発的な事件や故障が無く、普段どおりに物事が行われている状態を表します。
「平常点」の意味
上記の例文にある「平常点」とは、定期試験などのテスト結果以外に、普段の授業態度や提出物、出席状況などを評価したものを指します。学校によって基準が異なるものです。
「平常心」の意味
平常という言葉を用いた日本語には「平常心」があり、揺れ動くことのない心理状態を表します。仏教用語では、普段の気持ちや、当たり前の生き方を意味します。特に禅道では「平常心是道」という言葉があり、日常の生活をまじめに判断を誤らずに生ることが悟りの道に繋がることを表しています。
平常の対義語
平常の対義語・反対語としては、普通でない差し迫った状態を意味する「非常」、普通とは違う状態を意味する「異状」、思いがけない時であることを意味する「不時」、普通の場合とは程度・事柄が違っていることを意味する「格別」などがあります。
平常の類語
平常の類語・類義語としては、特別でなく普通であることを意味する「尋常」、物事の程度が普通であることを意味する「一通り」、特に違いが認められないことを意味する「一般」、一定していて変わらないことを意味する「恒常」などがあります。
通常の意味
通常とは
通常とは、特別でなく普通の状態であること、世間一般にみられる状態であることを意味しています。
表現方法は「通常であれば」「通常時」「通常ならば」
「通常であれば」「通常時」「通常ならば」などが、通常を使った一般的な言い回しです。
通常の使い方
通常を使った分かりやすい例としては、「通常国会が今月15日に召集されます」「授業は通常どおり行います」「部活は通常活動を再開します」「通常使うプリンターに設定できない」「通常ブラウザを変更する」などがあります。
その他にも、「通常2~3日以内に発送します」「通常通りの営業時間です」「通常メールで送れる容量を確認する」「システムが復旧して通常運転に戻った」「通常貯蓄貯金は通常貯金より利子が高い」などがあります。
通常という言葉は、ごく一般に見られる状態であることを意味します。習慣のように、いつも行われていることと変わりがないことです。やや形式ばった言葉ですが、日常生活でもビジネスシーンでも広く使われています。
「通常通り」はおかしい表現ではない
上記の例文にある「通常通り」という言い回しは、特別でなく普通の状態である様子を意味します。この表現は「頭痛が痛い」のような二重表現だからおかしいと思われる人もいますが、この場合「通常」は普通の様子、「通り」は同じ状態であることを意味するので、二重表現ではなく正しい表現です。
「通常通り」を「通常どうり」と読むのは間違い
「通常通り」の「通り」を平仮名で書く場合は「通常どおり」と書きます。誤って「通常どうり」と書かないようにしましょう。
「通常国会」の意味
通常という言葉を用いた日本語には「通常国会」があります。毎年1回、定期的に召集される国会のことです。常会とも言います。通常国会に対して、衆議院が解散されたときに召集される「特別国会」、緊急・必要な場合に召集される「臨時国会」があります。
通常の対義語
通常の対義語・反対語としては、一時的であることやその期間だけであることを意味する「臨時」、普通と違っていることを意味する「異常」、すみやかな対応が必要とされる重大な事態を意味する「緊急事態」などがあります。
通常の類語
通常の類語・類義語としては、ごくありふれたものや特に変わっていないことを意味する「普通」、毎日のありふれた事柄を意味する「日常茶飯事」、常日頃や普段を意味する「日常」、普段やいつもを意味する「平生」、特に変わったところがなく普通であることを意味する「正常」などがあります。
平常の例文
この言葉がよく使われる場面としては、いつもと同じであること、他と比べて特別に変わったところのないことを表現したい時などが挙げられます。
例文1のように、平常という言葉は、一旦乱れたり予期せぬ出来事があったものが元通りになる状態を表すことが多くあります。例文2では、地震や台風あるいは火事や伝染病などによって受ける思わぬ災いが起きる時を意味する「災害時」と、普段どおりである「平常時」が対比して使われています。
通常の例文
この言葉がよく使われる場面としては、世間一般にごくふつうに見られる状態であること、日常的に用いられる状態であることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「通常時」とは、渋滞など発生しておらず順調走行している時を意味します。対する言葉には「渋滞時」があります。例文5にある「通常の地代」とは、借地権の取引慣行のある土地において、借地権部分を所有している借地人が、借地権の底地部分を借りるために支払う地代のことです。
平常と通常という言葉は、どちらもいつもと変わらない普通の状態を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、元通りになることを表現したい時は「平常」を、普段通りであることを表現したい時は「通常」を使うようにしましょう。