似た意味を持つ「知見」(読み方:ちけん)と「知識」(読み方:ちしき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「知見」と「知識」という言葉は、どちらも「知っている事柄」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
知見と知識の違い
知見と知識の意味の違い
知見と知識の違いを分かりやすく言うと、知見とは見聞きして知り得たことを表し、知識とは知っていること全般を表わすという違いです。
知見と知識の使い方の違い
一つ目の知見を使った分かりやすい例としては、「科学的知見に則って反論する」「アートの知見を得るために美術館を巡る」「学問的知見を英語教育に活かそう」「十分な知見を有する専門家に相談する」などがあります。
二つ目の知識を使った分かりやすい例としては、「英語の知識が全くありません」「仕事で知識不足を痛感する」「介護の知識を深める講座です」「ワインの知識を身に付ける」「専門的な知識を得る」などがあります。
知見と知識の使い分け方
知見と知識という言葉は、どちらも学習や経験を通して知ることや、その知っている内容を表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
知見とは、実際に見て知ることや、実際に見聞きして得た知識を意味します。実際に現地で見たり聞いたりして仕入れた情報である意味合いが強く、「知見を得る」とは、自分の体験を通して知識や見識を得ることを表します。
知識とは、知ることや、ある事柄などについて知っている内容を意味します。実際に体験して得た情報だけでなく、本やインターネットで仕入れた情報も含みます。体験を伴う知見よりも、知識の方が広い意味を持ち汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
また、知見は「見解や見識」の意味を、知識は「考える働き、知恵」の意味をそれぞれ持っています。これらが、知見と知識という言葉の明確な違いになります。
知見と知識の英語表記の違い
知見も知識も英語にすると「knowledge」「information」となり、例えば上記の「科学的知見」を英語にすると「scientific knowledge」となります。
知見の意味
知見とは
知見とは、実際に見て知ること、見聞して得た知識を意味しています。
その他にも、「見解、見識」「仏教用語で、事物に対する正しい認識」の意味も持っています。
表現方法は「知見を増やす」「知見を広げる」「知見が深い」
「知見を増やす」「知見を広げる」「知見が深い」などが、知見を使った一般的な言い回しです。
知見の使い方
「転職で知見を広げることが出来ました」「意思決定に役立つ知見を得る」「感染症に対する知見を深める」「あなた様の知見をお借りしたくご連絡いたしました」「その分野の知見がないのでお答えできません」などの文中で使われている知見は、「実際に見て知ること」の意味で使われています。
一方、「教授がワクチンに関して知見を示した」「二人は知見の相異があるようだ」などの文中で使われている知見は「見解、見識」の意味で、「知見を求めて修行中です」「知見を得て世の中を俯瞰する」などの文中で使われている知見は「事物に対する正しい認識」使われています。
知見とは、文字通り「見て知ること」であり、見聞によって得られた知識のことです。基本的には見たり聞いたりした体験の意味合いがありますが、広い意味では、書物を通じて得た知識も含みます。また、ある物事に対する確かな考えや意見の意味も持っています。
仏教用語としての知見
仏教用語としての知見は、事物に対する正しい認識や、知識によって得た見解を意味します。仏教における「如実知見」とは、事実を事実としてあるがままに、物事を真実を正しく見極めることを表します。
知見の類語
知見の類語・類義語としては、社会生活を営む上で必要な文化に関する広い知識を意味する「教養」、理論に基づいて体系づけられた知識と研究方法の総称を意味する「学問」、学問によって身につけた知識を意味する「学殖」などがあります。
知識の意味
知識とは
知識とは、知ること、認識や理解することを意味しています。
その他にも、「考える働き」「仏教用語で、仏法を説いて導く指導者」の意味も持っています。
表現方法は「知識が浅い」「知識が豊富」「知識を深める」
「知識が浅い」「知識が豊富」「知識を深める」などが、知識を使った一般的な言い回しです。
知識の使い方
「お金の知識を得るためにオススメの本です」「タイ語の基礎知識を習得する」「防災の知識を深める」「ビジネスに関する知識を身につける」「知識検定にチャレンジします」「子どもは知識欲がある」などの文中で使われている知識は、「知ること、理解すること」の意味で使われています。
一方、「ものすごいスピードで知識が発達する時期です」「遊びながら知識がつく」などの文中で使われている知識は「考える働き」の意味で、「上人は善知識の役を重視しました」の文中で使われている知識は「仏法を説いて導く指導者」の意味で使われています。
知識とは、上記に例文にあるように複数の意味を持っていますが、一般的には「知ること、認識や理解すること」の意味で用いられています。学習や経験により知りえた一般的な事柄を指しますが、前述した知見に比べると、客観的な認識の意味合いが強い言葉です。
「知識人」「知識階級」の意味
知識を用いた言葉には「知識人」「知識階級」などがあります。知識人とは、高い知識や教養がある人のことであり、そのような人々を一つの階級として捉えた表現が「知識階級」です。それぞれ「インテリ」「インテリゲンチア」とも言います。
知識の対義語
知識の対義語・反対語としては、実際に見たり聞いたり行ったりすることを意味する「経験」、自分で実際に経験することを意味する「体験」、からだで感じることを意味する「体感」などがあります。
知識の類語
知識の類語・類義語としては、一般の社会人が共通にもつ普通の知識を意味する「常識」、物事の健全な考え方を意味する「良識」、実際に見たり聞いたりすることによって得た知識を意味する「見聞」、物事の道理を判断し処理していく心の働きを意味する「知恵」などがあります。
知見の例文
この言葉がよく使われる場面としては、見聞して得た知識、見解、事物に対する正しい認識を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3の文中にある知見は、見聞して得た知識や実際に見て知ることの意味で用いられています。例文4や例文5の知見は、見解や見識の意味で用いられています。例文5の「治験」は知見の同音異義語であり、医薬品として製造販売の許可を得るために行われる臨床試験のことです。
知識の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある事柄などについて知っている内容、考える働き、仏法を説いて導く指導者を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある知識は「ある事柄などについて知っている内容」の意味で、例文3や例文4の知識は「考える働き」の意味で用いられています。例文5の「善知識」とは、仏法を教え仏道に導いてくれる人のことです。反対語に、邪法を説いて悪に誘う人を意味する「悪知識」があります。
知見と知識という言葉は、どちらも「知っている事柄」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、見聞きして知り得たことを表現したい時は「知見」を、知っていること全般を表現したい時は「知識」を使うようにしましょう。