似た意味を持つ「権化」(読み方:ごんげ)と「化身」(読み方:けしん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「権化」と「化身」という言葉は、どちらも「抽象的な特質を端的に示していること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
権化と化身の違い
権化と化身の意味の違い
権化と化身の違いを分かりやすく言うと、権化とは抽象的特性を端的に表す時に使い、化身とは抽象的特性を端的に表す時だけでなく動物が人に化ける時にも使われるという違いです。
権化と化身の使い方の違い
一つ目の権化を使った分かりやすい例としては、「悪の権化のような凶悪犯罪者だ」「まさに美の権化と言える綺麗な女性だった」「やんちゃ盛りの子どもは破壊の権化のようだ」「菩薩は人々を救うために権化する」などがあります。
二つ目の化身を使った分かりやすい例としては、「古代エジプトで猫は神の化身として崇拝されていました」「悪魔の化身のような卑劣な男だ」「美しい女性の姿に化身した狐の物語です」などがあります。
権化と化身の使い分け方
権化と化身という言葉は、どちらも仏教用語であり、一般には抽象的な概念や特性などを端的に示している様子の意味で用いられています。この意味で使われている「悪の権化」「美の権化」「神の化身」「悪魔の化身」は、互いに置き換えて使うことができます。
さらに化身という言葉は、抽象的な概念や特性だけでなく、動物などの生き物が人の姿に化けて現れた姿のことなども表します。権化という言葉にはこのような使い方がないため、「美しい女性の姿に化身した狐」の化身は権化に置き換えることができません。
二つの言葉を比べると、化身という言葉は権化よりも多くの意味を持ち、幅広く使える言葉だと言えるでしょう。
権化と化身の英語表記の違い
権化も化身も英語にすると「incarnation」「embodiment」「personification」となり、例えば上記の「悪の権化」を英語にすると「the incarnation of evil」となります。
権化の意味
権化とは
権化とは、仏や菩薩が人々を救済するために、この世に仮の姿となって現れることを意味しています。
その他にも、「ある抽象的な特質が、具体的な姿をとって現れたかのように思える人やもの」の意味も持っています。
権化の読み方
権化の読み方は「ごんげ」です。誤って「けんか」「けんげ」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「食欲の権化」「可愛さの権化」「優しさの権化」
「食欲の権化」「可愛さの権化」「優しさの権化」などが、権化を使った一般的な言い回しです。
権化の使い方
「菩薩が衆生を救うために権化する」「ビシュヌ神が動物や人間の姿となって権化する」などの文中で使われている権化は、「仏や菩薩がこの世に仮の姿となって現れること」の意味で使われています。
一方、「バイリンガルの権化のように英語と日本語を操る」「かわいいの権化のような少女だ」「ゴリラを暴力の権化と揶揄する人もいます」などの文中で使われている権化は、「抽象的な特質が現れたかのように思える人やもの」の意味で使われています。
権化とは、上記の例文のように二つの意味を持ちますが、一般的には「○○の権化」の使い方で、「ある概念や特質を形にしたと思えるもの」の意味で使われています。例えば、「美の権化」をわかりやすく言うと、抽象的な特質である「美しさ」を具現化したら、このような物や人になることを表します。
権化の由来
権化という言葉は、もともと仏教に由来します。権化の語源である仏教用語の「権現」は、仏や菩薩が衆生の苦悩を救うために、この世に種々の姿を現すことを意味します。この権現は権化とも言われるようになり、意味が転じて、ある特性の典型を表す言葉となりました。
権化の対義語
権化の対義語・反対語としては、仏が人々を教化するためにその仏身を現すことを意味する「実化」などがあります。
権化の類語
権化の類語・類義語としては、 仏や菩薩が人々を救うため仮の姿をとって現れることを意味する「権現」、実際に具体的な形に現すことを意味する「具現」、心の中にあるものが外にあらわれでることを意味する「表出」などがあります。
化身の意味
化身とは
化身とは、仏教用語で、世の人を救うために人の姿となって姿を現した仏を意味しています。
その他にも、「神仏などが姿を変えてこの世に現れること」「抽象的で無形の観念などが、形をとって現れたもの」「歌舞伎で化け物などのこと」の意味も持っています。
化身の読み方
化身の読み方は「けしん」です。誤って「かしん」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「悪魔の化身」「行動力の化身」「可愛いの化身」
「悪魔の化身」「行動力の化身」「可愛いの化身」などが、化身を使った一般的な言い回しです。
化身の使い方
「人も自然も仏の化身であるという考えがあります」の文中で使われている化身は「世の人を救うために人の姿となって姿を現した仏」の意味で、「鶴の化身をテーマにした小説が映画化されました」の文中で使われている化身は「神仏などが姿を変えてこの世に現れること」の意味で使われています。
一方、「嫉妬の化身となった女性は怖いですよ」「真実と正義と美の化身を油絵にしました」などの文中で使われている化身は「抽象的観念などが形をとって現れたもの」の意味で、「大蛇の化身を人気役者が務める」の文中で使われている化身は「歌舞伎で化け物などのこと」の意味で使われています。
化身とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ちますが、日常会話においては「抽象的観念などが形をとって現れたもの」の意味で用いられています。この意味では、前述した「権化」という言葉に言い換えることが可能です。
化身の由来
化身という言葉の由来は、仏教にあります。 仏の三身である「法身」「報身」「化身」の一つであり、仏が人や生きものを救済しようとして、それと同じ姿をとったものを言います。転じて、菩薩などが人などの姿で現われたもの、観念などが形をとって現れたものの意味で使われるようになりました。
化身の対義語
化身の対義語・反対語としては、天上に住むとされる神仏が地上に来臨することを意味する「降臨」などがあります。
化身の類語
化身の類語・類義語としては、世の人を救うため素質に応じてこの世に姿を現した仏を意味する「応身」、思想や観念などを具体的な形であらわすことを意味する「体現」、歌舞伎で人物の性格や表情などを強調するために施す化粧法を意味する「隈取り」などがあります。
権化の例文
この言葉がよく使われる場面としては、仏菩薩が人間の姿にかえて世に現われること、抽象的特質や思想がそのまま姿をとったかと思われるさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある権化は、仏菩薩が人間の姿にかえて世に現われることの意味で用いられています。例文3から例文5の権化は、抽象的特質や思想がそのまま姿をとったかと思われるさまの意味で用いられています。
例文2の権化と権現の違いは、権現には仏菩薩にならって称した神号の意味がありますが、権化にはそのような意味がない点にあります。
化身の例文
この言葉がよく使われる場面としては、菩薩や鬼神などが人などの姿で現われたもの、無形の観念などが形をとって現れたもの、歌舞伎などで妖怪変化のことを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある化身は、菩薩や鬼神などが人などの姿で現われたものの意味で、例文3や例文4の化身は、無形の観念などが形をとって現れたものの意味で用いられています。例文5にある化身は、歌舞伎における妖怪変化を意味しています。
権化と化身という言葉は、どちらも「ある抽象的な特質を端的に示している様子」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、抽象的な特質を示している様子を表現したい時は「権化」を、抽象的な特質だけでなく動物が人の姿になっているさまも表現したい時は「化身」を使うようにしましょう。