似た意味を持つ「やむなし」と「やむを得ない」(読み方:やむをえない)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「やむなし」と「やむを得ない」という言葉は、どちらもそうするより他に方法がないことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「やむなし」と「やむを得ない」の違い
「やむなし」と「やむを得ない」の意味の違い
「やむなし」と「やむを得ない」の違いを分かりやすく言うと、「やむなし」とはかしこまった場面では使えない、「やむを得ない」とはかしこまった場面でも使えるという違いです。
「やむなし」と「やむを得ない」の使い方の違い
一つ目の「やむなし」を使った分かりやすい例としては、「今回の騒動によって辞任はやむなしとされています」「大型台風が接近しているので運行停止はやむなしだ」「今シーズンの成績では放出もやむなしだろう」などがあります。
二つ目の「やむを得ない」を使った分かりやすい例としては、「やむを得ない事情で飲み会を欠席することにしました」「会社を存続させるにはリストラもやむを得ないだろう」「私はやむを得ず諦めることにしました」などがあります。
「やむなし」と「やむを得ない」の使い分け方
「やむなし」と「やむを得ない」はどちらもそうするより他に方法がないことを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「やむなし」はややカジュアルな表現なので、ビジネスシーンなどのかしこまった場面で使うのはあまり適していません。一方、「やむを得ない」はビジネスシーンなどのかしこまった場面で使うことができるというのが違いになります。
また、「やむなし」や「やむを得ない」をさらに丁寧に表現したいのであれば、敬語表現である「致し方ありません」や「致し方ございません」を使うのがいいでしょう。
「やむなし」と「やむを得ない」の英語表記の違い
「やむなし」も「やむを得ない」も英語にすると「reluctantly」「unwillingly」「cannot be help」となり、例えば上記の「私はやむを得ず諦めることにしました」を英語にすると「I reluctantly decided to give up」となります。
「やむなし」の意味
「やむなし」とは
「やむなし」とは、そうするより他に方法がないことを意味しています。
「やむなし」の漢字表記
「やむなし」を漢字にすると「止む無し」や「已む無し」と表記することができますが、「已む」は常用漢字外なので、常用漢字である「止む」を使った「止む無し」を使うのが一般的になっています。
表現方法は「○○もやむなし」「やむなしだろう」「やむなしですね」
「○○もやむなし」「やむなしだろう」「やむなしですね」などが、「やむなし」を使った一般的な言い回しになります。
「やむなし」の使い方
「やむなし」を使った分かりやすい例としては、「大雪の影響で欠航はやむなしだ」「彼は欠勤や遅刻が多いので解雇はやむなしだろう」「悪天候なので体育祭の延期はやむなしです」「今回の失言によって退任はやむなしだ」などがあります。
「やむなし」は仕方がないことやそうするより他に方法がないことを意味する「やむない」が変化した言葉です。言葉が変化しただけで、意味は「やむなし」と同じになります。
また、そうするより他に方法がないこと意味しているため、否定的なニュアンスで使う言葉です。
「やむなし」はややカジュアルな表現なため、ビジネスシーンなどのかしこまった場面では使うのは適していません。もし、かしこまった場面で使いたいのであれば、「やむを得ない」や「致し方ない」などを使用するようにしましょう。
「やむなし」の類語
「やむなし」の類語・類義語としては、他になすべき方法がないことを意味する「余儀ない」、どうすることもできなことを意味する「致し方ない」、ある物事をしないわけにはいかないことを意味する「せざるを得ない」などがあります。
「やむを得ない」の意味
「やむを得ない」とは
「やむを得ない」とは、そうするより他に方法がないことを意味しています。
「やむを得ない」の漢字表記
「やむを得ない」を漢字にすると、「止むを得ない」と表記することが可能です。
表現方法は「やむを得ない場合」「やむを得ない理由」「やむを得ない事情」
「やむを得ない場合」「やむを得ない理由」「やむを得ない事情」「やむを得ない事由」などが、「やむを得ない」を使った一般的な言い回しになります。
「やむを得ない」の使い方
「やむを得ない」を使った分かりやすい例としては、「やむを得ない事情により会社を休むことにしました」「雨が降ってきたのでバーベキューの中止はやむを得ない」「やむを得ない事情とはいえ親友の結婚式に参列できなかったのは無念です」などがあります。
「やむを得ない」は、続いていたことが止まることを意味する「やむ」、できないことを意味する「得ない」が合わさり、そうするより他に方法がないことやどうにもできないことを意味する慣用句です。慣用句とは二語以上の単語が結合して、それ全体である特定の意味を表す言葉のことを指しています。
「やむを得ない」は上記の「やむを得ない事情により会社を休むことにしました」のように否定的な場面で使うのが一般的な言葉ですが、かしこまった表現であるであるためビジネスシーンなどで使用しても問題ありません。
また、「やむを得ない」自体は敬語表現ではないのですが、「やむを得ない事情により欠席いたします」のように、前後の文章を敬語表現にすることによって、目上の人に対しても使うことが可能です。
「やむを得ない」の類語
「やむを得ない」の類語・類義語としては、なすべき方法が見つからないことを意味する「詮方ない」(読み方:せんかたない)、上手い方法がないことを意味する「しょうがない」、なすべき手段がないことを意味する「打つ手がない」などなどがあります。
「やむなし」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、そうするより他に方法がないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「やむなし」は他に為すすべがないというニュアンスで使われている言葉です。
「やむを得ない」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、そうするより他に方法がないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「やむを得ない」はビジネスシーンでも使うことができる言葉です。
「やむなし」と「やむを得ない」はどちらもそうするより他に方法がないことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、かしこまった場面では使えないのが「やむなし」、かしこまった場面でも使えるのが「やむを得ない」と覚えておきましょう。