似た意味を持つ「衛生」(読み方:えいせい)と「安全」(読み方:あんぜん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「衛生」と「安全」という言葉は、どちらも「労働災害を防ぐ重要な概念」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
衛生と安全の違い
衛生と安全の意味の違い
衛生と安全の違いを分かりやすく言うと、衛生とは従業員の健康を維持すること、安全とは職場の事故や災害を防ぐことという違いです。
衛生と安全の使い方の違い
一つ目の衛生を使った分かりやすい例としては、「公衆衛生の向上と増進は国の責務です」「私は歯科助手ではなく歯科衛生士です」「衛生管理者試験の試験日はいつですか」「精神衛生上よくないことはやりたくありません」などがあります。
二つ目の安全を使った分かりやすい例としては、「常に安全運転を心掛けています」「安全標語のポスターを掲示する」「2025年の全国安全週間は7月に実施されます」「おもちゃは安全マークが付いたものを買うようにしています」などがあります。
衛生と安全の使い分け方
衛生と安全という言葉は、「労働安全衛生法」のような使い方で、どちらも職場において労働災害を未然に防ぐための重要な概念を表します。二つの言葉は似ていますが、意味や使い方には違いがあります。
衛生とは、健康の保全や増進をはかり、疾病の予防や治療につとめることを意味し、特に環境を清潔に保つことを表す言葉です。職場における衛生とは、従業員の健康を維持したり向上させたりすることであり、具体的には健康診断を実施したり職場環境を整えたりすることを指します。
安全とは、危険のないこと、傷病などの生命にかかわる心配のないことを意味します。職場における安全とは、業務に起因して負傷などしないよう、安心して働くことができることです。具体的な安全のための取組には、障害物の除去や危険予知訓練などがあります。
つまり、衛生とは従業員の健康を維持したり向上させることを表し、安全とは職場の事故や災害を防ぐ取り組みを表します。二つの言葉は性質が類似していますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
衛生と安全の英語表記の違い
衛生を英語にすると「hygiene」「health」「sanitation」となり、例えば上記の「公衆衛生」を英語にすると「public hygiene」となります。一方、安全を英語にすると「safety」「security」となり、例えば上記の「安全運転」を英語にすると「safe driving」となります。
衛生の意味
衛生とは
衛生とは、健康の維持と向上を図るとともに、疾病の予防と治療につとめることを意味しています。
衛生の使い方
衛生を使った分かりやすい例としては、「精神衛生が良い状態を保つ」「衛生管理者試験の受験資格を確認する」「次の衛生管理者試験に申し込みました」「安全衛生上の課題について確認しました」などがあります。
その他にも、「食品工場では衛生管理が徹底されています」「東京衛生病院で人間ドックを予約しました」「衛生推進者の業務内容をインターネットで調べています」「来月の衛生委員会のテーマは熱中症対策です」などがあります。
衛生の読み方
衛生の読み方は「えいせい」です。同じ読み方をする熟語に「衛星」「永世」などがありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
衛生の「衛」は訓読みで「まもる」と読み、周りにいて中のものを守ることを表す漢字です。命や生きているものを表す「生」と結びつき、衛生とは、健康を守り病気の予防をはかることを意味します。特に、清潔を保つことを指すことが多くあります。
表現方法は「衛生管理者」
衛生を用いた日本語には「衛生管理者」があります。衛生管理者とは、労働者の健康障害を防止するため、職場の衛生全般を管理する人のことです。労働安全衛生法により、常時 50人以上の労働者を有する事業所で選任が義務付けられています。
衛生の対義語
衛生の対義語・反対語としては、衛生にかなっていないことを意味する「不衛生」、衛生的でないことを意味する「不潔」などがあります。
衛生の類語
衛生の類語・類義語としては、健康を守り保つことを意味する「保健」、飲食などを慎み健康に注意することを意味する「摂生」、生活に留意して健康の増進を図ることを意味する「養生」、衛生的であることを意味する「清潔」などがあります。
安全の意味
安全とは
安全とは、危険がなく安心なこと、傷病などの生命にかかわる心配、物の盗難・破損などの心配のないことを意味しています。
安全の使い方
安全を使った分かりやすい例としては、「労働安全衛生法をわかりやすく解説します」「安全衛生推進者の講習を受ける予定です」「安全日の計算方法を教えてもらいました」「安全地帯の道路標識を知っていますか」などがあります。
その他にも、「今年度の安全標語は面白いとの評判です」「ワークマンで安全靴を買いました」「安全帯胴ベルトをネットで注文しました」「安全運転管理者の業務内容は多岐にわたります」「安全安心のまちづくりを推進しています」などがあります。
安全の読み方
安全の読み方は「あんぜん」です。中世は「あんせん」とも読まれていましたが、現在では「あんぜん」と読むことが一般的になっています。
安全の「安」は訓読みで「やすい」と読み、変わったことがなく穏やかに落ち着いていることを表し、「全」は訓読みで「まったく」と読み、ある範囲内のすべてにわたるさまを表します。安全とは、危険や災害などによって損なわれるおそれがない安らかな状態を意味します。
表現方法は「安全衛生管理者」
安全を用いた日本語には「安全衛生管理者」があります。安全衛生管理者とは、「安全管理者」と「衛生管理者」を合わせた呼称です。どちらも労働安全衛生法で定められた国家資格であり、全管理者は職場の安全を、衛生管理者は従業員の健康を管理する業務を担います。
安全の対義語
安全の対義語・反対語としては、事故や災害などが生じる可能性のあることを意味する「危険」などがあります。
安全の類語
安全の類語・類義語としては、過失や事故のないことや健康で元気なことを意味する「無事」、無事でやすらかなことを意味する「安泰」、無事で穏やかであることを意味する「平安」、気にかかることがなく心が落ち着いていることを意味する「安心」などがあります。
衛生の例文
この言葉がよく使われる場面としては、健康を保ち病気の予防や治癒をはかることを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「衛生管理」とは 労働者あるいは消費者を病気や災害から守るために必要な措置を講じることを意味します。
安全の例文
この言葉がよく使われる場面としては、危険のないこと、平穏無事なこと、傷ついたり壊れたり盗まれたりする心配がないことを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「安全標語」とは、従業員や関係者の安全に対する意識を高めるために設ける短いフレーズやスローガンのことです。
衛生と安全という言葉は、どちらも「労災を防ぐための重要な概念」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、従業員の健康を維持することを表現したい時は「衛生」を、職場の事故や災害を防ぐことを表現したい時は「安全」を使うようにしましょう。