似た意味を持つ「風情」(読み方:ふぜい)と「風流」(読み方:ふうりゅう)と「情緒」(読み方:じょうちょ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「風情」と「風流」と「情緒」という言葉は、独特な趣という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
風情と風流と情緒の違い
風情と風流と情緒の意味の違い
風情と風流と情緒の違いを分かりやすく言うと、風情は雰囲気に対する美意識を表現する時に使い、風流は踊りや芸能に対する美意識を表現する時に使い、情緒は感情を表現する時に使うという違いです。
風情と風流と情緒の使い方の違い
風情という言葉は、「都心はビルだらけで風情がない」「紅葉狩りは風情を楽しむことができるイベントの一つだ」などの使い方で、独特の趣や味わいを意味します。
風流という言葉は、「風流を感じるための旅行は大成功だった」「お正月には風流なグッズがあちらこちらで見かけられる」などの使い方で、上品な趣があることを意味します。
情緒という言葉は、「情緒不安定になると落ち着くのに時間が掛かる」「情緒がある温泉宿に泊まる」などの使い方で、さまざまな微妙な感情を意味します。
風情と風流と情緒の使い分け方
風情は日本の四季が生み出す儚さなどを感じ、心を揺さぶらせ豊かにしてくれるものを指しますが、風流は舞台芸や踊りなどの人目を驚かすようなものを指しています。
このことから、風情は自然と生まれた雰囲気に対して使い、風流は人間の手によって生み出された踊りや芸能に対して使うという違いがあります。
しかし、今日では風情を使っていた自然のものにも「風流だ」などの言い方で趣深いことを表すことも多いです。
一方、情緒という言葉は、風情のように雰囲気を表す言葉でもありますが、風情は客観的に見た様子を、情緒は主観的に見た人間の感情を表すという違いがあります。そのため、風情や風流とは使い方が異なります。
これが、風情、風流、情緒の明確な違いです。
風情の意味
風情とは
風情とは、独特の趣や味わいを意味しています。
風情の読み方
風情は「ふぜい」という読み方をしますが、「ふうじょう」と読むことで、様子や風情を表す言葉にもなりますが、おおよその意味はほとんど同じです。
「私風情」はへりくだる時に使う
人や代名詞について「私風情」などの言い方をすることで、へりくだる意味を持たせることができます。ただし、他人に対して使う場合は相手をかなり格下に見る言い方となります。
表現方法は「風情のある」「風情を感じる」「風情がない」
「風情のある」「風情を感じる」「風情がない」などが、風情を使った一般的な言い回しです。
風情を使った言葉として、「海棠の雨に濡れたる風情」「触れなば落ちん風情」があります。
「海棠の雨に濡れたる風情」の意味
一つ目の「海棠の雨に濡れたる風情」(読み方:かいどうのあめにぬれたるふぜい)とは、バラ科の花である海棠が雨に濡れたように美人がうちしおれており、可憐な様子をたとえたことわざです。
「触れなば落ちん風情」の意味
二つ目の「触れなば落ちん風情」とは、花の花びらが触ったらすぐにでも落ちそうな様子から、ちょっと誘えば従ってくれそうな女性の様子を意味する慣用表現です。
風情の類語
風情の類語・類義語としては、しみじみとした味わいを意味する「趣」、風流なおもむきを意味する「風韻」、しみじみと落ち着いた気分やおもむきを意味する「情趣」、物事の趣が奥深く計り知れないことを意味する「幽玄」などがあります。
風流の意味
風流とは
風流とは、上品な趣があることを意味しています。
表現方法は「風流ですね」「風流を好む」「風流な人」
「風流ですね」「風流を好む」「風流な人」などが、風流を使った一般的な言い回しです。
風流を使った言葉として、「風流踊」「風流韻事」があります。
「風流踊」の意味
一つ目の「風流踊」(読み方:ふうりゅうおどり)とは、中世芸能の一つで、太鼓や笛などの楽器での演奏や歌に合わせて様々な衣装を着た人たちが多く集まって行う踊りです。
「風流韻事」の意味
二つ目の「風流韻事」(読み方:ふうりゅういんじ)とは、自然に親しみ、詩歌を作って優雅に遊ぶことを意味する四字熟語です。韻事という言葉に、書画や詩文を作るなどの意味があります。
風流の対義語
風流の対義語・反対語としては、風流でないことや趣味を解さないことを意味する「無風流」、言動や趣味などが洗練されていないことを意味する「野暮」があります。
風流の類語
風流の類語・類義語としては、高尚で雅な趣のあることを意味する「風雅」、風雅なおもむきを意味する「雅趣」(読み方:がしゅ)、しとやかで優雅なことを意味する「閑雅」、風流な味わいを意味する「雅致」(読み方:がち)などがあります。
情緒の意味
情緒とは
情緒とは、事に触れて起こるさまざまの微妙な感情を意味しています。
情緒の読み方
情緒は「じょうちょ」という読み方をしますが、「じょうしょ」という読み方をすることもあります。むしろ、「じょうちょ」が「じょうしょ」の慣用読みとされています。
表現方法は「情緒がある」「情緒がない」「情緒あふれる」
「情緒がある」「情緒がない」「情緒あふれる」「情緒豊か」「情緒を感じる」などが、情緒を使った一般的な言い回しです。
情緒を使った言葉として、「情緒纏綿」「情緒的価値」があります。
「情緒纏綿」の意味
一つ目の「情緒纏綿」(読み方:じょうちょてんめん)とは、情緒が深くこまやかな様子を意味する四字熟語です。纏綿という言葉は絡みついてなかなか離れない様子を意味します。そのため、いつまでも心から離れないことも意味します。
「情緒的価値」の意味
二つ目の「情緒的価値」とは、商品の価値の一つを意味する言葉ですが、ここにはコストや利便性、機能性など商品そのものに関わる価値は含まれていません。そのため、その要素を変更や削除をしたとしても影響がないものを指します。
例えば、色が好きだから、この製品に対して憧れを抱いている、この製品がかっこいいなどは感情的価値に含まれます。これに対して、コストパフォーマンスが高い、機能性が高く使いやすいなどは機能的価値に当たります。
情緒の類語
情緒の類語・類義語としては、その場にいる人たちが自然に作り出している気分を意味する「雰囲気」、そのものからにじみ出る特別な趣を意味する「情調」、その場の雰囲気を意味する「空気」、物事に感じやすい心の傾向を意味する「感傷」などがあります。
風情の例文
この言葉がよく使われる場面としては、独特の趣や味わいを意味する時などが挙げられます。
例文3の「私風情」という表現は、「私のようなものが」「私なんか」などの言い方に変えることができます。どれも自分を卑下する言い方です。
風流の例文
この言葉がよく使われる場面としては、上品な趣があることを意味する時などが挙げられます。
例文1の「風流三昧」とは、自然を鑑賞したり詩歌に打ち込んだりして風流な生活を送ることを意味する四字熟語です。
情緒の例文
この言葉がよく使われる場面としては、さまざまの微妙な感情を意味する時などが挙げられます。
例文1の「異国情緒」のように場所や物に接した時に受ける様々な感情を意味する言葉としても使うことができます。他にも、「下町情緒」「江戸情緒」などの表現があります。
風情と風流と情緒どれを使うか迷った場合は、雰囲気に対する美意識を表す場合は「風情」を、踊りや芸能に対する美意識を表す場合は「風流」を、感情を表す場合は「情緒」を使うと覚えておけば間違いありません。