似た意味を持つ「着服」(読み方:ちゃくふく)と「窃盗」(読み方:せっとう)と「横領」(読み方:おうりょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「着服」と「窃盗」と「横領」という言葉は、不当に自分の物にすることという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
着服と窃盗と横領の違い
着服と窃盗と横領の意味の違い
着服と窃盗と横領の違いを分かりやすく言うと、着服は他人の金銭を自分の物とする時に使い、窃盗は管理権限がない状態で自分の物とする時に使い、横領は管理権限を持つ状態で自分の物とする時に使うという違いです。
着服と窃盗と横領の使い方の違い
着服という言葉は、「従業員による着服問題は後を絶えない」「少額とはいえ着服は罪に問われる」などの使い方で、金品などを誰にも知られないように盗んで自分のものにすることを意味します。
窃盗という言葉は、「万引きも立派な窃盗罪として扱われる」「犯人の窃盗の対象が毎度酒であった」などの使い方で、他人の金銭や物を密かに盗み取ることを意味します。
横領という言葉は、「取引先の企業で横領事件が発覚したらしい」「億単位の額を横領してまで何に使うのだろうか」などの使い方で、他人の物や公共の物を不当に自分の物にすることを意味します。
着服と窃盗と横領の使い分け方
窃盗と横領は、他に管理権限があるか、自分に管理権限があるかの違いが主にありますが区分はあいまいとされていて、宅配業者が箱の中の荷物のみを持ち去った場合は窃盗となり、荷物の箱ごと持ち去った場合は横領となります。
また、売り物として売っているものを店員が自分の物とした場合は窃盗となり、店長など店を管理する人が自分のものとした場合は横領となります。
一方の着服は、窃盗や横領とは異なり、主に金銭に使う言葉である上、法律用語ではありません。「窃盗罪」と「横領罪」のように「着服罪」ということはできません。
これらが、着服、窃盗、横領の明確な違いです。
着服の意味
着服とは
着服とは、金品などを誰にも知られないように盗んで自分のものにすることを意味しています。
その他にも、衣服を着ることという意味もありますが、本来はこちらの意味のみで、他人の物をこっそり自分の物にすることという意味は日本でしか使われておらず、語源も様々な説があるもののはっきりとしていません。
着服の読み方
着服は「ちゃくふく」と読むのが一般的ではありますが、「ちゃくぶく」という読み方をすることができ、江戸時代には「ちゃくぼく」という読み方もなされていました。
音が変化しても意味が変わることはありません。
表現方法は「着服する」「着服した」「着服事件」
「着服する」「着服した」「着服事件」などが、着服を使った一般的な言い回しです。
着服の類語
着服の類語・類義語としては、他人の物を黙って自分の物にすることを意味する「失敬」、人の物を盗むことを意味する「泥棒」、定まっている使い方を外れて別のことに使うことを意味する「流用」があります。
窃盗の意味
窃盗とは
窃盗とは、他人の金銭や物を密かに盗み取ることを意味しています。
「窃盗罪」の意味
窃盗を使った言葉として、「窃盗罪」があります。これは、他者の財物をわざと持ち去ったり無断で使うことを禁止する法律です。
基本的には形のあるものが財物に当たりますが、電気は特別に財物として扱われ、サービスの窃取も利益窃盗に該当します。
1901年には、契約で定められた電力以上に使用していたことから利用者に対して告訴がなされ、1907年には電気は財物とみなすと刑法に明文化されるようになり、電気窃盗は犯罪行為であると認められました。
また、司法手続きを踏まずに自身の力で奪い返そうとすることは自救行為にあたるため、認められていません。
表現方法は「窃盗を繰り返す」「窃盗を働く」「窃盗犯」
「窃盗を繰り返す」「窃盗を働く」「窃盗犯」などが、窃盗を使った一般的な言い回しです。
窃盗の対義語
窃盗の対義語・反対語としては、暴力や脅迫などをして他人の金銭や物を奪うことを意味する「強盗」があります。
窃盗の類語
窃盗の類語・類義語としては、買い物客として商品を探すフリをして盗むことを意味する「万引き」、そっと盗み取ることを意味する「窃取」、暴力的に奪い取って自分の物にすることを意味する「略奪」があります。
横領の意味
横領とは
横領とは、他人の物や公共の物を不当に自分の物にすることを意味しています。
「横領罪」の意味
横領を使った言葉として、「横領罪」があります。これは、他者が所有もしくは占有している物を自分の物にすることを禁止する法律です。
自分の物や管理下に置かれているものであっても保管を命じられている場合は、不当に自分のものとすることは罪に当たります。
例えば、接待や出張の予定がないにも関わらず、食事などの交際費や飛行機などの交通費、宿泊費といったものを会社の経費を使って支払うことは横領罪に該当します。
領収書を偽造したり、会社に嘘を吐いて費用を出してもらった場合には横領罪ではなく詐欺罪に当たります。
また、単純横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪、委託物横領罪と分けられていますが、業務上横領罪は10年以下の懲役に処されるなど、他の横領罪と比べて刑が重くなっています。
表現方法は「横領を防ぐ」「横領を暴く」「横領が発覚する」
「横領を防ぐ」「横領を暴く」「横領が発覚する」などが、横領を使った一般的な言い回しです。
横領の類語
横領の類語・類義語としては、無理に奪い取ることを意味する「横奪」、拾ったものなどをこっそりと自分の物にすることを意味する「猫ばば」があります。
着服の例文
この言葉がよく使われる場面としては、金品などを誰にも知られないように盗んで自分のものにすることを意味する時などが挙げられます。
着服という言葉は、ほとんどが金銭に対して使われています。
また、自身の管理下にあるものから盗みを働く状況で使われるため、横領という言葉に置き換えて使うことができます。
窃盗の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他人の金銭や物を密かに盗み取ることを意味する時などが挙げられます。
例文3の自分の意思で窃盗を中止した場合は中止未遂として扱われ、外的な要因で未遂となる場合は障害未遂として扱われます。
横領の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他人の物や公共の物を不当に自分の物にすることを意味する時などが挙げられます。
どの例文の横領も着服という言葉に置き換えて使うことができますが、「着服罪」という表現はないため法律を意味する場合には注意が必要です。
着服と窃盗と横領どれを使うか迷った場合は、他人の金銭を自分の物とする場合は「着服」を、管理権限を持つ状態で自分の物とする場合は「窃盗」を、管理権限を持つ状態で自分の物とする場合は「横領」を使うと覚えておけば間違いありません。