似た意味を持つ「民法」(読み方:みんぽう)と「刑法」(読み方:けいほう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「民法」と「刑法」という言葉は、どちらも社会秩序を守るための法律を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
民法と刑法の違い
民法と刑法の意味の違い
民法と刑法の違いを分かりやすく言うと、民法とは個人間の秩序を定めた法律、刑法とは国家が個人に対して刑罰を定めた法律という違いです。
民法と刑法の使い方の違い
一つ目の民法を使った分かりやすい例としては、「改正民法の適用について争う」「民法90条で公序良俗が規程されている」「2020年に民法改正が施行されました」「民法改正の目的は何ですか」「民法177条と民法415条を暗記する」などがあります。
二つ目の刑法を使った分かりやすい例としては、「教授は刑法の権威だ」「刑法39条は心神耗弱者の減刑を規定する」「刑法における犯罪名の一覧を作成する」「刑法199条の殺人罪に問われるだろう」「詐欺罪は刑法246条に規定されている」などがあります。
民法と刑法の使い分け方
民法と刑法とは、どちらも社会秩序を維持するための法律です。日本の法律の中でも特に重要とされている六法には、憲法・刑法・民法・商法・刑事訴訟法・民事訴訟法があります。民法も刑法もこれに含まれていますが、それぞれの意味や使い方には違いがあります。
民法とは、社会における人と人との関係を規律する法律です。結婚した夫婦間の権利や義務関係、養子縁組や相続関係などについて定めています。また、不法な行為によって他人の財産や身体に損害を与えた場合、加害者は被害者に対して賠償しなくてはならない規定なども定めています。
刑法とは、何が犯罪になるか、その犯罪に対してどのような刑罰を与えるのかを定めた法律です。例えば、ネット掲示板やSNS上で他人に対して誹謗中傷をすると、刑法第230条の名誉毀損罪にあたります。3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金の法定刑が規定されています。
つまり、民法は個人間の権利義務など秩序を維持するための法律であり、刑法は国家が個人に対して犯罪と刑罰を定めた法律なのです。
民法と刑法の英語表記の違い
民法を英語にすると「civil law」「civil code」となり、例えば上記の「民法の適用」を英語にすると「application of civil code」となります。
一方、刑法を英語にすると「criminal law」「penal code」となり、例えば上記の「刑法の権威」を英語にすると「an authority on criminal law」となります。
民法の意味
民法とは
民法とは、市民生活における市民相互の関係を規律する私法の一般法を意味しています。
その他にも、民法典のことの意味も持っています。
表現方法は「民法を学ぶ」「民法の条文」「民法改正」
「民法を学ぶ」「民法の条文」「民法改正」などが、民法を使った一般的な言い回しです。
民法の使い方
「市民社会の規律を守るために民法が必要だ」「世界の民法を一覧化する」「民法には時効が設けられている」などの文中で使われている民法は、「市民相互の関係を規律する私法の一般法」の意味で使われています。
一方、「民法709条で不法行為による損害賠償が定められている」「明治中期に民法典論争があった」「4月1日より改正民法が施行される」「民法条文を読み上げる」「民法改正で瑕疵担保責任はどうなりますか」などの文中で使われている民法は、「民法典のこと」の意味で使われています。
民法とは、実質的な意味では私法の一般法のことであり、市民生活における市民相互の財産関係や家族関係などを規律する法律です。また、形式的な意味では民法典のことであり、民法に関する基本的規定を定めている法典を指します。総則・物権・債権・親族・相続の5編から成ります。
「民法典論争」の意味
上記の例文にある「民法典論争」とは、1890年公布の民法をめぐって行われた論争です。1893年から施行されることになっていた民法に対し、伝統的な風習や道徳を破壊する危険があるとの反対論がおこりました。これにより、民法および商法の施行は延期が決定されました。
民法の類語
民法の類語・類義語としては、 民事訴訟に関する法規の総称を意味する「民事訴訟法」、国家の統治権に関する根本原則を定める基礎法を意味する「憲法」、商事に関する基本的な法典を意味する「商法」、行政の組織と作用に関する法の総称を意味する「行政法」などがあります。
刑法の意味
刑法とは
刑法とは、犯罪人を罰するおきてを意味しています。
その他にも、犯罪になる行為と刑罰の種類・程度を定めている法律の意味も持っています。
表現方法は「刑法を学びたい」「刑法を学ぶ」「刑法を考える」
「刑法を学びたい」「刑法を学ぶ」「刑法を考える」などが、刑法を使った一般的な言い回しです。
刑法の使い方
「古代の刑法は宗教的な性格を持っていた」「刑法とは犯罪と刑罰に関する法律です」「刑法学における歴史的研究をしています」「旧派刑法学と新派刑法学が対立する」「ヨーロッパの刑法典を訳す」などの文中で使われている刑法は、「犯罪人を罰するおきて」の意味で使われています。
一方、「刑法39条が適用されるかが争点だ」「ネットのわいせつ画像が刑法175条に問われる」「刑法235条は窃盗について規定している」「刑法200条から刑法230条まで暗記した」などの文中で使われている刑法は、「刑罰の種類・程度を定めている法律」の意味で使われています。
刑法とは、犯罪に対する罰を決めた社会の定めです。狭義には、犯罪と刑罰を定めた法律のことを指します。どのような行為が犯罪となり、それにどのような刑が科せられるかという、罪と罰の具体的内容を規定する法です。
刑法には「一般刑法」と「特別刑法」がある
刑法には、「一般刑法」と「特別刑法」があります。一般刑法とは、 刑法典によって一般の人や事項に関して適用される刑法です。一方、特別刑法とは、刑法典以外の刑罰法規で、特別の犯罪について適用されるものです。暴力行為等処罰に関する法律、軽犯罪法、旧制の陸軍刑法などを指します。
刑法の類語
刑法の類語・類義語としては、刑罰に関するきまりを意味する「刑律」、刑事訴訟の手続きを定めている法律を意味する「刑事訴訟法」、刑法の適用を受け処理される事柄を意味する「刑事」、反社会的な犯罪に対して科せられる制裁としての刑罰を意味する「刑事罰」などがあります。
民法の例文
この言葉がよく使われる場面としては、市民相互の関係を規律する私法の一般法、民法典のことを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文4にある「民法改正」とは、民法において、不適当なところや不備な点を改めることです。2020年の民法改正では、債権法を中心に約257項目にも及ぶ改正事項がありました。
刑法の例文
この言葉がよく使われる場面としては、犯罪人を罰するおきて、刑罰の種類・程度を定めている法律を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「刑法の罪名」とは、傷害罪、脅迫罪、住居侵入罪、収賄罪などを指します。また、法定刑とは「10年以下の懲役」「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」など法律上定められた刑の範囲のことです。
民法と刑法という言葉は、どちらも六法の一つを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、個人間の権利義務などを維持するための法律を表現したい時は「民法」を、国家が個人に対して犯罪と刑罰を定めた法律を表現したい時は「刑法」を使うようにしましょう。