似た意味を持つ「助長」(読み方:じょちょう)と「増長」(読み方:ぞうちょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「助長」と「増長」という言葉は、物事の成長や発展を促すことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
助長と増長の違い
助長と増長の意味の違い
助長と増長の違いを分かりやすく言うと、助長は結果的に悪い状態を招くことを表現する時に使い、増長は次第に悪い状態になることを表現する時に使うという違いです。
助長と増長の使い方の違い
一つ目の助長を使った分かりやすい例としては、「健康を助長するための運動で倒れていては本末転倒だ」「自分の凝り固まった考えが混乱を助長しているとも言える」「彼女の口の軽さが噂を助長することになった」などがあります。
二つ目の増長を使った分かりやすい例としては、「年々、息子のわがままが増長してきた」「彼女の増長ぶりには目を見張るものがある」「増長し続けた勢力は敵陣営を凌駕するほどにもなった」などがあります。
助長と増長の使い分け方
助長と増長のどちらの言葉も、物事の成長や発展が好ましくない状態へと次第に変えられることを表す言葉ですが、結果として変化が表れる部分が若干異なります。
助長は、他の人や物に不必要な助けを出してかえって阻害することになってしまった故事が由来となった言葉ですが、今日では良い意味で相手の助けとなることも意味します。
一方の増長は、長という漢字は長く伸びることや大きくなることを意味しますが、増という漢字は程度が段々とひどくなることを意味します。ここから増長は段々と高慢になることも表します。
つまり、助長は物事が悪い状態になってしまった場合に対して使われますが、増長は段々と悪い状態になってしまう場合に対して使われているという違いがあります。
助長と増長の英語表記の違い
助長を英語にすると「conduce」「promote」となり、例えば上記の「健康を助長する」を英語にすると「conduce to health」となります。
一方、増長を英語にすると「grow」「enhancement」となり、例えば上記の「わがままが増長する」を英語にすると「grow in wilfulness」となります。
助長の意味
助長とは
助長とは、無理に力を添えてかえって害することを意味しています。
助長の使い方
助長を使った分かりやすい例としては、「差別を助長する意図は全くありません」「不安感を助長することとなりかねない」「誰かにとっての正義は悪を助長するだろう」「彼らの運動を助長するスピーチ映像を初めて見た」などがあります。
一方、「交流を助長するためのアイスブレイクが行われた」「自立した生活を助長するための政策に救われている」「健康を助長させるために生活習慣を見直す」などの文中で使われている助長は、「物事の成長や発展を助けること」の意味で使われています。
助長の由来
助長は、『孟子』に描かれたエピソードが由来となった言葉です。その場面の最後には「天下の苗を助けて長ぜ不らしむ者寡すくなし」と書かれており、これを訳すと、無理に苗を成長させようと無理に引っ張ってしまう者が多いとなります。
この故事により、無理に他の成長を助けようとしてはいけないことを表すようになり、今日でも一般的には善い行いでより良い状態にすることよりも、好ましくない状態を強めることを表す場合に使われています。
ただし、上記例文のように「交流の助長」「自立した生活を助長」などのように、物事をいい方向へと運ぶための言動としても使われており、生活保護法でもこの用法が使われているため、誤りではありません。
助長の対義語
助長の対義語・反対語としては、防ぎとめることを意味する「防止」、邪魔をすることを意味する「阻害」、妨げとなるものや状況を意味する「障害」があります。
助長の類語
助長の類語・類義語としては、力添えをすることを意味する「荷担」、物事が早く捗るように促すことを意味する「促進」、事業などを達成できるよう努めることを意味する「推進」、物事の勢いなどがいっそう激しくなることを意味する「増進」などがあります。
増長の意味
増長とは
増長とは、程度が甚だしくなることを意味しています。
増長の読み方
増長は「ぞうちょう」という読み方をしますが、「ぞうぢょう」という読み方もかつてはされていました。また、日本人の苗字として使われている場合には「ますなが」という読み方もできます。
増長の使い方
増長を使った分かりやすい例としては、「権力が増長したことによって多くの臣下を従えたらしい」「今回の議論は対立を増長させる結果になっただけで終わった」「水位が押し上げられて氾濫を増長してしまうのではという意見もある」などがあります。
一方、「増長慢な性質を持つような人ではないため褒めて伸ばすことができる」「自信と増長は紙一重とも言える」「弟は独占欲が満たされ更に増長した」などの文中で使われている増長は、「次第に高慢になりつけあがること」の意味で使われています。
「増長慢」は仏教用語
上記例文の「増長慢」は仏教用語で、本来は「増上慢」と表記されるのが一般的です。これは、自分を過信して思い上がることを意味する表現です。
増長の増という漢字には、つけあがることという意味があるため、良い方向に対して伸びていくことに使われる場合もありますが、ほとんどは悪い方向に程度が進められる場合に使われています。
増長の対義語
増長の対義語・反対語としては、恐れ畏まり小さくなることを意味する「畏縮」、自分のしてきた言動を省みて改めようと考えることを意味する「反省」があります。
増長の類語
増長の類語・類義語としては、自分に関係の深い物事を自分で褒めて他人に誇ることを意味する「自慢」、自慢する気持ちを意味する「慢心」、得意になって見せることを意味する「誇示」、自分の能力を誇る気持ちを意味する「矜持」などがあります。
助長の例文
この言葉がよく使われる場面としては、無理に力を添えてかえって害することなどが挙げられます。
例文3のように、助長を最終的に良い結果となる場合にも使うこともできます。
増長の例文
この言葉がよく使われる場面としては、程度が甚だしくなることなどが挙げられます。
例文2、例文5のように、増長は高慢な態度やつけあがる状態になることを意味する言葉としても使われています。
助長と増長は、どちらも「物事の成長や発展を促すこと」を表します。どちらを使うか迷った場合は、結果的に悪い状態を招くことを表す場合は「助長」を、次第に悪い状態になってしまうことを表す場合は「増長」を使うと覚えておけば間違いありません。