似た意味を持つ「皮肉」(読み方:ひにく)と「嫌味」(読み方:いやみ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「皮肉」と「嫌味」という言葉は、どちらも不快感を与える言動を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
皮肉と嫌味の違い
皮肉と嫌味の意味の違い
皮肉と嫌味の違いを分かりやすく言うと、皮肉とは遠まわしに不快感を与えることを表し、嫌味とはストレートに不快感を与えることを表すという違いです。
皮肉と嫌味の使い方の違い
一つ目の皮肉を使った分かりやすい例としては、「彼女は皮肉っぽく笑った」「皮肉な名言を言う人気タレントだ」「彼は冷笑的に振る舞う皮肉屋だ」「皮肉たっぷりの川柳が好きだ」などがあります。
二つ目の嫌味を使った分かりやすい例としては、「友達に嫌味を言われた」「嫌味を言う人の心理と対処法を知る」「嫌味は受け流すようにしている」「優秀だけど嫌味がない人だ」などがあります。
皮肉と嫌味の使い分け方
皮肉と嫌味という言葉は、不快感を与える言動を表し、日常生活で使ったり聞いたりする言葉です。どちらもマイナスイメージがあり似た表現をする言葉なのですが、意味は微妙に異なるので注意が必要です。皮肉は遠まわしに意地悪く非難することを意味し、嫌味は不快な思いを与える言動を意味します。
例えば、散らかっている部屋を見て「いつもは綺麗にしているよね」と言った場合、遠まわしに非難しているので、この言葉は皮肉と表現できます。これが、「居心地が悪い部屋だね」と言った場合、明らかに非難して不快を与えることになるので、この言葉は嫌味と表現できます。
皮肉は遠まわしな表現で不快感を与える言動であり、嫌味は明らかでストレートな表現で不快感を与える言動であることが、この二つの言葉の違いになります。
皮肉と嫌味の英語表記の違い
皮肉も嫌味も英語にすると「irony」「sarcasm」「cynicism」となり、例えば上記の「皮肉っぽく笑う」を英語にすると「give a cynical smile」となります。一方「嫌味を言われる」を英語にすると「make cynical remarks to me」となります。
皮肉の意味
皮肉とは
皮肉とは、遠まわしに意地悪く相手を非難することを意味しています。
その他にも、期待していたのとは違った結果になることの意味も持っています。
表現方法は「皮肉を言う」「皮肉にも」「皮肉なことに」
「皮肉を言う」「皮肉にも」「皮肉なことに」などが、皮肉を使った一般的な表現方法になります。
皮肉の使い方
「私の下手な絵が斬新だと皮肉を言われた」「繁忙期に旅行で休む同僚に、ゆっくりしてきてと皮肉を言った」「先生は皮肉まじりに批評する皮肉屋だ」などの文中で使われている皮肉は、「遠まわしに意地悪く相手を非難すること」の意味で使われています。
一方、「必死になればなるほど結果が芳しくないとは皮肉なものだ」「皮肉な結末を迎えた偉人もいる」「あまりにも皮肉な運命のめぐり合わせだ」などの文中で使われている皮肉は、「期待していたのとは違った結果になること」の意味で使われています。
皮肉の由来
皮肉という言葉は、仏教用語の「皮肉骨髄」を語源としています。骨や髄は奥にある「要点」のたとえで「本質の理解」を意味することに対し、皮や肉は表面にあることから「うわべだけなこと」「本質を理解していない」という遠回しに非難を意味する言葉になりました。
「皮肉屋」の意味
皮肉と用いた日本語に「皮肉屋」があり、何かとよく皮肉を言う人や、皮肉を言うのが好きな人を意味します。接尾語の「屋」は、そのような性質の人を意味し、皮肉屋は不平不満などを直接的な表現はせずに、何気なく非難するような人を表します。
皮肉の類語
皮肉の類語・類義語としては、それとなく悪口や皮肉を言うことを意味する「当て擦り」、それとなく相手の気にさわるようなことを言動を意味する「あてつけ」、他人の気に入るような言動を意味する「追従」(読み方:ついしょう)などがあります。
皮肉の対義語
皮肉の対義語・反対語としては、人に気に入られるような上手な口ぶりを意味する「世辞」、心にもないお世辞を言うことを意味する「おべっか」などがあります。
皮肉の皮の字を使った別の言葉としては、うわべだけを見て判断することを意味する「皮相」、皮脂腺から分泌される油脂状の物質を意味する「皮脂」などがあります。
嫌味の意味
嫌味とは
嫌味とは、人に不快な思いを与える言動を意味しています。
その他にも、ことさらに気どっていて、いやらしいさまの意味も持っています。
嫌味の使い方
「嫌味な上司の対処法が知りたい」「嫌味を言う男性心理が理解できない」「無意識に嫌味を言う人もいる」「嫌味を言う人の性格は問題だ」などの文中で使われている嫌味は、「人に不快な思いを与える言動」の意味で使われています。
一方、「セレブだけど嫌味がなくて好感度が高い」「彼は嫌味ったらしいエリートだ」「SNSは嫌味な写真が多い」「デキル彼女の発言は嫌味に聞こえてしまう」などの文中で使われている嫌味は、「気どっていて、いやらしいさま」の意味で使われています。
嫌味の由来
嫌味という言葉は、「いやがる」という意味を持つ動詞の「いやむ」の連用形が名詞になったものと言われています。いやみは、「嫌味」「厭味」と当てて書き、常用漢字である「嫌味」の方が、常用外漢字である「厭味」よりも一般的に使われています。
表現方法は「嫌味を言う」「嫌味な口ぶり」「嫌味に聞こえる」
嫌味は言葉で不快感を与える場合と、行動で不快感を与える場合がありますが、特に言葉で不快感を与える場合に使われています。「嫌味を言う」「嫌味な口ぶり」「嫌味に聞こえる」「嫌味にとられる」など、嫌味な発言に関する言い回しがあります。
嫌味の類語
嫌味の類語・類義語としては、社会や人物の欠点を遠回しに批判することを意味する「風刺」、皮肉や嫌味を込めた言葉で相手をからかうことを意味する「揶揄」などがあります。
嫌味の対義語
嫌味の対義語・反対語としては、口先だけでうまく言うことを意味する「巧言」、人の気に入るような口先だけのうまい言葉を意味する「甘言」などがあります。
嫌味の嫌の字を使った別の言葉としては、憎みきらうことや強い不快感を持つことを意味する「嫌悪」、犯罪の事実があるのではないかという疑いを意味する「嫌疑」などがあります。
皮肉の例文
この言葉がよく使われる場面としては、遠まわしに意地悪く相手を非難すること、期待していたのとは違った結果になることを表現したい時などが挙げられます。
例文1や2で使われる皮肉は、遠まわしに意地悪く相手を非難することを意味します。例文3や例文4で使われる皮肉は、期待していたのとは違った結果になることを意味します。例文5の「アイロニー」は「イロニー」とも言い、表面の意味とは逆の意味が裏にあることで皮肉や反語と訳されます。
嫌味の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人に不快な思いを与える言動、気どっていていやらしいさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4で使われている嫌味は、人に不快な思いを与える言動を意味します。例文5で使われている嫌味は、気どっていていやらしいさまを意味します。嫌味とは心地良く思わない言葉なので、本人は単なる自慢であっても言われた方は嫌味と受け取ることがあります。
皮肉と嫌味という言葉は、どちらも不快感を与える言動を表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、遠まわしに非難することを表現したい時は「皮肉」を、ストレートに不快感を与える言動を表現したい時は「嫌味」を使うようにしましょう。