似た意味を持つ「視写」(読み方:ししゃ)と「書写」(読み方:しょしゃ)と「模写」(読み方:もしゃ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「視写」と「書写」と「模写」という言葉は、書き写すことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
視写と書写と模写の違い
視写と書写と模写の使い分け方
視写と書写と模写の違いを分かりやすく言うと、視写は文章を中心に使い、書写は文字を中心に使い、模写は絵や図を中心に使うという違いです。
視写と書写と模写の使い方の違い
視写という言葉は、「視写の目的を確認する」「黒板に書かれた文章を視写する」などの使い方で、文章を書きとることを意味します。
書写という言葉は、「書写展の作品に選ばれた」「書写の授業は楽しみだった」などの使い方で、文字や短文を書き写すことや書き写して出来たもの自体を意味します。
模写という言葉は、「マンガの絵を模写する」「名画の模写が博物館に展示されている」などの使い方で、絵や図を同じもののように写し取ることや写し取って出来たもの自体を意味します。
これらのことから、視写は文章構成や表現技法を理解するために使い、書写は文字を正確に書くために使い、模写は図や絵を写し取るために使います。これらが、視写、書写、模写の明確な違いです。
視写の意味
視写とは
視写とは、文字として書かれたものを見て、その通りに書き写すことを意味しています。
視写のやり方
視写は物語や小説文、説明文、論説文など様々な文章で行うことができます。選んだ作品一つ、まず全文を読み、その文章の中から上手だとか、感動しただとか、印象に残った文章をそれぞれ3文程度選んで視写します。
視写の効果
これにより、集中力を身に付け、文章表現の技法や表記上のルールを覚えたりすることが出来、手本や文章を正確に読み取る注意力や書き終えてから点検をする自己省察力などが身に付くとされています。
そのため学習障害や発達障害を抱えている子どもたちにも課されている方法となっています。
視写の類語
視写の視の字を使った別の言葉としては、光の刺激を受けて生じる感覚を意味する「視覚」、物事を考えたり診断したりする範囲を意味する「視野」、警戒して見張ることを意味する「監視」、目をこらして見つめることを意味する「凝視」などがあります。
書写の意味
書写とは
書写とは、書き写すことを意味しています。
書写を使った言葉として、「書写山」「書写塗」があります。
「書写山」の意味
一つ目の「書写山」とは、兵庫県姫路市にある山です。インドの山の土を一握りして、その土を現在の書写山に落とした際、落とした土がもともと存在していたインドの山の形に似ていたことから、書写山と名前が付けられました。
また、山のふもとに住んでいた人たちがいつ山を登っても、山で修行している僧たちが一生懸命にお経を書き写していたことからとも言われています。
「書写塗」の意味
二つ目の「書写塗」とは、上の書写山に伝わる漆器です。磁器の普及により150年前にその技術が途絶えましたが、地元職人たちが書写山円教寺に残る漆器を調べ、1997年に復活しました。
書写の類語
書写の類語・類義語としては、文字を書き写すことを意味する「写字」、書き写すことを意味する「筆写」、他の物を真似ることを意味する「模倣」、実際の姿や形を写し取ることを意味する「写照」(読み方:しゃしょう)などがあります。
書写の書の字を使った別の言葉としては、文書の作成や議事の記録などの役目を意味する「書記」、赤い字で書くことを意味する「朱書」、文字などを大きく書くことを意味する「大書」、下書きなどを綺麗に書き直すことを意味する「浄書」などがあります。
模写の意味
模写とは
模写とは、似せて写すことを意味しています。
模写を使った言葉として、「形態模写」「半模写」があります。
「形態模写」の意味
一つ目の「形態模写」とは、動物や有名人、芸能人の動作を身振りを使って真似る芸です。様々な者の音や状態を真似する行為は人類で最も古い演芸と考えられ、日本書紀で火闌降命(読み方:ホストリノミコト)が水に溺れる様子を演じたのが元祖ともいわれています。
昭和になると、人の仕草や物の動作などを真似ることを意味する声帯模写が再流行し、後に「声マネ」という名称に代わり、形態模写も「顔マネ」という呼ばれ方に変わり、「形態模写」は死語となりました。
「半模写」の意味
二つ目の「半模写」とは、全てを完全に模写するわけではなく、一部だけを模写して残りは自分で描いて作品を完成させることを言います。輪郭などのみを写して、残りを自分で描く場合などが半模写にあたります。
模写の類語
模写の類語・類義語としては、本物に似せて作ることを意味する「模造」、書類などの控えとして複写した文書を意味する「写し」、もとの物と同じ物を別に作ることを意味する「複製」、手本の絵を忠実に模写することを意味する「臨画」などがあります。
模写の模の字を使った別の言葉としては、本物や実際の場合と同じようにすることを意味する「模擬」、手探りで探し始め求めることを意味する「模索」、実物の形に似せて作ったものを意味する「模型」、見習うべき手本を意味する「模範」などがあります。
視写の例文
この言葉がよく使われる場面としては、文章を書きとることを意味する時などが挙げられます。
視写は集中力を高めたり、文章に使われている技法を理解することを重視して文章を書き写す行為です。そのため、文字の書き方や丁寧に書く練習をする場合は、視写ではなく書写を使います。
書写の例文
この言葉がよく使われる場面としては、文字を書き写すことを意味する時などが挙げられます。
書写は文字を丁寧に書き写すことを重視して書き写す行為です。そのため、身に付けたい力が持続力や集中力であれば、書写ではなく視写を使います。
模写の例文
この言葉がよく使われる場面としては、絵や図を描き写すことを意味する時などが挙げられます。
基本的に、似せて写すことを意味していると言えど、模写が使われている文章は図や絵が中心であるため、書写や視写という言葉に置き換えて使うことはできません。
視写と書写と模写どれを使うか迷った場合は、文章を中心に書き写す場合は「視写」を、文字を中心に書き写す場合は「書写」を、絵や図を中心に描き写す場合は「模写」を使うと覚えておけば間違いありません。